大罪戦闘企画

第十一公演《透ける街》
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ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

溜息の音に首を振る。 「いえ、いいんです。きっとそのうち、着けると思いますから」 どうしても帰りたい場所、帰らなければいけない場所があるのは確かだ。けれど、たとえ男が着けなくとも、きっと彼女がまた手を引いてくれるだろう。そういった、希望ではなく、確信がある。

2013-11-22 16:49:50
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

視線を相手へ戻し、蒼を静かに見据える。カルド、と告げられた名に、男はハッとなって姿勢を正し。 「ああ、申し遅れました。私はハインリヒ・エーベルハルトと申します。以後お見知り置きを」 そして、革手袋から右手を抜き、差し出した。 握手に、相手は応じるだろうか?

2013-11-22 16:50:07
グラナート @ktmyng

運任せのような返答とは裏腹に、その中には確固とした強さが伺えて、 「早く着けるといいな」 特に表情を変えることはせずに、一言だけそう返す。 帰るべき場所があるのは悪い事ではない。むしろ良い事。 自分には向かうべき場所しかないから、彼がどんな心持ちかまでは知れないけれど。

2013-11-22 17:23:55
グラナート @ktmyng

そうして名乗ると、男は礼儀正しく名乗り返した。 ハインリヒと名乗る青年の差し出された手。一瞥して、ポケットに入れていた方の手を差し出し応じる。 「ああ」 憶えていられるかは保証できないが、この先何もなければ覚えていられるだろう、と思いながら。 短く返事をして柔らかく手を握った。

2013-11-22 17:26:21
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

相手の言葉に一つ頷く。本当に、早く着けるといい。出来れば、彼女の機嫌を損ねてしまう前に。 握られた手を同じく握り返して、穏やかに笑う。その表情を保ったまま、思考を回す。そう言えば、右手の指には傷が有った筈だ。既に血は止まっているし拭ったが、まだ傷口は塞がり切っていない。

2013-11-22 18:30:48
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

ああ、と心の中で一つ。ゆっくりと手を離し、視線を再び端に転がる死体へ向ける。悲しげな表情の中に、ほんの少しの違和が混じる。見落としてもおかしくないほど、僅かに。 −−ああ全く。疫病とは恐ろしいものですね。簡単な接触でさえ感染してしまうのですから。 男は笑う。穏やかに、静かに。

2013-11-22 18:31:16
グラナート @ktmyng

握手を交わした、直後。離された手を見れば、青年の血らしきものが付着している。 そこに、僅かな違和感を覚えて。 「……私に何か、」 本当に、僅か。大した違和感ではないが、『赦してはならない』と直感した。 自分の人格以外、この身体すら信じぬ『傲慢』だからこそ、気付けたのかもしれない。

2013-11-22 20:06:33
グラナート @ktmyng

笑みを浮かべる男。人のよさそうに、温厚に、笑う――ハインリヒ。 「言え。何をしようとした」 顔は変わらず、そこに表情と呼ぶべきものは無い。しかし声は低く。瞳は、冷たく。 「その笑顔(かお)の奥に――何を隠している」 問いは2つ。血が付いていた右手でそのまま、彼の首元の服を掴む。

2013-11-22 20:08:46
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

襟元を掴まれる。けれども男が笑みを崩すことはなく。 「はは、怖いですね。私は何もしようとしてません。握手しただけでしょう?」 男は何もしようとなどしていない。事実、何もしていない。何かあるとすれば、それは勝手に起こるだけ。いいや−−起こっただけ。 「何も隠してなどいませんよ」

2013-11-22 21:11:06
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

あえて口にしないことはある。たとえば、指の傷。男についた僅かな血。言わないだけで、隠すつもりなどない。 −−だが。 男は思考を巡らせる。確かに血に触れさせてしまったが、それでは何も、そう、表面上は何も起きていない。だと言うのにこの反応。普通の人間ならば有り得ない。

2013-11-22 21:11:28
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

けれど、普通の人間でなかったとしたら。 相手が人間でなく、男と同じものだとしたら? 「私からも一つお尋ねしましょうか」 有り得なくは、無い。 フッと笑って、手を払いのける。数歩下がり、白衣の上からさりげなくベルトを確認して。 「貴方は『大罪』ですね?」 目を細め、誰何した。

2013-11-22 21:12:14
グラナート @ktmyng

何もしようとしていない。何も隠していない。 ――本当に? 否、この男は最早当てにならない。しては、いけない。 「嘘ではないが本当も言っていない、という感じだな」 笑みを睨めつけて言い捨てる。元より信じる気など無かったが、人の良さに油断していたのも事実。 苛立ちに手に篭る力が増す。

