平沢進ギターまとめ

Susumu Hirasawa @hirasawa

ヒラサワ19歳。毎週土日はウレシハズカシ、レスポールを持って亀有から某大学の建物へと通う長髪の男でありました。ギターは思いので嫌い。

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亀有駅で金町駅から来るヴォーカル兼バイオリンの男と待ち合わせ、ウレシハズカシMANDRAKEというバンドの稽古に出かける勤労学生音楽使いでありました。

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朝はやっちゃ場、夜はペ●プシコ●ー●で働くMANDRAKEコンビは、そうして何度も何度も亀有駅で待ち合わせてはイケナイ音楽を奏でる日々でありました。

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ある日、ボーカル君は女人に熱を上げ、挙動が曲がって来たことに気付きました。 なんと、毎日オリムプックを見ているという、変態行為を打ち明けるようになったので。変態です。断言します。

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ある日、重いレスポールを右に持ち替え左に持ち替えしながら変態君を待つ亀有駅。とうとう彼は来ませんでした。

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環七は完成している。 １９７５年の大谷田橋交差点はヤバイ。 ヒラサワのバイクにトラックが突っ込む。 居た。信号待ちしている少年ヒラサワ。 警告するか？　しないか？

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では、痛いけど放置する。 大丈夫、死なない。 ほれ、突っ込んだ。

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予定通りバイクは大破であります。 おめでとう。奏でる用務員の誕生であります。 スマートホンで救急車を呼んでおこう。

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亀の湯を通り、眉毛が入れ墨のおばちゃんが居る食堂を通り過ぎ、岡田パン屋の腹立たしいメルヘン女に見つからないよう、日本紙業の倉庫を曲り、ガラガラと玄関を開ける。

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「なんだススム。ススムがまだ帰って来ないが、オマエ知らないか？」 「ああ、大谷田橋で事故ったよ。救急車で運ばれてる」 「ほう、そうか」

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押入れを開ける。 中にはグレコのレスポールが仕舞われているはずだ。もう1年近く使われていない。 病院から帰って来たら開けるはずだ。 イタズラしてやれ。

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カードに「天罰だ。奏でろ」と書いて張ってやる。 はっ！ もう貼ってある…。

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「父上、これ、誰が張ったのでしょうか？」 「さっき、オマエが来て張ってったよ。よく見ろ、４枚張ってあるだろう？オマエで５人目だ」 「え？！」

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その時玄関がガラガラと開いた。 「なんだススム。ススムがまだ帰って来ないが、オマエ知らないか？」 問われた相手が「またこんど！」と言うのはおおむね半世紀先。 またこんど！

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MANDRAKEの初期は、選曲も曲順も決めずにステージに出るという恐ろしいことをしていた。 思い出しただけで背筋が凍る。 19才ステルスはバカなので。 バカだから。バカゆえに。バカとして。

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そのころのヴォーカルは私でない。 19才ステルス、いつもカリカリしており、眉間にシワがよっており、なまっちろく、朝ドライヤーで伸ばした長髪のくせ毛がすぐに湿気でカーブしてイライラするし。

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亀有から東小金井まで重たいレスポールをギター形のケースに入れて歩くと膝の横にこすれて赤くはれていて、電車の中でギターを呪っているし。

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しかも自作なので重たい鞄の中にBig Muffが入っていてえらく膨らんでいて歩きづらいし。 嫌いな中央線乗らなきゃいけないし。

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なまっちろく、眉間にシワを寄せ、なにがしかを呪っている19歳ステルスは電車の中で菓子パンを食べているが、膝の横が赤く腫れあがっており、中央線で座るのが嫌なためにどんなに空いていても立っていたのだった。

Susumu Hirasawa @hirasawa

ギターケースが当たって赤くはれていた膝の横はその後も晴れが引くことはない。 なにゆえにか。 乱暴電気琴で蹴りを入れる場所が同じ場所であるからなのだ。