セガサターン版「カオスシード」サウンド制作話
「カオスのSFC版をベタ移植すっから。音もSFC準拠で」 って言われて、サターンの音周りいじり始めたけど、「曲ごとにロード入るの許されます?」 「許さない」 ていうやりとりがあり、全てのデータをオンメモリで持つ事にした。
2013-11-23 01:35:17いざサターンの音周りをいじり始めると、容量キツいキツい。オンメモリである事を優先する為、音色はちょっと寂しい事になりつつ、曲にはアレンジを施す事もなく本当にベタ移植。しかし、SFCと違ってDSPエフェクトもかからず、スッカスカな印象に。それでもとりあえず載せて意見を聞こうと。
2013-11-23 01:37:52しかし、当時移植を担当してた外注の人の進捗が芳しくなく、鳴一向にサウンドが実装されないまま日数だけが過ぎる。そして、忘れた頃にサウンドを鳴らすルーチンを組み込んだらしい。それでサウンドを聴いた小倉さん、柏木さん両名が血相変えてサウンド部屋に乗り込んできて 「なにあれ!?」
2013-11-23 01:41:41「全然ダメじゃん!? サウンドエンジニアとして君の名前が大々的に出るんだよ? こんなのでいいつもりなの!?」 自分としては、オンメモリ最優先ならこうなりますよ、という叩き台のつもりではあったが、とにかくクッソミソにけなされた。「こんないい加減な仕事してちゃダメだよ!」
2013-11-23 01:45:49サボリ魔だったので、そう取られるのも無理はない、と思って、とりあえず大人しくこき下ろされた。で、オンメモリに拘らなくていいから、とにかくクオリティを上げる、という方針転換をする事に。
2013-11-23 01:48:10この方針転換には、プロジェクト全体の進捗問題も絡んでいた。外注のプログラマさんが4ヶ月の間シコシコと移植作業を続けた結果… なんとまるで進んでいなかったのだ。スピード優先ベタ移植で済ますはずだったサターン版カオスシードは、他のプロジェクトを中止してまで人員を投入する事になる。
2013-11-23 01:51:10クソミソに言われて悔しかった事もあるけど、試行錯誤する期間的な余裕が出来たので、ここからサターンの音源周りとの本格的な格闘がスタート。
2013-11-23 01:53:47まずは、音色バンクのクオリティアップ。ロード前提ならばある程度贅沢にメモリを使える。しかし、実際にはそれでも容量はキツかった。それもそのはず、音色バンク波形を44kHz/16bit PCMで作成していた為だ。
2013-11-23 01:56:19仕様で使える最高のスペックでデータを用意したい、という呪いに近い思いが強かったのだが、最終的には32kHz/8bitで充分な音が出る、という事で、メモリの問題はなんとかクリア。(サターン版カオスの曲で、単音で始まる曲なんかの波形を見ると、8bitなのが良く判ると思います)
2013-11-23 01:59:46そして、用意した音色バンクを使い、曲を移植しつつ、「本当は塩生さん(&林克洋さん)、発音制限が無ければこうしたかったんじゃないか…?」とイメージしながら、アレンジというよりは補強に近い作り方で、曲をブラッシュアップしていった。
2013-11-23 02:03:27そうして出来上がった曲を録音してCD-Rに焼き、チームの意見取りをしながらまたブラッシュアップを繰り返す。その途上で個人的にTrinity proを購入した事もあり、バンクを一から組み直したり、Mac様の爆弾〜再起動からのデータ巻き戻りと戦いつつ、ひたすらブラッシュアップの日々。
2013-11-23 02:07:57ある時からサターンでもDSPエフェクトを使って良い事になり、そこでも試行錯誤。Reverbではどうしても空間的拡がりが出ず、SFC版よりも小ぢんまりした印象が拭えなかったのだけど、パンツァードラグーン・ツヴァイでディレイを上手く使って拡がりを出していたのが、かなり参考になった。
2013-11-23 02:12:15キレイなサウンドという視点では、ディレイをリバーブ替わりにするなんていかにもチープだけど、ゲームには上手くマッチしたように思う。
2013-11-23 02:15:49大体、DSPリバーブで空間的拡がりを強く感じられるようにしたら、リングバッファがとんでもなくデカくなってしまう。制約とのトレードオフではあるが、それは時に進むべき道を照らすんだな、と思った。
2013-11-23 02:16:18スタッフからの意見取りでは相変わらず厳しいものがあったが、じゃあもっとイイ感じにしてやんよ! と、悔しさをバネに意地も湧いた。とにかく時間があればブラッシュアップしてた。いい経験になったし、同業他者から見るとどうか判らないが、あの当時の自分が作れるMaxのものが出来たと思う。
2013-11-23 02:21:28大幅にアレンジする勇気がなかったとも言えるが、自分も一ユーザーとして、原曲の雰囲気を壊さずにアップグレードという方針は、まあ正解の一つではあったかなと思う。
2013-11-23 02:23:46ただ、一つだけ心残りだったのが、ゲームに実装された状態だと曲の出だしで処理がモタり、慌てた演奏で曲がスタートする事を、解消出来なかった事。あれ多分、ちょっと頭に休符挟んでおけば回避出来たんじゃないかな…
2013-11-23 02:26:14それから何年も経ち、カオスシードのサントラ再録版が出るという情報を知り、ああ、ゲームの中のサウンドテストモードで収録してるなら、間違いなく出だしでモタってるはずだ、その状態で世に出ては非常にモニョる… とモヤモヤ過ごしていたら、サントラディレクターの八木さんからコンタクトが!
2013-11-23 02:29:25そもそもは、オープニングムービーのBGM原盤ファイルを所持していないか、という問い合わせだったのだけど、渡りに船とばかりにモタりの件を話し、なんとかしたいという意思を伝えた。
2013-11-23 02:31:19が、モタりの無い曲を収録する為には、開発機材でサウンドデータを読み込ませて、それで鳴らす必要がある。ハードルが高い。ダメ元で動いてみると、仕事場の先輩が開発用サターンをポンと出してきた。なんで! なんであるの!
2013-11-23 02:33:40開発機材だけでは動かない。それを制御するツールはMacの中。そして、そのMacのHDDはカッコンカッコンいって起動しない。ああ、ここで道は途切れるのか… しかしまたもダメ元で、ヤフオクで同型のHDDを落札し、コントロール基盤を移植してみたところ、HDDが復活!
2013-11-23 02:36:20開発機材との接続、制御ツールの起動、ともに上手く行き、すっかり忘れた使い方を、記憶を頼りに、かつ手探りでアタリをつけ、曲と音色バンクのロード、曲の再生、までの手順を構築。出だしがモタらない状態で収録してもらい、晴れてイイ状態でのサントラ再録となりました。
2013-11-23 02:39:40