if戦闘

【傲慢】ロセリア (@r_sinoxx) VS 続きを読む
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ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

振り上げた大鎌が、肉を切り裂く感触を得る。 「うふふ、うふふ〜『冥く』〜『冥ぁく』〜」 微笑みながら更に強く大鎌を押し付けようと力を込め、だが直後、熱を感じ。 鎌が溶けようとして行くのを見た。咄嗟に鎌を一度叩く。刹那、ぐにゃりと曲がり、溶け、二つに分かれる。

2014-01-10 23:31:47
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

片方を飛ばす。ぐるりと大きく円を描くように旋回するそれはどちらかが死ぬまで決して止まりはしないだろう。 残るは一つ。しかし、振るうより先に灼熱の剣が女を貫き。 「うふ、ふ、」 炎が女を包む。瞬間、女は動きを止め。 「うふふ、うふふ、うふふふ、ふふふ、あは、」

2014-01-10 23:32:00
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

しかし、女は身体を動かした。灼熱が己が身を切り裂かんばかりに焼き尽くす。——苦しい。 それは久しぶりの感覚だった。だからこそ女は動いた。 「うふふ!ふふふ!」 苦しい、熱い、痛い。ならば身体は生きている。身体は此処にある。ならば女は悪を斬る。自らの信じる正しさの為に女は男へ走る。

2014-01-10 23:32:37
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

燃える、燃える。よろけながらも倒れることなく進む。早く走れない。どうだって良い。鎌が溶けて行くのが見える。どうだって良い。 「うふふふふふふっ!」 風を斬る音がする。女は男の前へ行く。焼け落ちて行く自らの身体と、自らの意識。それでも、男の首めがけて刃を振り抜かんと女は動き——

2014-01-10 23:33:24
雛未クロエ @r_sinoxx

聴覚が女性の笑い声を拾う。風切り音を拾う。——思考は止まったまま。 幽鬼のように、ふらりと男は立ち尽くしていた。そのまま、十秒程過ぎ、やんわりと思考はまた動き出す。 闇が消え去った瞳が映したのは、灼熱に焼かれながらもこちらへと向かってくる彼女の姿だった。 男は嗚呼、と驚き、笑む。

2014-01-11 00:14:25
雛未クロエ @r_sinoxx

微睡むような思考に苦笑し、女性の肩で共に燃える花、そうして、彼女の姿に見惚れる。 「——花は燃える、」 歌うように言葉を紡ぎ、一歩また一歩と彼女に近づいていく。向かってくる女性が持つ鎌の刃に首を落とされたら流石に死ぬだろう、と考えながら、それもいいか、とまた、微笑む。

2014-01-11 00:22:28
雛未クロエ @r_sinoxx

そう思うくらいにはこの心は、喜びを、そして新たな驚きを甘受出来た。それは何とも幸福なことだろうか。幸せなことだ。心の中で、問いては応え、問いては応え。——笑う。 「土は蠢く、闇は啄む、太陽は熔ける、」 声は軽やかに、響き。 死んでもいい、だが、一人で死にたくはないな、と地を蹴る。

2014-01-11 00:28:25
雛未クロエ @r_sinoxx

体から溢れる血は全て無視して、ただ、彼女に向かっていく。 首を狙って振り翳される鎌の刃は振り上げた右腕で受け止め、左腕は女性を抱き寄せんと伸ばす。どろり、と流れ出る血。神経も断ち切れ、ただ体についているだけになった右腕に対し、感傷を覚えることもなく。 闇が広がる視界で、尚も笑う。

2014-01-11 00:37:46
雛未クロエ @r_sinoxx

はらり、と右手から零れたカードが風によって宙に舞い。 「——星は落ちる」 描かれていたのは、流星群。隕石としては小さい、しかし大きな炎の岩が空から無差別に、無慈悲に落ちる。 一つ、花園に落ちて、花は炎に呑まれる。 そしてもう、一つ。 二人を共に砕き潰さんと、落ちてきていた。

2014-01-11 00:53:05
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

——『冥く』 鎌は阻まれ、首を落とすことは叶わず。 ——『昏く』 抱き寄せられた身体を引き剥がすには、もはや身体に力が入らない。 ——『暗く』 炎に焼かれ、もはや喉を震わすことも叶わない。

2014-01-11 01:07:15
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

——須く悪は裁かれよ けれども女は、柔らかく微笑み。 ——けれど、せめて、 狭まった視界。片方だけの瞳に、炎が見える。落ち来る炎が見える。 ——その、間際、 それが何処へ落ちるのか。女には分からない。花園か、草原か、はたまた、此処か。

2014-01-11 01:07:58
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

——その一瞬だけは、せめて、 女は最後の力を振り絞り、未だ飛翔する鎌を呼び寄せる。 ——痛みも、苦しみも、悲しみも、怒りも、憎しみも、絶望も、無く 女の意に従い、風を斬る音が迫る。そのまま男の背へ刺されと、願い。

2014-01-11 01:09:43
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

——『冥く』、安らかに、 燃える腕で、男を抱き、女は静かに目を閉じた。 ——『目を瞑る』ことを——

2014-01-11 01:09:53
雛未クロエ @r_sinoxx

左腕には確かな女性の感触があり、柔かな笑みを浮かべる。視界に光が戻り、映るのは彼女の笑み。声をかけようか迷い、口を開いた瞬間、背中からの衝撃で息が詰まった。じわりと広がりゆく痛み。——彼女の、鎌か。 「素晴らしい執念だな」 ——正義、とは皆こうなのだろうか。 湧いた疑問に微笑み。

2014-01-11 01:30:32
雛未クロエ @r_sinoxx

視界は暗く、闇に。 徐々に炎を纏った星が近づき、周囲の空気が焼ける。男の笑みは崩れない。 「——星は、落ちる」 女性を抱き、離さない男の上に、そうして腕の中の彼女の上に、燃え盛る岩は落ちた。星に潰され、暗闇の中で、確かに在った感覚すらも薄れ。 それでも、男は最期まで笑っていた。

2014-01-11 01:40:28