TypeTalks 第18回まとめ
小文字の登場(3〜8世紀)。アンシャル体。地味だがカリグラフィでは重要。字形がだんだん丸くなり、エクステンダー(アセンダーとディセンダー)が出始める。初期の聖書はほとんどこれ。その影響で、現代でもキリスト教の印象の強い書体。
2013-09-25 12:16:57ローマンハーフアンシャルはローマンカーシブの流れを継ぐ、書きやすい文字の発達の流れに位置する。アセンダー/ディセンダーがしっかり出てくる。(アンシャルのページの行間にハーフアンシャルでメモが記された写本の例が興味深かった)。
2013-09-25 12:17:36ハーフアンシャルは、この時期アイルランドで独自に発展した(ケルト文化と融合して出来た多数の書体の一つ)アイリッシュハーフアンシャルのほうがむしろカリグラフィでは有名かも。ケルト三大彩色写本(ケルズの書、ダロウの書、リンディスファーン福音書)が有名。
2013-09-25 12:17:599世紀になると、カロリンジャンが登場する。衰退したローマ帝国に代わり勃興したフランク王国でカール大帝が写本を読みやすく書き直させる(カロリングルネッサンス)。これに用いられたのがコンチネンタルカロリンジャン体。
2013-09-25 12:22:56この書体は、行間が空いて読みやすいだけでなく、少し前傾している。そのことから書くときのスピードが少し上がっていることが分かる。つまり、書きやすい書体でもあった。
2013-09-25 12:23:32面白いのは、前時代の書体は滅び去ったわけではなくて、限定された場面で使われ続けていること。タイトルに大文字書体、副題にアンシャル、本文にカロリンジャン体という写本が、手書き書体のヒエラルキーを象徴するようなレイアウトの例として挙げられていた。
2013-09-25 12:25:45実際には、ディプロマの格式が書体だけで単純に決まるわけではないので、次のツイートの記述は不正確です。このまとめの最後に、高岡さんの注意喚起が載っていますので、そちらをお読みください。
以前高岡さんが、ディプロマの印刷では、基本的に古い書体ほど格式が高いと仰っていたのを思い出した。一番格が高いのはブラックレターではなくアンシャルだということ。 http://t.co/rv6YJ8WuCN
2013-09-25 12:28:34一番古いローマンキャピタルまで遡ってしまうと普通の印刷物と区別がつかなくなってしまう。カリグラフィックな書体というのは活字で手書きの清書を模しているところにその面白み、組版者の工夫のしどころがある。
2013-09-25 12:29:14いよいよ11〜2世紀のゴシック体(ブラックレターの時代)。この時代に入ると再びアセンダ・ディセンダ、行間が縮みだす。ゴシックの前のレイトカロリンジャンから、字幅が急に狭くなる。どんどん狭く、ツメツメになり、カウンタースペースが線幅と同じくらいに縮む。
2013-09-25 12:29:26かつて聖書は王侯貴族が大金を出して作らせる豪華なものだったが、この時代になると各地に大学が建設され、聖書の需要が急増する。写本のサイズも小さくなり、片手で持ち運べるサイズの物が増えてくる。リガチャーによる略記法の使用もこの時期盛んに行われる。
2013-09-25 12:33:06いろいろなスタイルがある。ステムの端に◆がついたテクストゥールが最も一般的(四十二行聖書もそう)だが、下端を「し」のように少しはね上げたクアドラータ、サンセリフのように下端が四角い(右下の⊿部分を塗り潰すので手間が掛かった)プレキッスス等。また、地域別に好まれるバリエーションも。
2013-09-25 12:34:45最後にルネッサンス。人文主義者たちが写本の改訂を始める。彼らは読みづらく黒っぽいゴシック体を嫌った。そもそも「野蛮な」というニュアンスのある「ゴシック」という名前をつけたのは人文主義者たち。字が再び丸っこくなっていく。彼らの開発したヒューマニスト体が、現在の活字の小文字の元。
2013-09-25 12:35:17カリグラフィで書かれる書体は基本的に活版印刷登場以前に開発された物だが、例外として、銅版印刷のための書体であるカッパープレート体がある。カリグラフィーの歴史からは省かれることも多いが、非常に人気のある書体で、カリグラフィーをやるなら必ずやりたい書体の一つ。
2013-09-25 12:35:45これまで文字の形の変化について必ず明快な理由説明があったのが、カッパープレート体に関しては特に説明がなかったのが逆に印象深かった。きつい傾きや平ペンでは書けない極端な抑揚という形の由来を理解するには、銅版にニードルを使って逆字で彫り込んでみないといけないのだろう。
2013-09-25 12:36:11写本文化が廃れて久しい19世紀、エドワード・ジョンストンが手書き文字のハイト・道具などについての分析を公表し、生徒に教えた。近代カリグラフィの父とも呼ばれる彼はいくつかの新作書体を残した。イングリッシュカロリンジャンをベースにしたファウンデーション体や、ゴシサイズドイタリック体。
2013-09-25 12:37:04最後に、これらの書体を習得した後でのカリグラファーとしての創作活動について。現代創作カリグラフィの作品の他、John Stevens氏のロゴなどを例に。
2013-09-25 12:38:47朱色のグワッシュをガラス板のパレットに溶き、平筆の内側にまで入り込むように捏ねて含ませ、最後に紙コップの水をちょこっと吸わせる。紙の上に筆先を置くと、絵具がしっかりと定着するまでぶるぶると震わせてから動かし始める…。
2013-09-25 12:41:44平筆というのはこんなに融通が利くものなのか。Aの内側のバーを書いていて、斜めに構えた筆の右端が向こう側にはみ出すのではないかとはらはらした瞬間、筆先がきゅっと細くなってきっちり収めつつ線の下端を描ききったのにびっくり。
2013-09-25 12:42:05逆に、Eのステムから下のアームに移行する内カドは白抜けが出ないようにやや圧力をかけて筆を太めにしつつ回転させていた。横棒は普通とは逆の傾きで書くことになるが、ここの書き方は人により異なり、Stevens氏は回転させずに書くそうである(すると最後のビークセリフの形が変わってくる)。
2013-09-25 12:48:18