2013-11-22 21:33:54
グラナート @ktmyng

掴みかかった手は不敵な笑みで払われる。青年の問いに出てきた『大罪』の単語に、目を細め。 「……なるほどな」 その単語が出てくるならば、青年も大罪とみて間違いない。 「その通り。私は大罪、冠す座を『傲慢』。お前の座はなんだ」 簡潔に答え、問い返す。距離を取る青年を蒼で見据えながら。

2013-11-22 21:41:25
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

相手の言葉に、男は瞠目した。けれどもそれは一瞬で、見据える蒼に碧で返す。表情は手の下に隠し、其処に浮かぶのは笑み。しかし先程までの穏やかさなど欠片もなく。 「フッ……」 −−『傲慢』?彼が、『傲慢』? 「ハッハッハッハッ!そうですか!『傲慢』!貴方は『傲慢』か!」

2013-11-22 22:26:24
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

反芻し、理解する。納得し、嘲笑する。口元だけでなく顔を覆い、天を仰いで高らかに笑い飛ばす。 そして、男は不意に声を消し。ニヤニヤと、凡そ医者に似合わぬ笑みのまま。 「ならば私も答えましょう。私は『強欲(Habgier)』……いいえ、『強欲(アーネウス)』」

2013-11-22 22:26:26
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

男−−アーネウスは、カルドに言う。 その脳裏に浮かぶのは金の髪の可愛い『傲慢(少女)』。『強欲』の『帰る場所(傲慢)』。 どうやら私は『傲慢』に縁があるらしい。アーネウスはニヤリと笑みを深くして、胸にかけた十字架を掴み。 神に祈るかのように、十字架にそっとキスをした。

2013-11-22 22:26:35
紺青ものえ @almiyy

―――かつん。 跫。 ―――かつん。 隠すこともせず、寧ろ気に止めさせるような言外の跫。 民家の間をゆらり進みながら、指先を這わせた外壁を無音のまま薄紫の硝子へ変えていく。侵蝕は外壁を、屋根の一部を、室内を見通せる硝子に。鬱屈とした室内を一瞥し、かつんと進む。

2013-11-22 22:36:08
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

−−りぃん…… 新しいお人形を与えてあげるよ! 気に入ってくれると嬉しいな! ふふふふふっ!

2013-11-22 22:44:34
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

《ご来場の皆様に……演者の変更をお知らせ致します……》

2013-11-22 22:35:02
【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

《演者変更:第十一公演》 【傲慢】カルド (@ktmyng) vs 【強欲】アーネウス (@s_akiyui) vs 【傲慢】イアシザリア (@hakujo_)

2013-11-22 22:35:18
紺青ものえ @almiyy

その眸は鮮やかな紅と、まるで誰かに汚されて濁った、劣化した錆の色が柔らかく細められた。 「――ああ、」 廃墟。人の色濃い名残。 向かう道、転がっている屍を綺麗な硝子へ変え、しかし見向きもせず、浮かべるのは楽しいことが始まるのだろうと言わんばかりの、喜悦の笑み。

2013-11-22 22:36:20
紺青ものえ @almiyy

人の声。生者の言葉。 耳に入った僅かな音に、笑みを深め、硝子のような静かな声音で含むように、そして僅かに唇を舐めて、その姿を眺め呟いた。 「愉しそうな、ことだ」

2013-11-22 22:37:52
グラナート @ktmyng

一瞬の瞠目、後に顔は手で覆われ。 浮かぶ表情は見えない――でも、声で分かる。きっと下卑た笑みを浮かべているのだろう。 直後の天にも響く高らかな笑い声に、出会ったときの青年の面影は無く。 「不快だな」 ようやく見えた顔に更に不快感が煽られる。――馬鹿にしたような、その顔。

2013-11-22 23:36:47
グラナート @ktmyng

あの顔にどんな含みがあるかは解らないけれど、碌なものであるはずがない。きっと、不快なことだろう。 「――『強欲(アーネウス)』か」 ペンダントにキスを落とす相手に向けて、 「お前を、『軽蔑』する」 無表情の中に、感情が混ざる。一気に瞳の温度が下がって、蒼はより深く、冷たく。

2013-11-22 23:37:43
グラナート @ktmyng

足音とよく通る声を聞いて、ぴくりと反応する。 顔は強欲へ向けたまま、目線だけ音のした方向へ投げかけ。 「……お前はなんだ」 視線の先には、茶色の長髪をなびかせる青年が一人。背景で光る何かには目もくれず。 紅と錆色を細め笑う彼に、一言だけそう問う。

2013-11-22 23:39:14
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