イザヤ・ベンダサンbotまとめ/【天秤の世界】/~実体語と空体語という「天秤」と、それを支える支点(=人間)から成る”日本教の世界”とは~

イザヤ・ベンダサン著『日本教について』/実体語と空体語のバランス/天秤の世界/28頁以降より抜粋引用
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イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

①もう一度申し上げます。 分銅はたとえ、天秤皿の上のものと同じ材質でできていても、「もの」でなく「尺度」であり、分銅の材質が何であるかを論じても無意味で、要はそれが、天秤皿の上のものと、どうバランスをとっているかが問題だということです。<『日本教について』

2013-10-25 12:39:59
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

②「現実問題」という「実体語」の荷が天秤皿にのると、平衡を保つためには、天秤ならば分鋼の数を増し、竿秤ならば分鋼の位置をずらして目盛りの高い方へあげて行かねばなりません。 こういう状況は、常に、日本全体の問題にも、一個人の問題にも起ります。

2013-10-25 13:39:58
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

③例をあげれば、文字通り、いくらでもあります。 今から一世紀ほど前、日本が鎖国をやめて開港せざるを得ない状態になったと、ほとんどすべての日本人(少なくとも知識人)が内心で感じたとき、激烈な攘爽論が起りました。

2013-10-25 14:39:58
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

④当時の日本で、海外のことを最も良く知っていたはずの薩摩や長州の人びと、特に島津斉彬のような人(彼は当時の日本で最も進歩した考え方の人と思います)や、彼から薫陶を受けた人びとが、本心からの攘夷論者であったとは思えません。

2013-10-25 15:39:56
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑤すなわち 「開港は必要である。だが攘夷を叫びうる状態も必要である」 という平衡の論理があったはずです。 従って「実体語=開港」は沈黙し、さらに、開港が必要になればなるほど攘夷の声は高くなってゆき、ついに、天秤の分銅は最大限、竿秤なら竿の端まで分銅があがって行きます。

2013-10-25 16:40:03
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑥そして、その結果はどうなるか。 天秤ならば平衡が破れて一回転し、天秤皿の上の荷も分銅も落ちてしまう―― 御一新で、皿は空、分銅なしの平衡状態となります。

2013-10-25 17:39:55
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑦従って攘夷論者が政権をとったのに開港したということは別に不思議ではありません、 同じことをただ「空体語」で言っていたのですから。 これは革命と呼ぶべきことではありません。 実によく似たことが、第二次大戦の末期に起っています。

2013-10-25 18:39:58
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑧すなわち敗戦は避けられないとほとんどすべての人が内心で感じたとき、分銅は極限まであがって「一億玉砕」になり、ついで天秤は一回転して重荷も分銅も落ちてしまうと、天秤皿は空で、分銅なしの虚脱状態、すなわち精神的空白の平衡が再現し、当然、言葉は失われます。

2013-10-25 19:39:58
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑨そしていずれの場合も支点は微動もしていません。 将来も同じことが起るでしょう。 軍備撤廃を主張している政党もありますが、もしこの政党が政権をとったらどうなるか。 議論の余地はありません。 攘夷論者が政権をとったときと同じことが起ります。

2013-10-25 20:39:59
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑩もちろん一時的混乱はあります(明治維新であれ、第二次大戦の終戦時であれ、それはありましたから)が、それはすぐにおさまります。 「戦力なき軍隊」がすでにあるのですから、「人民の軍隊は軍隊ではない」ぐらいの主張は何でもありません。

2013-10-25 21:39:55
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑪事実、ある国の軍隊はこうだとすでに主張しているのですから、それを自国にあてはめることを、この人びとが躊躇するとは、私は思いません。 だが、今までこの政党を支持していた人びとが納得するだろうか? という御心配は不要です。

2013-10-25 22:40:10
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑫その人びとの「考え方の型」も天秤の論理なのですから、この時こそ、「人民の軍隊は軍隊ではない」ことを、前便でお話ししましたように「条理をつくして諄々」と説けばよいのです。 その条理がいかに論理的に破綻していようと少しもかまいません。

2013-10-25 23:39:59
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑬こういう場合、論理をもってそれに抵抗する者の運命がどうなったかは、いずれ実例をあげてお話ししますが、一言にしていえば破滅です。 一方、これを外部から見ていますと、何か非常に細かく計画的で、隠密に本心を隠し抜いた、実に狡猾そのものの行き方に見えます。

2013-10-26 00:39:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑭初めて日本人と密接に交渉を重ねたタウンゼンド・ハリスが面白い事をいっています。 彼は日本人を「喜望峰以東のもっともすぐれた民族である」という意味の事をのべるとともに「正義、真実の何たるかを知らない」という意味の事を言っています。 この言葉ぐらい矛盾した言葉はありません。

2013-10-26 01:39:51
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑮一言にしていえば、この「天秤の世界」を理解しかねたということでしょう。 以上のようなことは、日本では、問題の大小を問わず起ります。 そしてハリスと似た意見を持たざるを得なくなることが多いでしょう。

2013-10-26 02:39:49
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑯だがこの場合、真に相手を理解しようとするなら、問題とすべきは、そういった個々の現象ではなく、この現象を起している平衡関係と、それを支えている支点なのです。

2013-10-26 03:39:47
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑯この天秤の支点が実は「人間」という概念であり、それが私のいう日本教において「全能者的役割」を演じていることは、前便の『不思議な殉教』と読み合わせていただければ、ある程度は理解していただけると思います。

2013-10-26 04:39:56
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

⑰そこで、この支点を解明する事が日本教を解明する事ですが、その前にまず、この支点に支えられた天秤の両端にある「実体語世界」と「空体語世界=分鋼」を解明し、同時にそれがどのようにしてバランスをとっているかを、私は、二つの文書を鍵にして、できうる限り解いてみたいと思います。

2013-10-26 05:39:46