【twitter小説】氷のイコン#1【ファンタジー】

騎士ミェルヒと冒険画家のエンジェは氷のダンジョンに挑みます。そこで不思議な氷漬けの女性を見つけて……? 小説アカウント@decay_world で公開したファンタジー小説です。この話は#4まで続きます
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減衰世界 @decay_world

 エンジェはポケットから小さなスケッチブックを取り出すと、その女性をスケッチし始めた。彼女は冒険画家だ。ミェルヒとの冒険の中で出会った様々な情景を絵にして街で売るのも彼女の仕事だ。それはやがてミェルヒの名声になる、そう信じて。 22

2013-09-20 17:10:47
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 スケッチは手早くすぐ終わった。エンジェのスカートにはすぐスケッチブックを取り出し収納できるよう、大きなポケットが両脇についている。 「ダンジョンに眠る謎の娘……いい題材じゃない?」  そのときギシリと軋む音が響いた。 23

2013-09-20 17:15:11
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『ミェルヒ、生命反応は……』 『何もない……魔法構造物か、死霊かっ』  テレパスで短く言葉を交わし戦闘の準備をする。まだ開けていない奥の扉が霜を振り落としながらゆっくりと開いた。 24

2013-09-20 17:19:55
減衰世界 @decay_world

 扉を開けて現れたのはボロ切れを身に纏ったゾンビだった。ツギハギの身体は四肢を無理矢理繋ぎ合わせたようで、サイズがところどころ合っていない。皮は縫い合わせたようで、縫合跡が痛々しい。不気味な表情は二人を見つけて憤怒の表情になる。 25

2013-09-20 17:26:57
減衰世界 @decay_world

「貴様ラ……ここは立ち入リ禁止だ!」  背中が蚤のように曲がっているそのゾンビは、一喝すると口から黄色い靄を噴き出した! そしてヴォオオオオと咆哮をあげる。 26

2013-09-20 17:31:57
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「ミェルヒ! こいつ例の人さらいだ! 目撃情報と……」 「了解!」  ミェルヒは盾を構えて突進する! しかしちぐはぐの外見によらずゾンビは素早く、身軽にミェルヒの突進をかわす。 27

2013-09-20 17:36:54
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 しかし、ゾンビがミェルヒに気を取られている間にエンジェは魔法を構築する。百発百中の破片の呪文だ。ゾンビは一瞬エンジェに視線を移した。そして甲高い叫び声をあげて口から黄色い靄の塊をエンジェに飛ばす! 28

2013-09-20 17:41:18
減衰世界 @decay_world

「えっ」  呪文に集中していたエンジェは靄の塊を浴びてしまう。地面に倒れ伏すエンジェ。にやりと笑うゾンビ。しかしそれで決定的な隙が生まれた! ミェルヒのダッシュからの突進が炸裂する。盾で突進され吹き飛ばされるゾンビ。 29

2013-09-20 17:48:20
減衰世界 @decay_world

 手で靄を払いながらエンジェはよろよろと立ち上がる。どうやら無事のようだ。 「エンジェ、大丈夫か!」  ミェルヒは少しだけ彼女に声をかけた。エンジェは笑って頷く。すぐさま吹き飛んだゾンビに止めを指すべく剣を振り上げた。 30

2013-09-20 17:57:04
減衰世界 @decay_world

「グォォォオ!」  ゾンビは倒れたものの叫び声をあげ威嚇し、腹からいくつもの腕が飛び出てミェルヒの攻撃を捌く。ツギハギの皮はとても丈夫で剣で切り裂くことができない! ミェルヒは足で蹴り飛ばしたり剣を振り下ろしたりして骨を砕こうとする。 31

2013-09-20 18:04:17
減衰世界 @decay_world

「エンジェ、魔法を頼む!」  しかし彼女は何故か戸惑っている。魔法を使おうとしているようだが、魔法が集束し緑の光が輝いているのに次の瞬間黄色い靄となって消えてしまうのだ。 「なんで、魔法が使えない!」 32

2013-09-20 18:09:06
減衰世界 @decay_world

 ゾンビは立ち上がると腹の腕を中におさめ、強靭な腕を振り回しミェルヒを殴打する。今度はミェルヒが防戦一方になってしまう。さっき靄を浴びせたのは魔法を封じる呪いであったか……ミェルヒはエンジェに帰還を提案する。まずは魔法が使えるようにして態勢を立て直したかった。 33

2013-09-20 18:14:36
減衰世界 @decay_world

 二人は急いでその部屋を逃げだした。だが、その好機を逃すゾンビではなかった。ウヒヒと笑うと、裸足の足でひたひたと二人を追いかけはじめたのだ……。 34

2013-09-20 18:21:18