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【傲慢】ロセリア (@r_sinoxx) VS 続きを読む
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雛未クロエ @r_sinoxx

百合に、薔薇、鈴蘭にローズマリー。 色それぞれ鮮やかに咲き誇る花園を、黒と青が垣間見える銀髪を揺らし、灰色のスーツを纏う男は歩んでいた。青い瞳は緩く弧を描き、指先で花を撫でる。名もなき白い花。慈しむ様に触れ。 「もう少し、か」 風に揺れる黒いマントの裏、赤が波打っていた。

2014-01-09 18:17:32
雛未クロエ @r_sinoxx

男、——ロセリアは歩を進める。 花園の傍では緑が広がり、風が花や草と戯れていた。それを一瞥すると、花に目を戻す。先程とは違う花に触れ、蕾を撫で、そうして、笑みを深める。 青い空の下、其処にいるのは、彼だけだった。人の子一人で居らず、風と空、そして花だけが彼の傍に在った。

2014-01-09 18:19:32
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

一人の女が、深緑囁く草原を歩いていた。空は鮮やかな紺碧。色を取り零してしまったかのような銀灰の瞳は和らにしなり、優しげな風が白藍の髪を揺らす。纏う白衣は皺一つ無く、短いスカートからすらりと伸びる足は純白のサイハイソックスに覆われ、純白のハイヒールが草花が掻き分ける。

2014-01-09 19:24:34
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

歓びを表すかのように紡がれる賛美歌。くるりと回っては、跳ねるように歩を進め。やがて見ゆる花園に、女は歓声を上げた。 「わあ〜とっても綺麗なお花畑です〜」 白と赤。黄色に青。色とりどりの鮮やかな花園は穏やかにその身体を揺らし、海のように波打つ。

2014-01-09 19:24:59
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

二本の足は喜び勇んで地を蹴って、花園と草原の際で止まり。 「う〜ん……中に入ったら踏んでしまいそうです〜……」 眉根を下げ、残念そうに溜息を吐いた。代わりとばかりに花園をぐるりと見回せば—— 「おや〜?」

2014-01-09 19:25:05
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

視界に入ったのは、銀と灰色。少しばかり遠くてよく分からないが、人影と思わしき形をしたそれに女はぱちりぱちりと瞬きをして。 「こんにちは〜」 両手を口の傍に添え、聞こえるよう大きな声を出した。

2014-01-09 19:25:09
雛未クロエ @r_sinoxx

不意に人の声が聞こえ、花から視線を外す。聞き覚えがない、間延びした声に、ふむと息を吐き、声のした方を見やった。 草原の緑と、空の青。その途中にすらり、と立つ白い人影。 「白に見覚えはないな」 小さく呟き、足を人影の方へ。花を傷つけぬ様に、間を抜け、違和感に気づいた。

2014-01-09 22:21:29
雛未クロエ @r_sinoxx

人だと、一目で認識出来たのだ。普通の人間であれば、花としか認識出来ない、この瞳が、人として認識した。 そっと目を閉じ、開き、さらに近づく。 「こんにちは」 柔らかな笑みで挨拶を返した。白い人影はナース服を纏った女性だった。——肩に、見たことのない花が咲いている。

2014-01-09 22:23:11
雛未クロエ @r_sinoxx

違和感は確信に変わり。 「付かぬことをお聞きしますが、」 ロセリアには普通の人間が花に見える。故に、それに当てはまらず、花を体に咲かせた彼女は普通の人間ではなく—— 「貴女は大罪か、美徳か。どちらですか?」 ——私と同じような、存在。 尋ねる声は確信を孕んで、響く。

2014-01-09 22:29:38
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

人影が近付いて来る。徐々にハッキリとする輪郭は、最終的に青と黒の混じる銀糸を揺らし、青の瞳を持ったスーツ姿の男の姿となる。 向けられる微笑に女もまた笑みを浮かべる。そして齎された問いに。 「大罪?美徳?いったい何のことでしょう〜?」 女はサッパリ分からないとばかりに首を傾げた。

2014-01-09 23:09:15
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

大罪も、美徳も、女には聞き覚えが無かった。いいや、神を信仰し、祈りを捧げて来た女には、思い当たるところはある。だが、それは人の形を持たない概念だ。男の言葉に滲む確信にも女は何を言われているのか分からず、困惑と混乱ばかりがその白い面に乗ることとなった。

2014-01-09 23:09:20
雛未クロエ @r_sinoxx

首を傾げ、困惑と混乱を顔に浮かべる女性に、ふむ、と息を吐いた。 普通の人間ではない。それは、自らと同じような存在とそれ以外を見分ける瞳が示している。しかし、彼女は「何のことでしょう」と、返してきた。どういうことなのだろう。 思考は一瞬。結論は出た。なんであれ、是とし、認めるのみ。

