艦これ　深海棲艦ＳＳ

AG @nenowawa

目が覚めた時、どことも知れぬ海の上にいた。昔の記憶を探ろうとするが、何も思い出せない。ただかすかに脳裏をよぎるのは、真っ暗な海の底の光景。自分の名前も分からない。ふと、頭の中で声が響く。「――戦え。――憎め、スベテを」この声が、私を導いてくれるのだろうか？ #深海棲艦 #艦これ

AG @nenowawa

「――憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎いニクイニクイニクイ……！」私の中で響く声に、頭が割れそうになる。絶え間なく続く声に、心まで侵されていく。セカイすべてを壊してしまいたい衝動に駆られる。……ただ時折、いつもと違う声がする「かな…ず帰っ…お……」よく聞こえない #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

私には以前、大切なものがあった気がする。それが何かは思い出せないが、その何ともしれぬものを思う時だけは、頭の声が少し小さくなる。 #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

絶え間なく響く声に従って進むうち、誰かに出会った。誰かは分からない。その『誰か』はとても黒かった。黒々と輝いていた。闇のように黒く、暗かった。いや、白いのかもしれない。とにかくしかし、その二つは決して混ざることはない。なんだか、私のように見えた。 #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

黒くて白い『誰か』は沢山いるようだった。姿かたちは違えど、皆一様に同じ方を見ていた。私もその一人だった。あの先に、何かがあるのだろうか。考えると、また何かが頭をよぎる。「必ず帰っておいで」誰だろう。分からない。ただ、その声はとても暖かいものに感じた。

AG @nenowawa

私たちが向かう先には、何があるのだろうか。皆が見つめる視線の先に、何が。もしかすると、そこには私の何か大切なも「――憎め」 #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

分からない。分からない。何かを思い出しそうな気がしていたが、結局何も分からない。頭の中で何か声がする「――スベテをニクメ」分からない。「カナラズカエッテオイデ」分からない。何も分からない。でも、あの先にはきっと、何かが――。 #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

身体の自由がきかない。私の意思では指一本動かせない。しかし何故だろう。勝手に進み続ける。私たちが目指す場所へ。過ぎ行く景色に、島影に、見覚えがある気がした。なにも思い出せないが、それでもどこか懐かしいような、そんな気がした。 #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

何かが見える。私たちのような『誰か』ではない。しかし、私の記憶を強く刺激する。誰だろうか。「一航戦……、出ます！」沢山の小さな何かが、近づいてくる。何かが、降ってくる。何かが、飛んでくる。何かが、当たった。 #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

身体が熱い。燃えるように熱い。いや、本当に燃えている。何故？……何故？分からない。それでも体は私の意思に関係なく動く。私の砲口が誰かに向く。そして爆音が響いた。「きゃあっ！誘爆を防いで!!」その声に、なぜか酷く胸が痛む。何故？分からない。 #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

次々と鳴り響く爆音。水面は荒れる。燃え盛る炎は、私自身から立ち上っている。「――憎め、ニクメ」声は止まない。何を？誰を？「――憎め。スベテを」何故？分からない。「全主砲、斉射、撃て！」あの誰かは、どうして私を撃つの？私が――、ニクイの？ #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

「沈みなさいっ！」また何かがぶつかった。私自身から発する炎は、激しさを増す。もう自分の意思も関係なく、もう動かない。身体が傾く。体中に塩辛い何かが入り込んでくる。あと少し。あと少しで着くはず。なのに、どうして私の体は動かないの？ #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

私は誰？あの誰かは、誰？あの場所は、何？分からない。意識が薄れる「敵艦捕捉。全主砲薙ぎ払え！」景色が暗い。「――憎め」声も、遠い。ここは、海の、底？「――必ず」……？「――必ず帰っておいで」……ああ、そうか。やっと、やっと思い出した。 #艦これ #深海棲艦

AG @nenowawa

トても賑やかで、とても騒ガシくて、とてモ楽シい、トテも大スきなみんな。とてモ、トテモたイセつなあノ場所が……ミえル。ヨカッタ、かエってこラレテ。……ヤット、ヤット、アエマシタ。「――おかえり」「……ハイ。タダイ…モド…マ…タ。テ…ト………」 #艦これ #深海棲艦