芝村談「ヘリ空母の効能」

芝村裕吏氏によるヘリ空母の開発と評価の概史、政策としての兵器開発
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芝村裕吏 @siva_yuri

ではヘリ空母を話しましょうか。

2010-10-16 23:24:07
芝村裕吏 @siva_yuri

ヘリ空母というのは、珍妙な艦種でして、最初出た瞬間から、多くの軍事関係者が、はぁ? という顔しました。 で、こういう突飛もないことをするのは、7割くらいイギリスでして、実際ヘリ空母はイギリスから生まれました。

2010-10-16 23:25:36
芝村裕吏 @siva_yuri

さて、物事を理解するには色々ありますが、軍事においては、軍事常識から理解した方が、たいていうまくいきます。 なんでヘリ空母が突拍子もなく、当時の専門家にうつったのか、それを見ていきましょう。

2010-10-16 23:27:51
芝村裕吏 @siva_yuri

ここがダメだよヘリ空母(当時の海軍常識編) 1:設備が面倒なわりに、運用機数が少ない。だめじゃんこれ 2:ヘリの運用に艦内のスペースや重量を食われる関係で、個艦性能が低くなる。 え、この価値が低いのを守るとかするの?

2010-10-16 23:30:46
芝村裕吏 @siva_yuri

3:陸上からの対潜哨戒機の方が、安上がりだし、カバー面積も圧倒的に大きいよ。 4:艦の多用途化が進む現状で、なんでこんな潜水艦対策にしか使えなさそうなのをつくるのか。

2010-10-16 23:33:18
芝村裕吏 @siva_yuri

まあ、こんな感じでして、出る前からそりゃもう、けちょんけちょんの有様でした。デビューしてからも長く、実力を疑われていたのがヘリ空母です。これはですね、追随して建造された他国のヘリ空母を見ればはっきりします。

2010-10-16 23:35:31
芝村裕吏 @siva_yuri

つまり、他国で同様艦種がではじめるのは、フォークランド紛争(マルビナス紛争)からですね。この戦いで、ヘリ空母は一挙に使えるという軍事常識に傾きました。

2010-10-16 23:37:13
芝村裕吏 @siva_yuri

というか、軍人は常に過去の戦いからしか学んでないといいますが、このあたりのエピソードは、それを良くあらわしていますね。

2010-10-16 23:39:18
芝村裕吏 @siva_yuri

さて、当時の常識がどうやって一変したかを見れば、ヘリ空母が分るんじゃないでしょうか。一個づつ、見ていきましょう

2010-10-16 23:40:03
芝村裕吏 @siva_yuri

実際は、ここが良かったよヘリ空母(専門家の意見の変遷から見えるおもしろおかしいヘリ空母) 1:設備が面倒なわりに、運用機数が少ない。だめじゃんこれ→ やはり、0と少しでもつかえるのでは、だいぶ違いますな!

2010-10-16 23:41:23
芝村裕吏 @siva_yuri

2:ヘリの運用に艦内のスペースや重量を食われる関係で、個艦性能が低くなる。 → あ、攻撃力/防御力の本体はヘリやVTOL機でした。

2010-10-16 23:42:25
芝村裕吏 @siva_yuri

3:陸上からの対潜哨戒機の方が、安上がりだし、カバー面積も圧倒的に大きいよ。 →フォークランドは遠いんで、ヘリ空母しかなかったですよね。ヘリ運用に専念できるし。

2010-10-16 23:43:38
芝村裕吏 @siva_yuri

4:艦の多用途化が進む現状で、なんでこんな潜水艦対策にしか使えなさそうなのをつくるのか →うお、ハリアーさん 対艦攻撃や地上攻撃、対空戦闘まで!

2010-10-16 23:44:26
芝村裕吏 @siva_yuri

まあ、こんな感じです。はい。ここで見て大抵おわかりかと思いますが、空母の古くからの常識 空母の価値は搭載機の価値 から、何もかわらないことが分ります。 ついでに、ハリアーについて当時は評価が定まってなかったのも、大きいでしょう。

2010-10-16 23:46:24
芝村裕吏 @siva_yuri

実際ハリアーはこの後、有用性が確認されてアメリカ海兵隊が採用し、今にいたります。 ですがまあ、この時代は音速超えないし、搭載量雀の涙だし、で、けちょんけちょんでした。

2010-10-16 23:48:06
芝村裕吏 @siva_yuri

がしかし。 イギリス本国から遠く、遠いが故に(エアカバーもないし)にわかには攻めてこれないだろうという読みで占拠したのに、イギリスは艦隊組んでやってきて、状況が変わっちゃうわけですね。

2010-10-16 23:50:01
芝村裕吏 @siva_yuri

このとき、艦隊防空などで活躍したのは、他国の軍事評論家がほめていたマッハ2級の戦闘機ではないですね。ハリアーです。

2010-10-16 23:52:00
芝村裕吏 @siva_yuri

ここで一つ。軍事において大切なのは、有事に使えること。 どんなに性能あろうと、何あろうと、必要とされる状況で使えないなら、それは税金の無駄です。

2010-10-16 23:53:08
芝村裕吏 @siva_yuri

次に大切なことは、カタログスペックで戦争をやっているわけではないという、単純な事実です。 マッハ2級の高速機が、その速度を生かせる高度で艦隊に突入することは、ついに一度もありませんでした。大きな対艦ミサイル装備してるから当然です。

2010-10-16 23:55:31
芝村裕吏 @siva_yuri

その上で、ハリアーは運用する上で、今までにない気づきがたくさんありました。 搭載量を増やすことが出来たのも、その一つ。

2010-10-17 00:00:34
芝村裕吏 @siva_yuri

垂直離着陸にこだわらず、短距離離着陸に運用制限を緩めれば、装備重量は大きくあがりました。 実際、ハリアーのソーティの大部分が、垂直離着陸ではない、短距離離着陸での運用です。

2010-10-17 00:00:41
芝村裕吏 @siva_yuri

ハリアー2ではこの辺、明確に意識されて、基礎を短距離離着陸での運用としました。 離着陸用にあるエンジンの可変ノズルが、空戦で有用なことが見つかったのも、おおきかったですね。

2010-10-17 00:01:59
芝村裕吏 @siva_yuri

結局、運用や目的(陸上基地の支援を得られない場所での活動)などを無視した、軍事専門家の意見だったんですね。人の目を曇らせていたのは、相手の事情を考えずにあーだこーだいえると考えた、その思い込みです。

2010-10-17 00:04:06
芝村裕吏 @siva_yuri

我々も、そういう陥穽にひっかかりやすいですから、そうならないようにしないといけませんね。

2010-10-17 00:04:31
芝村裕吏 @siva_yuri

最後になりますが、日本のヘリ空母について、話させてください。 こっちのヘリ空母は、中国の潜水艦脅威がむちゃくちゃに増大しているのにあわせた、完全な対潜艦です。 哨戒機の広域捜索は年々難しくなっており、また過労が問題になっています。これらへの軍事的回答です。

2010-10-17 00:06:39