80年代のゲーム業界の裏話

平林久和さんが語る80年代、ファミコンブームの時代のゲーム業界での裏話。
ゲーム 平林久和 ファミコン
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平林久和/H.Hirabayashi @HisakazuH
そういえば、80年代のゲーム業界はヤクザ社会と一緒で、「破門状」というのが実在した。実在どころか何通も受け取った。会社で不祥事を起こした社員、何某を当社はつき合いを断ったので、貴社でも関係を持つなという内容。筆文字みたいな書体で。
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いろんな手口があったのだけど、一番シンプルなのは現金の持ち逃げ。ある営業マンが現金決済ならば売ると問屋に持ちかけ、問屋はそれを買う。もう、会社やめるつもりだから、持ち逃げして行方不明に。なんて話を聞いても驚きもしない時代があった。
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ゲームソフトはナマモノ。相場があるもの。何本製造したかがわかれば、それが適正数で相場が安定するか、過剰生産で値崩れするかがわかる。高値の正価で仕入れず、過剰在庫だけを狙って現金仕入れをする「カバン屋」と呼ばれる人たちもいた。彼らは情報を早く手に入れるため盗聴もした。
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そうして仕入れたソフトはテキヤに売られた。だから、当時は祭りにいくとファミコンソフトを売っている夜店が必ずあった。夜店どころではない。渋谷の路上、109の横、東急本店通りでは常時、安売りソフトが売られておいた。
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こうした裏流通で儲けた若者たちは、みんなベンツに乗った。業界の人からは、揶揄と蔑視の意味を込めて彼らの乗るクルマを「ファミコン・ベンツ」と呼んだ。ファミコン愛好者にも、メルセデス愛好者にも好かれそうにない名前だ。「ファミコン・ベンツ」。
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昨日はカバン屋の話をした。信用力のない個人が、カバンに現金を詰めて在庫になったソフトを買い叩く。それで安く仕入れたソフトを売って、ファミコン・ベンツに乗ったという話だ。通称、ゲロ屋と呼ばれる人たちもいた。
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ファミコンソフトは、80年代の後期には明らかに供給過剰で、メーカー、問屋だけでもなく小売店にも在庫の山ができた。小売店、なかでも世情にうといのは地方のパパ・ママストア、特にお年寄りが経営しているような玩具店だった。そこに行くと、もう絶対に売れ残り確定のソフトが山積みされている。
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たとえばの話、1989年に『頭脳戦艦ガル』が店頭にあっても絶対に売れない。それを二束三文で買い叩く。これらのソフトの一部は違法に輸出されたこともあったが、ひどいのは、それら在庫を集めて「福袋」にして売る。それがゲロ屋の手口だった。食ったものを吐き出すからゲロ屋と呼ばれた。
平林久和/H.Hirabayashi @HisakazuH
ただ同然で持って行かれたソフトが、袋詰めされて、地方の気のいい玩具店のオジサン、オバサンは再び、売っても喜ばれないソフトを仕入れてしまうわけだ。
平林久和/H.Hirabayashi @HisakazuH
私が当時のファミコン流通が、本当にダメだと思ったのは、カバン屋にしてもゲロ屋にしても、問屋をやめて事情を精通している若者たちがやっているからだった。流通システムが悪いのだ。でも、自分で改革しようとしないんだ。そのシステムの網をくぐって儲けようとした。事態はますます悪くなっていく。
平林久和/H.Hirabayashi @HisakazuH
ちょっと詳しい人ならば「初心会」という名前を聞いたことがあるだろう。任天堂と直取引できる問屋の親睦団体だ。彼らはゲームを販売するプロではなかった。それまでは任天堂の花札・トランプ、その他玩具を売っていた。そこにソフトウェアの商品選別眼を求めるのは、土台がおかしい話だった。
平林久和/H.Hirabayashi @HisakazuH
ファミコン全盛期の時代、「初心会」の会長にインタビューをしたことがある。若くて、コンピュータに詳しそうな人間(私)が来るということで、見栄をはったのか、初対面の時に握手を求められた。その時の挨拶はなんだと思います? サンキュー、サンキューと2回言われた。
平林久和/H.Hirabayashi @HisakazuH
マリオ、ドラクエ‥‥ゲームに夢中になるキッズ。この産業の成長に夢をはせる私たちの世代。それとは、まったく別物の世界があったことの象徴が、サンキュー、サンキューだった。
平林久和/H.Hirabayashi @HisakazuH
当時の隠語で、「タイイチ」「タイサン」なんていうのもあった。人気ソフトが1本に対して、もう一本余分なソフトウェアを仕入れるのは「1対1」なので「タイイチ」。3本ならば「タイサン」だ。超人気ソフトならば「タイゴ」。この仕組みが、回り回って抱き合わせ販売となる。
平林久和/H.Hirabayashi @HisakazuH
それでは店が困るだろうと考えるのが普通だが、秘策もあった。仮に「1対3」で仕入れたとしても、小売店は優先的に人気商品が流されていた百貨店の外商を通じてソフトを定価で買う。すると「2対3」に希釈される。こんなバカげたことをやっても儲かっていたのが、ファミコンブームだった。

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