大罪大戦Lite 第一戦闘フェーズ 五の間

憤怒 イラ @Ira_Peccatum 慈悲 パティエンティア@L_Patientia_
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憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「――さて」 扉をくぐり、決戦の場へと姿を現す『憤怒』。 「お相手は……まだ来ていないようですね」 一度瞳を閉じ、再び開いた時には、その瞳が、その髪が、蒼く、碧く染まっていて。 「我ガ絶氷ノチカラ、思イ知ラセテヤロウ」

2013-10-20 16:30:13
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

——最後まで迷って、背を見送って、そうしてから五枚羽の銀貨を手に扉を抜け。 ふわり、降り立つ。光ある場所とはその景色も様子も、風すらもが、まるで違うものであると、確信めいた冷たさが広がる。 「……狭間……」 寂しい、場所だ。命あるものの一つとして存在しない、不毛の荒野。——だが、

2013-10-20 17:29:40
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

ぐるりと見渡した灰茶の中に、一人。天で感じた冷たいもの。法衣の中から細長い刃を有する短剣を取り出し、柄を胸に抱き込むように。ゆっくりと、踏み出す。 「……お初にお目にかかります、地の昏きの方」 その深い硬い色に、圧されぬよう。声は確と震えぬように。まっすぐ、見つめる。

2013-10-20 17:29:40
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「来タカ、『美徳』」 何もない荒野に、蒼く光る憤怒。 足元からは幾つか氷柱が突き立ち、その手からは一本の長い鎖が垂れ下がっている。 「我ハ『七ツノ大罪』ガ一ツ、『憤怒』」 ゆらり、と廻した鎖が、大地を引きずり、鞭打って。 「ソノ命、貰イ受ケル」 パティエンティア目掛け、奔った。

2013-10-20 18:19:01
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

鎖が見えて、足を止める。憤怒、激情により眼を曇らせる、『大罪』。 「……私は慈悲、人の善き心のひとつを、顕す者」 ゆるりと、両手を差し出して。 「貴方には、差し上げられません——風よ、《再誕》を」 声に呼応するように、突如生まれた陽炎のような大気の壁が娘の眼前に広がり、阻もうと。

2013-10-20 18:51:11
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

大気の壁。ぶつかり、阻まれ、鎖は憤怒の手元へと帰る。 「慈悲ダト?――下ラヌ」 もう一度打ち出される鎖。それと同時に、足元を這う氷。 「人ノ本質ハ悪ダ、罪ダ」 鎖ばかりに意識を向ければ、足元からの氷の牙が襲い掛かるだろう。

2013-10-20 19:10:18
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「昏い瞳の持ち主には、そうでしょう」 光を纏う羽が広がる。大気の壁は霧散して、娘はふわり、浮き上がった。罪の領域に捕らえられればどうなるかは、想像に難くなかったから。 「彼らは光を見る事が叶わない……己が灼けてしまうから」 今度は防ぐ事はせず、羽で空気を打ち大きく横に飛び退く。

2013-10-20 19:24:39
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「でも、光を見ぬ人間も、……罪の具現である、貴方でさえ、『美徳(ひかり)』がある事は、知っている。だから私が慈悲として奇跡を成したのです」 片手を伸ばす。語る顔には苦悶、それでも。 「大地よ、《生まれ変わって》……彼を、谷底へ」 割れ呑み込めと、命を下す。

2013-10-20 19:24:40
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

ぎしり。 開くはずの大地は。憤怒を飲み込もうとしたはずの顎は。 その足元に打たれた氷の楔によって、主の命を、実行できないでいた。 「ナラバ」 飛び退いた慈悲を追うように。絶対零度の視線が向かう。

2013-10-20 19:36:49
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「ソノ『美徳(ヒカリ)』、我ガ罪ニヨッテ黒く塗リツブソウ」 憤怒の右手に巻き戻った鎖が。今一度唸りを上げ、弧を描いて慈悲へと向かう。 同時に、左手から幾つも生まれた氷柱が、弾丸のような勢いで打ち出された。

2013-10-20 19:36:51
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

大地は動かない、動けないままであるのだと分かって、細く、呼気が喉を流れる。震えたそれを押さえ込んで、瞳に浮かんだ別の色を、振り払う。 「……貴方には、出来ません。闇だけの世界は成らない、成り得ない」 飛来する氷柱は再び羽を打ち避け、しかし三度飛来する鎖が左の腕に絡み付き、

2013-10-20 20:04:16
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

——構わず、短剣を握る右の腕を空へと伸ばした。 「《再誕》を、光よ、浄化を……!」 姿を変え『大罪』に迫れと、命じる。広げられた羽の纏う鱗粉のように細かな光が散ると同時、憤怒へと劫火の矢が迫った。

2013-10-20 20:04:16
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「其レヲ決メルノガ、コノ『大戦』ダロウ」 飛来する業火の矢。避けようとはせずに。 「『浄化』サレルノハ貴公ダ、『美徳』」 絡みついた鎖を引き、パティエンティアを引き寄せて盾にしようとする。

