グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヤヨイ=サン!」「ヤヨイ=サン」取り巻きの者達が近づくが、彼女はそれを振り払った。それでも取り巻き達はヤヨイを気遣う事をやめなかった。媚びたようにぎこちなく微笑む者、泣いてしまう者もいた。アンミは起き上がれず、蒼白になって震えていた。 25

2013-09-25 01:54:50
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キカは立ち上がり、ヤヨイ達にオジギすると、足早にバイオ薔薇園を去った。ヤヨイは怒りに震える手で青い薔薇を掴み、むしり取った。キカは振り返らなかった。彼女は自分の行動にやはり驚いていた。……進めよう。物事を進めよう。そうすれば、それもきっとわかる。彼女は心の中で呟いた。26

2013-09-25 02:01:05
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【グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド】#3 後編

2013-10-02 22:09:19
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ヨノコとミマがおずおずとアンミを助け起こす。皆がヤヨイを見た。「差し出がましい!」ヤヨイは言い捨て、荒い息をつく。「ゴメンナサイ!許してください!」アンミは嗚咽した。「私はね?」ヤヨイは震え声で呟き、今一度キカを見た。「私は学園の筆頭者で、ナカヨシのグランドマスターなのよ?」23

2013-10-02 22:09:52
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「要らない」キカは小声で言った。「どうして?」ヤヨイは地に膝つくキカを見、ほとんど縋るように問うた。キカはヤヨイを見上げた。そして答えた。「わたし、こんな事している場合じゃない」「……!」ヤヨイは言葉を失い、その目には見る見るうちに涙が溢れだした。24

2013-10-02 22:11:31
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「ヤヨイ=サン!」「ヤヨイ=サン」取り巻きの者達が近づくが、彼女はそれを振り払った。それでも取り巻き達はヤヨイを気遣う事をやめなかった。媚びたようにぎこちなく微笑む者、泣いてしまう者もいた。アンミは起き上がれず、蒼白になって震えていた。 25

2013-10-02 22:12:54
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キカは立ち上がり、ヤヨイ達にオジギすると、足早にバイオ薔薇園を去った。ヤヨイは怒りに震える手で青い薔薇を掴み、むしり取った。キカは振り返らなかった。彼女は自分の行動にやはり驚いていた。……進めよう。物事を進めよう。そうすれば、それもきっとわかる。彼女は心の中で呟いた。26

2013-10-02 22:14:10
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ヤヨイを拒絶し、庭から走り出たキカが最初に出会ったのは、馬を散歩させるワカヤマだった。馬丁のいつもの日課だ。馬の足音がまずキカの耳に入った。それから彼と馬の姿が。彼女はまず、ワカヤマを避ける事を検討した。だが、それはそれで不自然だと思った。「コンニチワ」「やあ。キカ=サン」 29

2013-10-02 22:20:25
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後方を気にしながら、キカは馬のタロの向こう側へ移動した。「なんだ?どうしたの」ワカヤマは訝しんだが、キカが目配せした直後、ナカヨシの少女達が庭から足早に現れたところだった。ワカヤマはキカの望みを察し、そのまま自然に馬を進めた。キカは庭から死角になるように動いたのだ。 30

2013-10-02 22:22:33
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「何かあったんだな。揉め事かい」ワカヤマは尋ねた。キカは曖昧に返事をした。ワカヤマは少し肩をすくめ、「お嬢さんって怖いからな」とだけ言った。風が吹くと、木々がざあざあと音を立てた。「馬、走らせてみようか」ワカヤマがキカを見た。「何?」「この時間なら、人目につかない路だよ」 31

2013-10-02 22:30:25
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キカは素直に従った。ワカヤマはキカをまず馬に乗せる。そして自分がその前に。馬の脇腹へ踵を当てると、徐々に速度を上げる。「な。しっかりしてるだろ。もう一頭は雌で、名前はオハナ。オハナも賢いし、偉い」バンブー林の中の路を、馬はゆく。勿論それも学園の敷地内。出入口は不通の正門のみ。32

2013-10-02 22:37:52
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林を抜けると、そこは石で境界めいて囲われたむき出しの土。キカは菜園を連想した。「使われていないんだ。こういう所、幾つかある」ワカヤマは言った。二人は馬を降りた。ワカヤマは手近の木に手綱をかけると、「お嬢さん達は、こっちまで来ること無いよね。俺は詳しいんだ。この学園にはね」33

2013-10-02 22:45:36
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ワカヤマはキカを呼び、向こうの塀まで歩く。屈み込むと、塀の根本に妙な形の石が埋まっている。亀裂を塞いでいるのだとすぐにわかった。「大したものじゃないけどさ」ワカヤマは呟き、石を外した。キカを促す。キカは亀裂を覗きこんだ。ネオサイタマの遠望だ。既に街の明かりが灯り始めている。34

2013-10-02 22:51:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こういうところから見下ろすと、ネオサイタマも綺麗だよな」ワカヤマは言った。キカはしばしその風景を亀裂越しに眺めていた。遠い風景を。「そうだね」じきに日が暮れる。「ありがとう」キカは亀裂から目を離し、ワカヤマに礼を言った。ワカヤマはにっこり笑った。「部屋に帰る頃だな」「うん」35

2013-10-02 23:01:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ワカヤマはそれ以上の余分な気遣いや慰めをしなかった。キカは彼の態度に奥ゆかしさを感じた。「ここに住んでいるのね?」「そうだよ」「いつから?」「ずっと前さ」ワカヤマは馬の鼻面を撫でた。「街に行ったって、俺は別にやることも無いけどさ……キカ=サンは?下に降りたいこと、あるかい」 36

2013-10-02 23:09:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「降りる?」「そう」「……」キカは瞬きした。答えなかった。ワカヤマは少し訝しそうにしたが、強い風が吹いて葉を散らしたので、問答はそこまでだった。 37

2013-10-02 23:15:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ……ハァーッ……」「シーッ……もう少し静かにしないと」「そんな事……今更そんな事」「今更そんな事?すっかりその気なのに、俺が意地が悪いって?」「そう、そう」「ヒヒヒ……よっぽど辛いのかい……抑圧ってやつかい……」「そうなの、抑圧……ひどいの」「ひどいのかァ」 39

2013-10-02 23:26:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ひどいの」「いや、わかるよ、すごいワカル……人間ってのは色々抱えてるものさ、どうにか自分をごまかして……」「そうなの、辛いんです」「ワカル。なんでも話していいよ。俺、それしか能がないしさ。無害だし……」「ひどいのォ」「生徒の、何だっけ?ソサイエティ?」「そう。ナカヨシ」40

2013-10-02 23:31:22
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「ナカヨシが?」「ねえ、私なんて、あの子たちより立場が実際下なんです。わかるんです」「そりゃ酷い……先生なのに」「ウウーッ」「泣いていいよ。俺、それしか能がないしさ。なんでも吐き出していいよ」「好き、ナツイ=サン、好き……」「いいよ俺のこと好きになってよ、楽になるよ」「好き」41

2013-10-02 23:36:27