グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
1
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「話して。楽になるよ。カヤカ=サンは生徒に受け容れられない……その、ナカヨシの子たちが率先してるって?」「そう」「カヤカ=サン、こんなに魅力的なのに」「教師よりも強いんです、あの子たち」「君が素敵だからだよ。子供の嫉妬は怖い」「ナツイ=サンだけです、わかってくれるの……」42

2013-10-02 23:49:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「口じゃそう言うけど。まだ隠してるでしょ」「……」「隠し事してる人にそんな事言われてもさ。全然嬉しくない」「待って!お願い」「だってさァ」「突飛な話なの。笑われるかもって」「笑わないよ。話して」「……儀式を」「儀式!儀式だって!」「ねえ、嘘じゃないわ」「疑うわけない。話して」43

2013-10-02 23:57:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「震えてる?コワイ?俺、全力で守るよ。大丈夫。二人だけの秘密」「礼拝堂、ウシミツ・アワー」「ワーオ。まるでアンタイブディズム……」「シーッ!日曜の深夜に、ナカヨシは礼拝堂に集まって……何かするんです」「何かッてのは?」「きっと、とても恐ろしいこと。噂では、他の生徒を」44

2013-10-03 00:03:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「生徒たちが……生徒をねェー?生徒たちが、生徒同士で?」「噂よ……私が見たわけじゃ……」「いや、すごくイイよ。イイ感じになってきた。続けて」「ねえ、私怖いんです。あの子たちの冷たい目。私……この学園に来たのが間違いだったって、最近は毎晩思うんです……」「待った。閃いたぞ」 45

2013-10-03 00:10:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「え……?」「UNIXのキーコード、教えて。君、持っているでしょ、臨時雇いの俺と違ってさ」「え?UNIX?でも」「教えてくれないの?そう」「114xqq39193xqq14」「アリガト。またね」ザラザラと音を立ててカーテンが開き、ナツイ先生がシャツを着ながら外に出てきた。 46

2013-10-03 00:16:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

戸口で聞き耳を立てていたキカは危ういところでその場を離れ、廊下の角に隠れた。ナツイ先生は準備室の外へ出たところで立ち止まり、数秒、そのままだった。やがて廊下を歩き出した。「……」キカは彼の背中がずっと小さくなるまで待ち、それから、しめやかに後をつけてゆく。 47

2013-10-03 00:21:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キカは付かず離れず、何かの拍子に彼が振り向けばすぐに隠れられる距離を保った。幸いナツイ先生がそうした行動を取る事はなかった。別棟に通じる渡り廊下に辿り着く。渡り廊下は扉で仕切られている。時間外で施錠されていたが、彼がそれを気にする事はなかった。細工めいた手つき。錠が開く。48

2013-10-03 00:33:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが間の悪い事に、その時、二人組の巡回警備員が、すぐ傍の階段を降りて来たのである。「あれ?」ナツイ先生が薄笑いでそちらを見やる間もあらばこそ、携帯フラッシュライトがひょろりとした彼の姿を薄暗い廊下に焼きつけた。「あン?お前……ここで何してる」「おい。先生だぜ、そいつ」49

2013-10-03 00:38:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうです!実際教諭です」ナツイ先生がホールドアップしながら答えた。「実際ナツイです。臨時雇いでして」「何やってンです」「眠れなくて」「教員寮は全然違う方向でしょ」「色々……ヒヒヒ……色々ありまして」「ナメてんのか?ちょっと来なさいよ」「ハイ、大丈夫です。何でも話します」50

2013-10-03 00:42:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナツイ先生はあっさりと巡回警備員に従う。三人は階段を上がっていく。「……」キカはしめやかに進み出た。渡り廊下の扉は開いたままだ。彼女はするりとその奥へエントリーした。ナツイ先生が目指していたのは別棟にあるUNIX事務室。さっき口頭で彼が確認していたキーコードも覚えている。 51

2013-10-03 00:48:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キカはナツイ先生の動きに目を光らせていた。どうみてもただの代用教員ではなかったからだ。シオヤカ先生は彼に何か弱みを握られてでもいたのか。だが、彼がここへ来た経緯は、今はいい。彼は間違いなくなにかを探していた。彼の探すものを探れば、キカの答えも、あるいは。校長。棺。おかしな噂。52

2013-10-03 00:54:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「114xqq39193xqq14……114xqq39193xqq14」小声で呟きながら、彼女は別棟に入り込んだ。そしてUNIX事務室へ。彼女には調べるべき情報がある。パボッ!……事務UNIXを起動すると、モニタ光の照り返しで暗い室内が幻惑的な薄黄緑色に染まる。53

2013-10-03 00:56:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キカは反射的に出入口を振り返った。誰もいない。彼女はおずおずとキーボードをタイプし、コードを入力した。UNIXは控えめなパワリオワー音を発し、やがてフォルダ管理画面が彼女を出迎えた。キカは爪を噛み、黙考した。情報……リスト……情報……在籍名簿……在籍……違う……退学者。 54

2013-10-03 01:03:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

退学者!キカは更に奥の階層へ入り込む。画面上を怒涛めいて流れる文字列に眉根を寄せる。一週間に一人。多い時に二人、三人!誰も退学しない週もある。ペースはまちまちだ。ペース?そんな事を考える時点で異常だ!キカの学年ではまだ少ない。だから異常に気づかなかったのか?退学者が多すぎる!55

2013-10-03 01:14:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

つい最近の退学者は、チコ・ケヒタ……そして、アンミ・コナキノ。ヤヨイとともに庭園でキカを追い詰めた時のアンミの態度は、とても翌日に退学を控えた者のそれではなかった。学園を出て行く者が、生意気な同級生だの、ソサイエティだの、ナンセンスにも程がある。アンミ自身も予期せぬ退学? 56

2013-10-03 01:21:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンミはヤヨイの怒りをかった。ヤヨイはキカよりもアンミに腹を立てていた。僭越だったからだ。とにかくアンミはヤヨイの怒りをかった……アンミは蒼白に……退学……?キカのニューロンはぐるぐると高速で働いた。もう少し。謎を解かないと……なぜ謎を解く?離人症めいて彼女は唐突に自問する。57

2013-10-03 01:26:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その急速なクールダウンが、彼女の聴力に、廊下を近づいてくる足音を拾わせたのである。キカは息を呑んだ。そして事務室内を見渡し、隠れられる場所を探そうとした。足音が近づいてくる!キカの鼓動が早まる。クローゼット!そんなものはない。ロッカー!そんなものはない。 58

2013-10-03 01:28:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤンナルネ!キカはせめてもの努力、机の上へよじ登って反対側に飛び降り、反対側の机の下へ潜り込んで息を殺した。UNIXの電源は切れていない。いや、せめて、UNIXに注目して、キカのほうには気づかず去ってくれたなら……去ってくれたなら……おお、ナムサン!遂に廊下の足音が室内へ!59

2013-10-03 01:33:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

戸口に立った者にUNIX光が照りつけ、廊下に巨大な影法師を作り出す!キカにその不吉で巨大な影法師は見えていない。彼女は机の下で息を殺し、ひたすらやり過ごそうとしていたのだ。足音が止まった。そして勢い良くズカズカと室内に入り込んできた!おお、おお!キカは祈るように目を閉じる!60

2013-10-03 01:36:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【グッド・タイムズ・アー・ソー・ハード・トゥ・ファインド】#3 終わり。#4 に続く

2013-10-03 01:37:15