2013-10-20 20:20:58
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

腕に鈍い痛み。視界に映る色が伸び、混ざる。引き寄せられる、理解すると同時に短剣で空を切り鞘を、振り落とす。 「この恐れが、恐怖が炎に滅されるのであればそれで良い、私は……っ」 羽を広げる。引き寄せられるそれを逆に利用して自ら風を打ち『憤怒』へと肉薄し、胸元、目掛けて、刃を。

2013-10-20 20:33:40
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「ナ…」 驚愕の表情。今まで、それこそ氷のようだった憤怒の表情が、動く。 まさか捨て身の覚悟で突撃してくるとまでは思っていなかったのか。 咄嗟に左手を盾にし、刃が胸元に突き立つのを防ぐ。 「……てめぇ」 赤い血が流れ、大地に滴る。 「ふざけたマネしてんじゃねぇぞクソアマァ!!」

2013-10-20 21:07:22
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

髪が、瞳が、紅く、染まっていた。 今までの絶氷の如き冷たき怒りではなく。 燃え盛る獄炎の如き灼熱の怒りが、真正面から慈悲を睨みつけ。 迫り来る業火の矢を意にも介せず、パティエンティアの首を締め上げようと右手が伸びた。

2013-10-20 21:10:15
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

突き立った。突き抜けた感覚が、まっすぐに掌から胸にまで駆け抜けて。じわりと眼に浮かんだものは拭う事も出来ず、だが激昂する声にはどうしてか、安堵にも似た感情が沸き起こるのを禁じ得なくて。 「っ、巫山戯て、など、」 振り払うように声を上げる最中に、首を捉えられて呼気が遮られる。

2013-10-20 21:24:27
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

柄を握り締めたまま紫苑の瞳を強く歪めて、目の前の『大罪』を見据えて。 声は出せないまま歪んだ視界を見、《再誕》をと、唇が象る。炎が数を増して憤怒に、その周囲に、娘をも巻き込んで降り注ぎ、   ——氷が炎に当てられ割れる音。地響き、押さえ込まれたままだった大地の『口』が、開く轟音。

2013-10-20 21:24:28
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「クソッタレがッ!!」 捉えた。その細い首を圧し折ろうと力を込めた瞬間に、足場としていた大地が裂ける。 「死なば諸共――とでも言うつもりか、こんのド畜生!!」 巻き付いたままの鎖が、燃え上がる。 二つの存在が、共に燃え盛りながら地の底へと堕ちて行く。

2013-10-20 21:32:18
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

炎に巻かれる。法衣が、髪が燃え上がる。それでもと広げた羽、ただ綺羅綺羅しい白い翅から、ただ光を流しながら。 再誕を、ただそれだけを願う、一度崩れたものしか、新たな道には進めないから、だから。 「——その通りです」 声になっているのかも分からないまま、笑み、肯定した。

2013-10-20 22:09:01
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「――ざっけんなぁぁぁあぁあ!!!」 絶叫とも、咆哮とも。どちらとも取れる叫び声が、鼓膜をつんざく。 「俺はゴメンだね、てめぇみてえな鳥肌の立つような奴と心中するなんざよぉ…!!」 右手が、燃え上がる。 左手が、燃え盛る。 業火の矢を受けたからでなく、「憤怒」の力で。『罪科』で。

2013-10-20 22:48:52
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「だから――」 そのまま、右手を振るう。 絡んだ鎖が、『慈悲』から外れる。 無理やり、左手を引き抜く。 刺さった刃が抜け、鮮血が宙を舞う。 「勝手に死んでろ、クソマヌケ!!」 紅く、紅く、紅く。 全てを染め上げる焔球を、両手の間に創りあげて。 パティエンティア目掛け、叩きつけた。

2013-10-20 22:52:59
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

——心中。そうなってしまう、のだろうか。『大罪』の叫びを聞いて、そう思って。鎖と刃が外されて離れていく。谷底へと落ちながら。 「……そう、ですか、なら」 声が嗄れている。翅を広げる。ふわりと光が舞い浮力を得て落下の速度を緩める。緩めて留まった空中、迫る火炎をそのまま、受け入れた。

2013-10-20 23:09:33
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「チッ…!」 イライラが、収まらない。 「てめぇは戦いに来たんだろうが!俺を殺して、世界を気持ちわりぃ『希望』で満たそうとしてんだろうが!!」 堕ちながら、落ちながら、墜ちながら。 燃え盛る焔球をその身で受け止めた慈悲に向かって、『憤怒』をぶつけていく。

2013-10-20 23:35:36
憤怒(イラ) @Ira_Peccatum

「この程度か、てめぇの『希望』は!」 どうにも、イライラが、収まらない。 だから。両の手に作る焔球は、地割れの幅を埋め尽くすほど大きく。 「そんなに死にてぇなら――」 直撃した前弾の煙が、晴れないまま。 「殺してやるよ、クソ『美徳』!」 二撃目を、叩きつけた。

2013-10-20 23:39:19