千葉雅也さんによる詩のすすめ

これより前の、自動記述の部分まで入れると長くなってしまうので、とりあえずこれぐらいで。 ポオの「詩作の哲学」「詩の原理」は、岩波文庫から出ている『ポオ評論集』(八木敏雄編訳)に入っています。
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千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ポーの嫌らしい方法的自覚、ブルトンの擬似的な反方法(しかし〈女〉に対する欲望の特権性がそのまま残っているわけで)……。

2010-10-06 01:25:16
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

しかしともかくも、詩に限らず、芸術に関わる人は一回は、エドガー・アラン・ポーの『詩作の哲学』・『詩の原理』の嫌らしく明快な自作への方法意識をふまえておいたほうがいいわけで……。

2010-10-06 01:29:06
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ポーによれば詩の限定された長さって、探偵小説の「密室」と同じであるわけですよねえ。で、詩は短くないといけない。詩は緊張感を与えるもので、緊張感は持続しないから。長い詩ってのは語義矛盾である(逆に、もちろん、反ポー的な弛緩した長詩ということがそれゆえに構想しうるわけで)。

2010-10-06 01:31:36
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

やはり今後は、みんなもっと詩を読もう、というオススメをしていきたいですね。

2010-10-07 23:58:39
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ちょっとトリッキーなオススメの仕方を考えているんです。しかし、まずは、オススメする理由は単純です。詩は短い。ゆえに忙しい現代人の文学的滋養としてひじょうに便利である、ということ。僕、すごいせっかちなんですよ。だから美術が好き。一瞥+αでいいから。詩もそう。

2010-10-08 00:00:49
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

超いいかげんなことを言います。いわゆる純文学の大作は、時間にもっと余裕がある時代の産物であったと思う。いまや、僕たちにそんな余裕はない。そのこと自体はもちろん問題です。労働時間を短くし、長い文学を味読できる社会にするべく工夫したほうがいいでしょう。

2010-10-08 00:04:01
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

と同時に、忙しい社会への抵抗そのものとして長大なエクリチュールを紡ぐといったことにも意義がある。

2010-10-08 00:05:23
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

しかし、今日においては純とエンタメの領域横断が進んでいて、ある種の軽さ、フラットさ、仕掛けの妙などが売れる小説のポイントになっている。それと対応して、「現代詩の現代化」(というのも、いわゆる前衛的現代詩はもはや懐かしいテイストであるから)があるかというと、あまり活発でない。

2010-10-08 00:09:18
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

詩的言語の音声的なノリ、リズムの部分、そして抒情性は、日本語ロックの開発以後、J-popに吸収されてしまった。日本語ラップの登場も大きい。そうした歌謡性を、詩の本来の姿と見ることはもちろんできるし、そこから現代詩を考え直すことは実り多いでしょう。が、近現代詩には別の側面もないか。

2010-10-08 00:12:35
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

音声的なノリ以外の近現代史の部分というと、「エクリチュール」ということになり、つまり、「言語表現は言語表現である」ということの残酷な自由さ、ブランショなら「死」(=詩)と言うだろう言語それ自体の自己言及性の純化、ということがすでに歴史上のクリシェなのだが、それはそれで極端。

2010-10-08 00:15:52
佐藤雄一(Sato Yuichi) @yy_sato

@masayachiba まったく正論だと思います。右翼ちっくないいかたになるかもしれませんが、戦場にもってけるものでもあったでしょうし、最悪自分の好きな一行を暗記とか。けどその一行をだすときのドヤ顔に照れてしまうのが現代詩が現代的でないゆえんかもしれないと漠然と思います。

2010-10-08 00:17:57
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

あらためて戻りたいのは、やはりエドガー・アラン・ポーなんですよね。彼は、ミステリの祖である、つまりエンタメ小説のひとつの祖型を与えていると同時に、マラルメみたいな難解な詩に方法論的な基礎を与えた人でもあるわけで。つまり、ポー的文学空間においてエンタメと現代詩が並び立つはず。

2010-10-08 00:18:51
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

@yy_sato 昨日は批評をいただきありがとうございました。ひじょうに具体的で勉強になりました!

