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山本七平bot @yamamoto7hei
①【責任追及者の責任】「政府の責任」と「党」との関係について、少し考えてみたい。 この言葉は、しばしば労組や野党やマスコミによって濫用された。<『「常識」の研究』
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②たとえば「それによって生ずる混乱の責任はあげて政府にある」といってストをする場合や、ある種の言葉尻を捉えて政府を追及する場合等々、新聞や声明にはしばしば「政府の責任」が登場した。
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③それらの中には、 「なるほどこれは政府の責任だな」 と思われるものもあるが、普通の常識から考えれば 「これを政府の責任というのは少々無理だ」 と思わざるを得ないものもある。
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④むしろ「そう言っている者の責任だろう」と思われる場合もあるし「言葉尻を捉えているだけで、追及している方がむしろおかしい」場合もあるし「人類の誰もが予測できなかった事態に対処していなかったから、といって責任を追及されたら、誰もこれには対応できないだろうな」と思われる場合もある。
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⑤だがこの場合、政府は決して反論しないし、「それは政府の責任ではない」と反論する言論機関もない。 大体、反論して事を荒立ててもつまらないし、政府を弁護して保守反動の手先などと言われてもつまらない。
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⑥いわば聞き流していれば、実体がない以上、その声は当然に消えてしまうという前提で、全ての人がこの「政府の責任」という言葉に対応している訳である。 言葉の誤用・濫用は、しばしばその言葉を殺す。 そうなると本当にその言葉を使わねばならぬ事態が来ても殺された言葉では何の効果もない。
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⑦事実「政府の責任」という言葉が出てきても、政府も、その言葉を耳にした者も、何も感じないという事態にすでになっているであろう。 さらに大きな問題がある。 「政府の責任」の追及は新聞の役目であると新聞は自任し、一般人もそう思っている。
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⑧ということは新聞が追及しない限り、どんな誤った決定を下しても政府は免責されてしまうということである。 たとえば新聞の誤報がパニック状態を起こし、政府がこれに押し流されて「誤報に基づく緊急対策」を実施し、その結果国民が被害を受けているような場合、新聞はこれを追及しない。
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⑨もちろん誤報に基づこうと、パニックが起ころうと、これを基にして「最終的決定」を下し、その「実施を命じた」政府にその責任があり、この「政府の責任」は決して新聞の「誤報の責任」にすりかえてはならず、両者はそれぞれ責任を負うべきことは言うまでもない。
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⑩しかしこの場合、新聞が「政府の責任」を追及すれば、それは否応なく自らの「誤報の責任」をも追及する結果になるから、この場合は両者ともに頬かぶりになり、共にこの責任問題に触れまいとする態度を生ずる。
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⑪こうなると、真に追及さるべき「政府の責任」はうやむやに放置され、これを追及しても人は「またか!」と思い、新聞も取り上げないから否応なき「無責任体制」となる。 清浦雷作東工大名誉教授から『環境問題の虚と実(1)化学工業の受難――虚報による実害』を送っていただいた。
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⑫発端は、多くの人は忘れているであろうが、余り広言できぬ病気をもつ一老人が朝日新聞の記者に会うところからはじまる。 それが、まだ診断が確定しない前に「大牟田にも水俣病?」の大見出しとなって新聞に載る。
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⑬これは有機水銀だけでなく無機水銀からも水俣病が出るということであり「第四の水俣病」ということで、翌日の各新聞は競ってこれにとびつく。 その結果、どこの魚もみな危いとなり、苛性ソーダ工場が漁民に封鎖される。
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⑭政府はあわてて「アジならアジは一週間何匹……」といった「週間魚介類摂取量」なるものを公表する。 それが、逆にパニックをあおる。 それに便乗して、「怒りをぶちまける」式の売名屋が出る。 だが結局、虚報のパニックは消え、嘘のように平静にもどる。
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⑮だがその結果、狼狽した政府の水銀汚染対策推進会議の決定は残った。 即ち水銀法から隔膜法への転換である。 それがどういう結果になったかは清浦名誉教授の論文に詳しく出ているから一読されたい。 結論を引用させて頂くと、日本の化学工業は「潰滅へと転落して行く」ことになりかねない。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑯建設には長年の努力と汗が必要だが、破壊と大量失業は一片の虚報で事足りるという一例である。 だが、今はそれを問わない。 問題は、この間における「政府の責任」である。 新聞も野党も、おそらくこの責任は追及すまい。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑯では、追及されなければ放置してよいのか。 もしそれを放置すれば、新聞との癒着による無責任体制になる。 この場合、この問題に決着をつけて責任の所在を明らかにすることは、議会を通じての党の役目であると私は思う。

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