僕は柴犬　～自作 twnovel～

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬、散歩が大好き。お母さんと出かけると、スーパーの前で待ってる時間の方が長い。お兄ちゃんは、ずっと携帯で喋ってて僕に目もくれない。一番好きなのは、おじいちゃん。「いい冬晴だな、太郎」僕の名前はコロだけど、尻尾を振って見上げる。そして、ゆっくり歩いていく。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬、散歩が大好き。僕がここに来たときから、たくさん散歩をしてくれたお姉ちゃんは、しばらく一緒に出かけてない。「ごめんね、コロ。桜が咲いて、受験が終わったらね。」そう言って、また机で真面目な顔をしてる。僕はそばに座り込んだ。一緒に桜がみたいから、待ってるね。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬、散歩が大好き。今日はおじいちゃんと出かける。いつものコースにある神社という所で、おじいちゃんは手を合わせる。神様がいるんだって。僕はきちんと座って、「ワン」と鳴く。神様お願いします。お姉ちゃんの桜が咲きますように。もう、鳥居にオシッコかけたりしません。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。散歩が大好き。いつもの公園は工事中。今日は初めての道を通って、初めての匂いをかぎながら新しい公園へ。すごく広い。ちょっとドキドキする。おじいちゃんは、日当たりのいいベンチを確保した。「いい所だな」向こうから、新しい仲間がやって来た。しかもカワイイ。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。今日は新しい公園、初めて会ったカワイイ子。嬉しくって、飛びついた。あれ、よけられちゃった。「こら、太郎。いきなりそんなんじゃ嫌われちゃうぞ」そっか、初めましては丁寧に。ゆっくり鼻先をくっつけ合う。初めてって緊張するけどワクワクだらけ。尻尾が動いちゃう。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。散歩が大好き。今日はおじいちゃんと受験終わりのお姉ちゃんが一緒だ。工事中の道を避けて曲がると、突然満開の枝垂れ桜。「たまには遠回りもいいな。人生も同じだよ」おじいちゃんが言った。お姉ちゃんと僕は桜雨に飛び込んだ。舞い散る花びらと、涙の滴が踊っていた。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。名前はコロ。季節を外し過ぎた雪に、思わず庭へ飛び降りた。「おまえも雪が大好きだったよな、ハナ。しかし桜が困ってるぞ」八重の薄紅に白い冠を被った桜を見上げながら、おじいちゃんが呟く。ふっと風が撫でるようにそよぎ、一片の雪が僕の鼻先にとまる。あれ、母さん？ #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。散歩が大好き。たくさん歩いて着いたのは、花と木のテラスのお店。と、目の前に豪華なケーキが。「愛犬の日だからな」おじいちゃんがお茶を啜る。わぁい。夢中で食べたら一休み。お日様と木の香、皆の笑顔。「見て、コロの嬉しそうな寝顔」お姉ちゃんの声が微かにした。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。散歩が大好き。ニョキニョキと背丈を伸ばす草むらに入ると、白い綿毛が肩を寄せ合っていた。鼻を近づけたらサワッと触るから、くしゃみがブシュン。散り散りに舞いあがる綿毛達。「どこ行くの？」「本当の居場所へ」そっか、そこに暖かくて気持ちいい毛布があるといいね。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。ソファでまどろんでるとお姉ちゃんの声がした。「私の心はどこにいるんだろう」昼寝は中断。僕は鼻をクンクンさせてお姉ちゃんを探す。玄関から廊下を抜けて縁側へ。いた。陽だまりに伝う涙を舌でぺろり。くすぐったいと笑った。僕はいつでもお姉ちゃんを見つけられるよ。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。お姉ちゃんがせっせと荷造りしている。旅行に行くんだって。僕は隙を見て、お気に入りの骨のおもちゃをポトンと入れておいた。お姉ちゃんが困った顔でやってくる。「ごめんね、コロ。連れては行けないの」うん、わかってるよ、貸してあげる。寂しくなったらそれで遊んで。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。少し前から僕にオシッコかけようと追いかけっこしてた油蝉が、今日は庭に転がっている。「どうしたの、遊ぼうよ」爪先でつつくとジジッとバタつく。「もう無理だな。次の相手がまたいるさ」そっと咥えると草陰に下ろす。ここの方が涼しいよね。頭上でカナカナと声がした。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。おじいちゃんと散歩に出た。でも今日は、コホコホと乾いた咳をしている。「こう急に寒くなっちゃ、体が追いつかないな」僕はいつもより多めに道草を食い、ペースを合わせる。僕、今日この後予定ないから、ゆっくり行こうよ。急ぎ足の秋風が毛並みを撫でて追い越していく。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。今日はお兄ちゃんが散歩に行くって。珍しいなと玄関を出ると、そこに初めて見る可愛い女の子。「君がコロね、初めまして」満面の笑顔でなでてくれた。僕を好きだって匂いがする人。よろしくね。お兄ちゃんのことも、ね。二人の距離はまだぎこちない。僕は間で尻尾を振る。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。クリスマスって日の散歩はお兄ちゃん。「メリークリスマス」すっかり仲良しになった女の子が、僕に赤と白の服を着せ尖がり帽をのせた。慣れなくて変な感じだけど二人が嬉しそうに笑うから、僕も嬉しい。なんかポカポカ。空っ風を追いかける僕の後を寄り添って二人が歩く。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。お姉ちゃんが帰って来るなり僕の首に抱きついた。「今年は桜が咲いたよ！」毎晩遅くまで部屋の電気がついてたもんね。笑顔を舐めて祝福、そのままお姉ちゃんと散歩へ。ぐんぐん引っ張る僕に「どこ行くの？！」一番初めに咲いた桜、一緒に見よう。春って皆に必ず来るから。 #twnovel

Pingu　novel @ckpingu_nvl

僕は柴犬。突然の揺れに飛び起きた。しばらくして治まったから、地面に鼻をつけてフンフン。まだ怒ってるの？ 長く溜めこんだ悲しみは、爆発させないで少しずつ吐き出しなよ。僕、目が冴えちゃったから聞いてあげる。月明かりの下、大地に伏せて耳を澄ます。鈴虫も一時静寂を作る。 #twnovel