2010-10-08 00:21:51
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

@yy_sato 戦場に持っていける、暗記して、というのもそうですよね。小泉義之さんが、戦争をやめるには祈るしかない、少なくとも祈っている間には何もできないから、と言っている。僕は、祈っている=戦争の雨が止んでいる、そのときのcoeurのなかに詩の雨が降っている、とか言いたい。

2010-10-08 00:22:07
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ミステリも、近現代詩も、密室性を構築するわけです。そして詩は、その短さ(ポーは詩は短いものだということを強調している)において、極まった密室劇であるわけです。

2010-10-08 00:26:00
佐藤雄一(Sato Yuichi) @yy_sato

@masayachiba こちらこそ、とても新鮮なご作品拝読せていただいて、自分の創作の刺激になりました、社交辞令でなく人の新しい詩よまないと自分が書けないので…うれしかったです。詩の雨というのは静謐で美しいですね。それをぜひ実践的、具体的に考えねばと思います。

2010-10-08 00:29:28
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

@yy_sato また具体的な話なんですけど、余白を工夫したり、行変えのヴィジュアルな効果とかって、まだ、ふつうにありなんでしょうか。僕、デザイン出身なので直感的にそういうことやっちゃうんですが、オーソドクスな近代詩風行分けか、散文詩風のほうがかえってイマな感じなのかな、とか?

2010-10-08 00:33:46
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

しかし現代詩においては事件の展開がくどくど説明されないし、はっきりした事件解決がない。つまりロゴスで割りきれない。分かる、というカタルシスがない。が、なんじゃこりゃ、ドドーン!というショックがある。それを楽しむのは、ハリウッドのショック映画くらい現代的であるのではないか。

2010-10-08 00:35:45
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

つまり現代詩は、ハリウッドのショック映画くらい「現代的に怠惰に」楽しめるのではないか。もちろんそこを入り口にして、そこで起こっている事件の細々としたところへ降りていくこともできるし、それが推奨されてしかるべきだが、さしあたってはドドーンの怠惰な楽しみでもいいのではないか。

2010-10-08 00:37:42
佐藤雄一(Sato Yuichi) @yy_sato

@masayachiba そうですね。ぼくの印象だと90年代後半から2000年代の前半まで、タイポの凝った詩が流行ってましたね。ちょうどPC普及期だとおもうんで、ワープロでの改行しやすさが新鮮だったからだと思うんですが、(・・・)

2010-10-08 00:42:24
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

僕などは本当に怠惰だから、努めて見てはいるがエンタメでさえ長いものはダルいのだ。もうキャッチコピー+αだけで十分である。密室劇も、なんか密室でワクワクすんぜ、で、結論は?くらいで十分。小説のスタンダードな枚数はもっと減らしてほしい。だいたい学術論文は50枚以下だ。

2010-10-08 00:44:12
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

そうなると、である。僕の怠惰は徹底すると、もう密室劇の結論を押しつけられることさえダルいのである。それが楽しいんじゃないのかと言っている人たちはまだまだ怠惰でない。僕はもう、あ密室? くらいでいい。そうなると、詩である。

2010-10-08 00:47:07
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

詩は、筋の展開どころか語と語の関係レベルで密室であり、それを短く放り出して終わりである。詮索しようと思えばできるが、そうしなくても音声的な魅力にノっていればあっという間にいちおうの鑑賞ができる。

2010-10-08 00:49:21
naoki yoneda @naokiyoneda

@masayachiba でもそれをまた詩として召還するのか?

2010-10-08 00:53:28
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

密室で事件だ!が、語と語のレベルで生じて、それにショックを受けて、余韻を楽しめばいい。たとえば和合亮一が「奥歯は晴れ上がり/僕の乳首の先で/小麦粉が降る」(「空襲」より)と放つとき。この解決なき語それ自体の密室的戦慄。ま、この引用は僕の趣味ですが。

2010-10-08 00:54:22