「スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー」#1　──『ニンジャスレイヤー』二次創作小説

うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

……「フン」少年じみたニンジャは飛び散ったコンプソグナトゥスの亡骸に侮蔑の逆キツネサインを繰り出すと、ライダースーツめいたニンジャ装束からピルケースを取り出し、違法薬物シャカリキ・タブレットをピアシングした舌に載せた。マフラーメンポを戻し、バリバリと噛み砕く。 18

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「退屈しのぎにはなッたな」吐き捨て、歩き出す。彼女にとって、このイクサは実際サイオー・ホースであった。護衛任務に飽きた彼女が、無聊を慰めるべく向かったライブハウスは尽く趣味に合わぬギグばかり。いらつきを抑えるためのケンカののち、ウォームアップされたカラテの前に獲物が現れた。 19

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……その顛末は、みなさんの御存知の通り。ノコノコとやってきた監視者にまんまと手を出させることに成功し、大義名分を得た彼女はこれを弄び、殺した。幼い外見に似合わぬ残酷さ……しかし、それも無理からぬこと。彼女もまた、その身に邪悪なニンジャソウルを宿すニンジャであったれば！ 20

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「あーア、面白ェことねェかなァ」ぶつぶつと呟きながら、彼女は路地を抜けだした。そこはヤガネ・ストリート。剣呑なアトモスフィアが漂うサツバツ・プレイスである。静まり返った街路には何人もの浮浪者がバイオスズメめいてスズナリ態勢でうずくまっているが、そのうち何人が生きていよう。 21

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「ヒートリー、コマキタネー……」鼻歌を歌いながら彼女は歩く……周囲には目もくれない……静かな街路、アスファルトにワイルドなブーツがコツコツと鳴る……薄い雲間から差す月光が、その少年じみた全身を照らし出す……。 22

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上空と違って、ストリートに風はない……だのに、その髪はまるで太陽フレアめいてゆらめき……原初の炎めいた美しさを彼女に与えている……恐ろしく、神話的なアトモスフィア……「ミスージノ、イトニー……」彼女が鼻歌の続きを口ずさんだ時……「アーッ！」遠くで女の声！ 23

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彼女の足が止まった。暗い街路に目を、耳を、ニンジャ観察力を凝らす。「アーッ！アーッ！」女の声が近づいてくる。マフラーメンポの下で、赤いルージュをひいた唇が釣り上がる……「アーッ！アーッ！」女の声が近づき「ホホ！ホホホ！」別の声が混ざる……そして！ 24

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「アーッ！」細い路地の一つから声の主が姿を表した！オイランだろうか？汚れた髪をなびかせて駆けてくるダークキモノ姿の女。恐怖に引きつった顔と、美しいユリ柄キモノのグランギニョルめいた美しさ。乱れた胸元から豊満なバストがのぞくが、守るように抱いた布の包みが大切な部分を隠す。 25

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「アーッ!?」こけつまろびつ逃げてくる女の視線が、少年じみたニンジャのそれと交差した。「助けて！」女が叫んだ瞬間！「ホホホ！イヤーッ！」女の飛び出してきた路地から白い腕が延び、女の髪を掴んだ！「アーッ！アーッ！」女が叫ぶが……「イヤーッ！」 26

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ゴキリ！乾いた音とともに女の顔がのけぞり、口から泡状の血が吐き出された！なんたること！読者はおわかりか？追撃者は、女の髪が抜けぬよう、精妙なパワコントロールを行った上で、一撃に女の首を引き折ったのである！まるで平安時代のユーレイ・ウォーターフォール伝説めいて！コワイ！ 27

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「へェ……」少年じみたニンジャは目を丸くしてこの事態を見守る……布包みを抱いた女の体がゆっくりと崩れ……しかしその腕は胸の包みを離そうとはせず……白い腕が髪を引き寄せ……仰向けになった体が路地に引きずりこまれ……死んだふりを決め込んでいた浮浪者の何人かが目を開く。 28

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「ホホ！ホホホ！」白い腕の主が暗い路地から甲高い笑い声を響かせる……そこへ！「よォ！」少年じみた体型のニンジャが声をかけた。「ホホ？」「面白そうなことしてンじゃねェか……」ゴツ、ゴツ……ワイルドなブーツがアスファルトを踏む音。「アタシも混ぜてくれよ……」「ホホ？」 29

