pri-miRNAの機能についてのEMBO J論文まとめ

miRNAの前駆体にも機能があるかもしれないという発想からさまざま興味深い問題を提起したEMBO Journalに掲載されたRobin Deis Trujilloらの論文を紹介します。
4
Jun Yasuda @jyasuda1

まだ読んでいる最中だが、miRNAの前駆体も標的mRNAを認識して抑制しうるという重要な論文。AcknowledgeにはAmbrosやFireの名もあり、簡単にうそでしょ、とは言えない感じ。 EMBO Jより。 http://bit.ly/dbvsoU

2010-10-11 12:51:43
Jun Yasuda @jyasuda1

さて、miRNAの前駆体も標的mRNAを認識して抑制しうるというEMBO Jの論文 http://bit.ly/dbvsoU の紹介ツイートを開始する。最初は2、3個のつもりだったが、よく考えると面白いので流れに任せてたくさん書く。

2010-10-16 13:27:10
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO1)もともとmiRNAはpri-miRNA(もとのメッセンジャー)、pre-miRNA、成熟miRNAとなる過程を経て活性化するとされてきた。しかし著者らは以前の研究から、この規範(パラダイム)に疑問をいだいた。

2010-10-16 13:27:27
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO2)彼らは成熟miRNAの配列は殆ど同じなのに、機能の異なる2つのmiRNAの研究からpri-miRNAの段階で、成熟時にはなくなってしまうループ構造配列に依存性に機能発現するmiRNAがあることを指摘し、報告した。http://bit.ly/bsn8pU

2010-10-16 13:27:45
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO3)さらに過去の文献を検討したが、ループ構造を持つpri-miRNAおよびpre-miRNAには機能が存在する可能性を生化学的に否定した論文が「ない」事に思い至った<--ここがすごいところ。そこで証明するための実験をすることにした。

2010-10-16 13:28:00
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO4)異種の遺伝子を細胞内で発現させると正しく処理されず、人工的な産物が形成されることがあるが、彼らは線虫のlet-7 miRNAをヒト培養細胞で発現させ、線虫では得られない、2塩基分5’が欠損した成熟miRNAが出来ることを見出した。

2010-10-16 13:28:16
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO5)しかし、この条件で線虫let-7によって抑制されるレポーター遺伝子を同時に発現させると確かに発現が低下する。この発現低下は翻訳レベルで起こる。というのは標的のmRNAの量は線虫let-7の発現によっても殆ど変わらないからだ。

2010-10-16 13:28:39
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO6)そしてこの線虫let-7発現ベクターに、成熟miRNAでは欠損しているはずの2塩基のうちの1つ(シード配列内の塩基)に変異を入れると標的レポーター遺伝子の発現低下は起こらない。このことは成熟miRNAが形成される前にシード配列が標的を認識している必要を示す。

2010-10-16 13:29:08
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO7)さらにループ構造に変異を入れたlet-7はレポーター遺伝子の発現低下については挙動が様々であり、変異があってもループ構造が維持されていれば標的が抑制されうることを示した。

2010-10-16 13:29:23
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO8)さらに面白いことは試験管内で標的遺伝子とpri-let-7をそれぞれ発現させて混合すると複合体を形成することを確認した。Let-7のループ構造体を変化させるとその結合は変化し、結合の強いものは標的の抑制度と相関することが示された。

2010-10-16 13:29:46
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO9)この複合体形成は細胞の中で標的遺伝子とpri-let-7を同時に発現させても確認できた(RNAの2次構造でビオチンを模倣させることが出来、アビジンで回収できる<--ここがすごいところ)。試験管での実験と異なり、細胞の中ではこの2つを同時に発現させる必要があった。

2010-10-16 13:30:29
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO10)標的とpri-miRNAの結合は核で起こることも示された。最後に線虫のlet-7と同じ成熟miRNAを発現できる系で同様の実験を繰り返したところ非常に強い標的遺伝子の抑制を確認し、標的遺伝子のmRNAの発現低下を確認した。

2010-10-16 13:30:47
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO11)この論文で最も重要なのは、もしかしたらmiRNAがいかに標的を認識するのかの機構に関係ありそうだということである。著者らも指摘しているが、核内で転写されている標的とpri-もしくはpre-miRNAとの相互作用がmiRNAによる遺伝子発現抑制の発端かもしれない。

2010-10-16 13:31:25
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO12)元々の実験のコンセプトがpri-miRNAの機能の確認なので、その点について言うと、やはり成熟miRNAほどではないのだろうと思われる。また、miRNAの機能の古典的解釈に「mRNA分解なしの翻訳抑制」と良く言われるが、その説明にもなっているかもしれない。

2010-10-16 13:32:23
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO13)論文中にも指摘があるが、本当に正しい形の成熟miRNAが出ていないとは言えないことから、pri-miRNAに機能がある、と完全には言いきれていないと思う。

2010-10-16 13:32:57
Jun Yasuda @jyasuda1

(EMBO14)また、ループ構造のないsiRNAの効果はどのように発揮されるのかについてもこの論文はきちんと説明できていないように思われる。ともあれ、いくつか疑問はあるにせよ、大変面白い論文だった。

2010-10-16 13:33:27