2014-01-09 23:33:53
雛未クロエ @r_sinoxx

「分からないのであれば、それで結構です。混乱させるようなことを言って申し訳ない」 軽く頭を下げる。そうして、顔を上げた先に、花が目に映った。彼女の肩に咲いた見たことのない花。咲いているのに、その花には生気がないように思えた。ふむ、と三度息を吐き。 「そういえば、お名前は?」

2014-01-09 23:49:08
雛未クロエ @r_sinoxx

思い出したように、また尋ねた。 そうして、ゆったりと笑みながら、 「私はロセリアと言います」 自らの名を告げる。少しだけ考え込み、また口を開く。 「……あと、一部の者から『傲慢』と呼ばれることもありますね」 付け加えたのは、座名。なんとなく、気まぐれに、付け足し、告げた。

2014-01-10 00:03:54
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

「いいえ〜お気になさらず〜」 頭を下げた男に、女は首を横に振る。分からなかったのは、きっと此方の落ち度だ。男が謝ることでは無い。 それから告げられた名に、女もまた自身の名を口にしようとして。 動きかけた唇は、止まった。 それを成したのは、男が付け加えるように言った一言。

2014-01-10 07:29:24
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

『傲慢』という、一つの『大罪』—— 「そうですか〜」 ——罪は悪。悪は要らぬもの。悪は消えるもの。 「私はジャックと申します〜」 ——罪には罰を。須く罪には裁きを。 女の左手に、突如として握られた大鎌。身の丈を越す両刃の大鎌をゆらりゆらりと揺らして。 それを男へ向けて振り抜いた。

2014-01-10 07:34:25
雛未クロエ @r_sinoxx

悠長に彼女の名を聞く暇もなく、いつの間にか現れた大鎌が、こちらに向かってきていた。 驚いたように軽く目を見開くのは一瞬。大鎌の下を通り抜けるように、腰を低くし、地を蹴って花園の反対側——彼女の、後ろ側へと回った。避けきれなかった刃が頬を掠める。溢れる血で指先で濡らし。

2014-01-10 08:47:46
雛未クロエ @r_sinoxx

「一体、何のつもりかな」 口調を変え、悠然と微笑む男の手にはいつの間にかタロットカードのようなものが握られていた。それを血濡れた指で撫でる。 描かれている剣の絵が掠れた赤に染まり。 「私が認めた剣よ、『おいで』」 彼の言葉と共に、カードは消え、代わりに白銀の剣がその手に。

2014-01-10 09:20:44
雛未クロエ @r_sinoxx

鋭い切っ先は彼女に向け、柄についている青い紐が風に揺れる。 「ああ、あと、——ジャックさん、君は何者かな?」 思い出したように付け加えたのは、ふとした疑問だった。生きているのか、死んでいるのか。彼女に咲いている花が今まで見たことがないほど、異様で歪で、興味が湧き上がる。

2014-01-10 09:21:02
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

振り抜いた大鎌は相手を捉えること無く空振る。自身の背後へと回った男に、女はくるりと向き合って。 「う〜ふ〜ふ〜」 ぐるんと大鎌を回した。地面は抉られ、緑が散る。羽のような軽さで扱われるそれは、それに反した重さを持ち。 「『大罪』は悪です〜悪は消えなくてはなりません〜」

2014-01-10 11:04:04
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

女は微笑んで言葉を紡ぐ。 「貴方が何を聞いているのか分かりませんが〜」 再びゆらりゆらりと刃先を揺らし。 「私は私です〜」 地面を蹴った。剣も疑問もどうでもいい。 ——『冥く』 大切なのは、全てが正しくあること。 ——『冥く』 女はただその為だけに、男へ向けて大鎌を振るった。

2014-01-10 11:04:17
雛未クロエ @r_sinoxx

「大罪は悪」その言葉に、ああ、と笑みが零れた。——『正義』か。 笑みは深まり、地を蹴った彼女から離れるよう、自身は前を向いたまま、後方に向かって地を蹴る。その時、突如として、光が消えた。何も見えない。 「は、……」 それは秒数にして僅か一、二秒程度。その間に女性との距離は近づき。

2014-01-10 11:29:23
雛未クロエ @r_sinoxx

慌てて大鎌の刃を剣で受け止め、力づくで逸らし、また後ろへ距離を取る。響く鉄の鋭い音に、唇を吊り上げた。 「そうか。なら、良い」 ——あの大鎌に切られるのは危険だな。 短剣が描かれたカードを五枚、扇状に持ち、彼女に向かって投げる。それは空を切って滑空し、五つの短剣へと姿を変えた。

2014-01-10 11:42:29
雛未クロエ @r_sinoxx

「短剣よ、『穿ち、刺され』」 男の声に呼応するよう、五つの短剣は彼女を突き刺さんと、空を駆ける。

2014-01-10 11:48:16
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

大鎌は剣に止められ、軌道を逸らされる。鋭く響く金属の音には耳も貸さず、女は間髪入れずに大鎌を構え直し男へと向かう。 最中、飛来するカード。五枚のそれは短剣へと変じ、女へと向かい来る。 「う〜ふ〜ふ〜」

2014-01-10 11:54:08