「えーお菓子ないんデスカー? じゃあチョットだけイタズラネー」って言って不意打ちキスした後、「もっと欲しかったらお菓子を持ってワタシの部屋に来るデース!」っていう焦らしプレイも
2013-10-31 00:30:53「いつもありがとー!」 西洋の魔女に扮した那珂が最後に残った菓子の包みを手に出て行くと、執務室はふっと静寂に包まれた。 「一段落着いたかな……?」 椅子に背を預けてぼんやりと天井を見上げる。こんな呑気な事ができるのも今日までだ。
2013-10-31 22:50:36明日からはこれまで偵察機を飛ばすことも出来なかったサーモン諸島方面攻略作戦が始まる。 ならばせめて今日だけはと艦娘たちには警備担当の少数の艦を除いて暇を出した。 すると誰の差金か、彼女たちは思い思いの仮装をして執務室を尋ねてきた。
2013-10-31 22:54:56その時の合い言葉は――「Trick or Treat!」ひときわ元気のいい声とともに執務室のドアが叩かれた。 「コンバンハ! 提督! お菓子くれないといたずらしちゃうヨ!」 金剛は深海棲艦を模したと思しき被り物をとって悪戯っぽい笑顔を私に向けた。
2013-10-31 22:59:58「少し遅かったな。最後のお菓子は艦隊のアイドルが持っていった」 実は彼女のために特別に取り寄せた菓子が用意してある。 「えーお菓子ないんデスカー? じゃあチョットだけイタズラネー」 私が口を開く前に頬を膨らませた金剛がこちらに近づいてきた。 「は? 何を言って……っ!?」
2013-10-31 23:05:25「フフフ……」 いつもの彼女からは想像できない妖しい笑みを浮かべると、金剛は軽い足取りで二歩、私から遠ざかった。 「もっと欲しかったらお菓子を持ってワタシの部屋に来るデース!」 「あ、あぁ……」 頬に触れた金剛の唇の感覚が残っているうちに、彼女は執務室から出て行った。
2013-10-31 23:15:57「やられたな……」 再び静かになった執務室で、自分の鼓動だけがやけに煩く聞こえる。 どうやらやり返すためには彼女の部屋に行かねばならないようだ。――何が起こるかはだいたい想像がつくが。 「さて……」 机の引き出しから化粧箱を取り出すと、私は金剛の部屋へと急いだ。
2013-10-31 23:20:10「やっぱり来たネ!」 艤装を解除した金剛は布団の上に座って手招きしている。 「やっぱりも何も……ほら、コレ」 「What!?」 化粧箱を受け取った金剛はその刻印と私の顔を見比べる。 「これ、ワタシに?」 「そうだ。開けてもいいぞ」
2013-10-31 23:25:29金剛は目を輝かせながら『46cm三連装砲』と書かれた化粧箱の蓋を開けた。 「Great!」 新しいおもちゃを手に入れた子供のように箱から出した新装備をいろいろな方向から眺める。 「つけてもいいんだぞ」 金剛は早速艤装に新装備を取り付け、腰のソケットに装着する。
2013-10-31 23:30:00「やっと本当の私になれた気がシマース!」 金剛は私の見ている前でくるりと回ってみせた。 「重くはないか?」 「ちょうどいいデース! ……でも」 金剛の表情が少しかげった。 「ん、何か問題があるなら工廠に連絡するが」 「お菓子はないんデスカ?」 「ちゃんとあるぞ?」
2013-10-31 23:35:35「Really!?」 「ほら、箱の底に」 新しい主砲に注意がいっていたのか、金剛は緩衝材に埋もれた菓子に気づかなかったようだ。 「ありがとうございマス」 金剛は嬉しそうに小さな菓子箱を抱える。 「わざわざ横浜から取り寄せたんだ。味わって食えよ」
2013-10-31 23:40:30金剛は包装を丁寧に剥がすと、フタを開ける。 「Wow!Congratulations!」 箱の中にはかぼちゃの形をした洋菓子が二つ、仲良く並んでいた。 「提督も一個食べるネ?」 「いや、これは君の分だよ」 断ろうとした矢先、金剛は菓子の片方を私の鼻先に突きつけた。
2013-10-31 23:46:05「ハイ、アーン」 「あ、あーん」 促されるまま口を開けると金剛はそのまま菓子を私の口に入れた。 「どうですカ?」 「……美味い」 「はむっ……うぅ、ちょっと変な味がシマース……」 一口かじった金剛は私とは逆に洋酒の味が気に入らなかったようだ。
2013-10-31 23:50:26菓子を食べ終わってしばらく、私と金剛はとりとめのない話をしていた。 「はぅ……」 突然、それまで普通に私と会話していた金剛が私にしなだれかかってきた。 「どうした?」 「提督ぅ、ワタシ、体が熱いデース……」 金剛はとろんとした目でこちらを見上げる。
2013-10-31 23:56:12「……まさかお前」 ――酔ったのか、あの香り付け程度の洋酒で。 「んふふー、提督」 ぎゅっと私に抱きついた金剛はそのまま私を布団に押し倒した。 「私の実力、見せてあげるネ!」 金剛は不敵な笑みをこちらに向け、服の帯を緩める。 「金剛……!」
2013-11-01 00:01:25金剛は私に覆いかぶさり――そして穏やかな寝息を立てて眠り始めた。 「あ、おい、金剛?」 「くぅ……てーとくぅ……」 「おいおい」 艤装をつけたままの戦艦をどかすのは容易ではない。 「明日の朝日、拝めるかな……」 漠然とした不安と金剛の匂いを感じながら、私も目を閉じた。
2013-11-01 00:07:30