野川忍・明大大学院教授(@theophil21)の語る「派遣法改正論議のあり方」

※参考:「野川忍先生のついーと労働法講義シリーズ」http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-38ce.html
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theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(1) 労働者派遣はなぜ規制されるのか? それは、もともとこの雇用形態が、「労働者供給」に該当し、労働者供給は職業安定法44条によって罰則付きで厳禁されていることに遠因があります

2010-10-13 08:38:17
theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(2)労働者供給とは、要するに、自分の支配下にある人間を、第三者から金をとってその第三者のもとで働かせる、という仕組みであり、かつては港湾荷役のボスなどが利用して暴力団の資金源になっていました。

2010-10-13 08:39:38
theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(3) そこで、各国とも労働者供給を禁じ、日本でも労働組合が無料で行う場合にのみ、許可を受けることを条件に認めてきました。 しかし、時代の変化とともに、「人材供給ビジネス」が定着して、厳格なコントロールのもとに労働者供給の形態の一部については法認の方向となります。

2010-10-13 08:43:10
theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(4) そこで誕生したのが労働者派遣法であり、登録型と常用型の派遣事業を厳格な規制のもとに認めることとなりました。つまり、もともと刑罰を科して禁じている仕組みに特別に例外を設ける、というのが労働者派遣制度の出発点なのです。

2010-10-13 08:45:31
theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(5) したがって、派遣を完全に自由化するということは、労働者供給禁止の原則を撤廃しない限りありえない。そして労働者供給禁止原則は、場合によっては「人身売買」につながりかねない手法を防ぐ意味で、今なお重要ですから、そう簡単に緩和することはできません。

2010-10-13 08:47:35
theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(6) しかし他方で、人材派遣というビジネスが一定の意義を有することも事実だし、派遣労働者が常に人身売買的状況に置かれるとは限らないので、派遣法は「労働者供給の危険を防ぎつつ」、「派遣ビジネスと派遣労働者の利益を尊重する」あり方を模索して改正が行われてきました。

2010-10-13 08:50:23
theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(7)登録型派遣や日雇い派遣、製造業務への派遣を禁止することは、「しょせん派遣は人身売買の危険を内包した労働者供給の一類型なのだ」という点からすればそれなりの正当性がありますが、しかしそれで働き方の選択肢が制限されることは労働者にも有害だという批判もあり得ます。

2010-10-13 08:53:53
theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(8) それではどうするか。やはり最大の課題は、派遣労働者と派遣元及び派遣先との実質的対等性をどう確保するかであると思います。派遣会社や派遣先が、「お試し派遣」だの「使い捨て派遣」だのといった意識を持ってしまうような実態が払拭される必要があります。

2010-10-13 08:56:10
theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(9) 労働者が、派遣元や派遣先との対等の交渉力を保障されつつ派遣労働という仕事を選べるならば、派遣制度は現在より自由化されることが望ましいでしょう。

2010-10-13 08:59:42
theophil21 @theophil21

派遣法のありかた(10) 逆に言えば、それができず、派遣労働者がコスト面からのみ使われるという事態が拡大するような実情では、もともと「労働者供給」である派遣をいっそう規制すべきだという主張を克服することは難しいですね。人間はモノではないという冷厳な事実は変えることはできません。

2010-10-13 09:04:34
theophil21 @theophil21

以上、派遣法改正論議の土台にある課題を示しました。

2010-10-13 09:05:13
シムカヨ @kayorine

派遣は高いから最初に切られるんですが... RT @theophil21 (10) 逆に言えば、それができず、派遣労働者がコスト面からのみ使われるという事態が拡大するような実情では、もともと「労働者供給」である派遣をいっそう規制すべきだという主張を克服することは難しい...