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「あンたもさ……ニンジャなんだろ？」少年じみたニンジャが尋ねる。「ホホ？」死んだ女のつま先が路地に消える。「アマクダリの、じゃねェよな」「ホホ……」「だッたらよ……全力でやッていいよなァ……」「邪魔、ホホ、しない、で」「ヘッ、喋れンじゃねェか……イヤーッ！」 30

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ボウ！突然出現した炎の輪が路地を花火めいて一瞬明るく照らす！さらに！ボウ！死んだ女の足元に新たな炎の輪が生まれ！路地に潜む、長髪に白装束のユーレイめいたニンジャを照らし出す！「イヨォー！」炎の輪から突如出現する少年じみたニンジャ！「ドーモ、イグナイトです！」 31

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少年じみたニンジャ……イグナイトのアイサツに、「ドーモ、ストーンコールドです」ユーレイめいたニンジャがアイサツ。その胸に、死んだ女から奪った布包みを掻き抱く。「ダメ、これは、ホホ、渡さない」「アァ？」「私の、カワイイな、ホホ！アカチャン！」その時！ 32

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「ホギャー！」布包みが甲高い声を上げる！一つの音に己の全存在を載せ、自己を主張する命の声！「ホホ！？」ストーンコールドが布包みを開く！「ホギャー！」泣き声が夜のしじまに響き渡る。「ホホ！アカチャン！」ストーンコールドが泣き声に顔を寄せた。「ウェー」イグナイトが顔をしかめた。 33

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「泣かないで、アカチャン、わたしの、カワイイな」「ホギャー！」「ケッ、そりゃテメェのじゃねェだろ」「何、言ってる、の。これ、私の、アカチャン」「ホギャー！」「イヤーッ！」 34

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イグナイトのケリ！若く精悍なバイオシカめいた足が140度開脚！ストーンコールドの手から布包みを跳ね上げる！「ホギャー！」泣き声が宙を舞う！「アカチャン！」ストーンコールドが狂乱！素早くレザーめいた鈎爪を振り回すが、ボウ！イグナイトの姿は炎の輪に消える！　35

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見たか！これぞイグナイトのテレポート・ジツ！超自然の炎が点火(イグナイト)する度に、舞い散る火花めいて彼女は空間を跳躍する！そして再び炎の輪がボウ！と生まれたのは……ストーンコールドの頭上！「ホギャー！」泣き喚く布包みの真横！「イタダキーッ！」　36

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「ウオーッ！」イグナイトの挙動を目で追ったストーンコールドが叫ぶ！「アカチャン！私の！アカチャン！」イグナイトは空中で布包みをひったくると、「アーハ！」嘲り笑いを投げ、壁を蹴って夜空へ逃れる！「欲しかッたら追ッかけて……」その時！「イヤーッ！」　37

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ビョウ！恐るべき速度でイグナイトめがけ突っ込んでくる白い物体！……ＡＬＡＳ！それは腕だ！ストーンコールドの腕がバイオ蛇めいて伸び、イグナイトを襲う！「アカチャン！返せ！私の、アカチャン！返せ！」レザーめいた鉤爪が飛び逃れるイグナイトの足に到達！これを薙ぐ！アブナイ！ 38

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「イヤーッ！」ボウ！再びのテレポート・ジツ！オバケじみた白い腕の先、鉤爪が炎の輪を引き裂いた、そのはるか頭上に、月光を遮る黒い影が出現！「アハ！」痩せた影は、光る瞳と牙のチェシャ猫めいた笑みを眼下の白装束に投げ……「イヤーッ！」再び炎の輪に消えた。　39

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一時間後……ネオサイタマ某所。奥ゆかしいボンボリ・ライトに「不如帰」のショドーが浮かび上がる、薄暗いドージョーには、アグラ姿勢の男が一人。……その名はアンバサダー。キョート・リパブリックに居を構えるザイバツ・シャドーギルドから派遣されたニンジャである。 41

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閉じた瞳がゆっくりと開き、彼は現実に帰還した。遠く故郷キョート・リパブリックにいる兄、特殊テレパス交信可能なもう一人のニンジャ、ディプロマットとの定期通信が終了。音もなく立ち上がり、ドージョーを出る。キッチンでチャを淹れた。 42