2010-10-13 09:20:38
theophil21 @theophil21

「高い」という理由で先に切ることができるということ自体が、企業からすればコストパフォーマンスがよいでしょう。また、派遣労働者の交渉力の確保は、労組に頼ることで可能だとは、少なくともただちには言えないでしょう。RT @kayorine

2010-10-13 09:25:50
ユニオンちれん @uniontiren

@theophil21 派遣に関する先生の解説、実に明快で分かりやすいです。ありがとうございます。一般に、労働組合は、派遣労働者をカバーすることはできていません。労働組合にとっての課題ですね。

2010-10-13 09:28:55
シムカヨ @kayorine

なるほど。わかりました。 RT @theophil21 「高い」という理由で先に切ることができるということ自体が、企業からすればコストパフォーマンスがよいでしょう。また、派遣労働者の交渉力の確保は、労組に頼ることで可能だとは、少なくともただちには言えないでしょう。

2010-10-13 09:30:38
theophil21 @theophil21

貴組合のような形態の労働組合の意義を、派遣労働者がもっと認識して、組織化が進むことが必要だと思います。企業別組合の意義は、まだまだ大きいのですが、しかしかつてに比べればかなり相対化されていますが、その端的な表れが派遣労働者の組織化でしょう。Rt @uniontiren

2010-10-13 09:34:52
ユニオンちれん @uniontiren

@kayorine 派遣先の労組に期待とのことですが、労組は基本的に本工主義ですから、派遣さんを助ける組合はまだまだ少ないと思います。決して良いことではないのですがね。そうすると、個人が、個人加盟できるユニオンに頼ることになる。

2010-10-13 09:37:25
シムカヨ @kayorine

@uniontiren 派遣先企業との力関係では派遣元が圧倒的に弱いのはおわかりかと思います。スタッフからの相談内容の中には派遣先で解決してもらいたいものや、派遣元には都合悪いことは隠すなどもあり、内情がわかっている企業組合の協力が不可欠だと思っています。 #hakenhou

2010-10-13 09:49:19
ユニオンちれん @uniontiren

@kayorine まったくおっしゃるとおりです。派遣先の労働組合が派遣労働者のことにももっと力を注ぐべきです。しかし、実態はまったく・・・。派遣労働者に肩入れすると、本工の労働条件に影響が出るかのような態度がほとんどです。そうすると、個人の労働相談を受けるユニオンの出番に。

2010-10-13 10:39:34
theophil21 @theophil21

(1)労働者派遣制度は、原則と各論をどう折り合わせるかが難しい問題の典型だと思います。労働者供給の一形態である限り、本質的な危険を回避することはできない。一方で派遣労働者自身も含めて実益があることも否定できない。

2010-10-13 12:06:55
theophil21 @theophil21

(2)突飛なたとえであることを承知の上で言えば、ソフト版のミニ「原子力発電」みたいなものでしょうか。制度の具体的部分について適正な方向をめざすことと同時に、根幹である「労働者供給原則禁止」の理念を再検討(再構築?)することも必要かもしれません。

2010-10-13 12:10:34
かえでプラス @kaedeplus

これを担保するために規制が必要なのではないのですか? RT @theophil21: 派遣法のありかた(9)労働者が、派遣元や派遣先との対等の交渉力を保障されつつ派遣労働という仕事を選べるならば、派遣制度は現在より自由化されることが望ましいでしょう。

2010-10-14 09:36:58
theophil21 @theophil21

たとえば、派遣労働者が申し出たら直接雇用しなければならない、というのが個々の労働者に対する保護の規制です。これに対して、交渉力の強化を助成する仕組みを設けたうえで、個々の派遣労働者を直接保護する規制は最小限にとどめる、とうい選択肢もありますね。RT @kaedeplus

2010-10-14 09:43:37
かえでプラス @kaedeplus

具体的にはどんなしくみですか RT @theophil21: 交渉力の強化を助成する仕組みを設けたうえで、個々の派遣労働者を直接保護する規制は最小限にとどめる、とうい選択肢もあります

2010-10-14 15:27:33
theophil21 @theophil21

Rt @kaedeplus 暫定的には、、派遣労働契約と、派遣先と派遣労働者との合意事項とをいずれも書面化させて労働基準監督署がチェックすることなどが考えられます。しかし、これは弥縫策で、究極的には派遣労働者自身の組織化の拡大が最大のポイントです。

2010-10-15 07:55:43