デス・トラップ、スーサイド・ラップ #2

(あらすじ:反社会的ニンジャ愚連隊集団、サークル・シマナガシ。政府中枢に深く食い込む悪のニンジャ秩序組織アマクダリ・セクトと畢竟相容れない彼らは、ニンジャスレイヤーとともに大使暗殺阻止を試みたが、失敗。ついにセクトの幹部ニンジャ、スターゲイザー指揮下の掃討作戦が開始されるに至る)
2013-12-06 22:12:23
(シマナガシのニンジャ、即ち、アナイアレイター、スーサイド、ルイナー、フィルギアは、根城にしていた廃ビル屋上を爆破して放棄。エンガワ・ストリートのゴーストタウンを散り散りに逃走する。予め設定した集合地点で落ち合う手筈である)
2013-12-06 22:25:17
(スーサイドを追うアマクダリ・ニンジャの名はサーガタナス。彼自身の厄介なジツに加え、量産型変形バイク機動ロボニンジャであるドラグーン、変形装甲車機動スモトリロボニンジャであるキュイラジアー等、物量作戦は過酷極まりなく、旗色はみるみる悪くなってゆく。スーサイド危うし!)
2013-12-06 22:27:30
(狭い路地で遂に挟み撃ちの形で追い詰められた彼のもとへ、新たなニンジャが乱入する。肘骨ブレードを備えた謎のニンジャ、カマイタチ。そしてもう一人は自らをディスカバリーと名乗る。彼らのニンジャクランの名は、サヴァイヴァー・ドージョーだ)
2013-12-06 22:33:08
「厄介事?」「ゾンビーさ」ディスカバリーは手振りを交えて言った「知ってるか?ゾンビーをよ。ゾンビーのニンジャだぜ」「一人知ってるよ」「一人?知ってる?……アー、それでだ。ウチは普段、地下で暮らしてる。ゾンビー共と縄張り争いをしてるってわけで」「ガガピガガー!」ドラグーン断末魔!1
2013-12-06 22:39:34
「イヤーッ!」回転ジャンプで屋内に飛び戻ってきたカマイタチが、前かがみになり、首を傾げて、スーサイドを下から睨み上げた。猫じみた瞳には剣呑な敵意がある。「お前、どれぐらいカラテできるンだ、ア?」「こいつがカマイタチか」「そうだ。下がれ!」ディスカバリーがカマイタチをどやした。 2
2013-12-06 22:47:08
「ついて来い」ディスカバリーは奥のフスマを引き開け、スーサイドを導く。「俺達の事を知ってるか。サヴァイヴァー・ドージョーを」「知らねえな」「無理もない。用心深いゲリラ部隊……部隊、だからな。ジャングルのノリでな」フスマの奥の厨房、床に四角く開いた地下通路入口の鉄蓋を持ち上げる。3
2013-12-06 22:54:46
「この先、下水路だ。カマイタチ=サン、後ろどうだ」「急いだほうがいいに決まってる!チンタラしてンなよ」階段を降り、二重構造の鋼鉄フスマを引き開けると、独特の臭気がスーサイドの鼻孔を打つ。「まだ半分も話が見えねえ」「歩きながらだ。これ、ワイヤー、引っ掛けるな。ブービートラップだ」4
2013-12-06 23:02:41
「ウチの奴があんたらのボスと話を通してたッてのか?」「そいつ個人とは、もとから時々やり取りはあった。地上の奴とコネクションがあると何かと便利だ。下水にゃ俺らの他にイカレ頭のジジイが棲みついてるが、そこでなんでも揃うとはいかねえんでな」再びワイヤー。またぎ越える。 5
2013-12-06 23:13:02
「あの野郎また黙ってやがった」スーサイドは用心深く続く。後ろでカマイタチが闇に目を光らせ、水路の左右を跳びまわり、安全確認らしき事をしている。「ドージョーはバイオニンジャの集まりだ」ディスカバリーが言った。「知ってるか。バイオニンジャ。ゾンビーよりはマシだ。生きてるからな」 6
2013-12-06 23:28:40
幾つかの交差路を曲がり、滝めいた下水の落ち込みへ。ディスカバリーは率先してハシゴを降りてゆく。「で、だ。俺らはツキジ・ダンジョンのゾンビーどもと冷戦状態にある。いや、実際おっぱじまってる。縄張り争いだ。そこの元締めはウチの大将と同様、元ヨロシサン製薬の奴なんだが」 7
2013-12-06 23:37:28
一行は、一際広い水路に飛び石めいて浮かぶ足場を渡ってゆく。「残念ながらウチの大将とその死霊大王……リー・アラキってンだが……は格が違うっていうかよ……こっちはある意味指名手配……あっちは今でもカイシャとコネが残ってる。で、最近、雲行きが怪しい」「出てきたのか?カイシャが」8
2013-12-06 23:43:16
「じきだ」とディスカバリー。「そうなりゃ俺らはオシマイだ。バイオニンジャはヨロシサン製薬に作られた。ヨロシサン製薬にはな、自社の製品を好きに服従させ(サブジュゲイト)られるニンジャってのがいるんだ。わかるか。そいつにドゲザしろって言われたら、しちまうんだ。バイオニンジャは」9
2013-12-06 23:51:40
「そりゃどうしようもねえな」「そういう事」ディスカバリーは突き当りの鉄扉に手をかけ、押し開く。足元を驚いたバイオネズミが駆け去る。「だから、俺らは俺らで、今後を考えないといけねえのさ。エクソダスを」「イヤーッ!」後方でカマイタチと、ネズミの断末魔。「ハハーッ!よく肥ってる!」10
2013-12-06 23:58:19
スーサイドは通路の壁に埋め込まれたプレートを見る。「8鯖」。「目的地だろ」とディスカバリー。スーサイドは頷く。集合地点だ。各自、アマクダリ・セクトを撒いた後、地下へ下り、このポイントに集まる予定だった。この非常時に備え、網の目状の下水路地図は普段から各自所持している。11
2013-12-07 00:06:43
「気に入らねえな」「知らずに取り決めができてた事か?避難計画も伝わって?」「当然だろ」「そりゃ、面白くはねえよな。まあ、サイオーホースじゃねえか。死んだら終わりッてよ」ディスカバリーは笑った。「今度は俺らが助けてもらう番だしよ」「それも気に入らねえ。まだ話が半分ちょっとだ」12
2013-12-07 00:15:04
「後々ニンジャブリーフィングをする事になるだろうよ」ディスカバリーは壁に横向きに設置されたマンホールじみた蓋状扉の前で立ち止まった。「カマイタチ=サン。敵を見張ってろ」「チッ。わかったよ」ディスカバリーは扉に手をかけ、スーサイドを振り返った。「いいか。イカレじじいには礼儀」13
2013-12-07 00:28:17
「礼儀?ヘッ」「いや、笑い事じゃねえ。殺し合いになる」ディスカバリーは言った。「ここはドージョーの陣地じゃねえ。ジジイの家だ。実際ウチの何人かは顔を合わせるのも控えてる。ジジイを殺しちまったらドージョーにとって損失だ。ジジイは若者を」スーサイドをじっと見て、「若者を憎んでる」14
2013-12-07 00:32:26
鉄扉が開き、中の暖かい空気が漏れ出た。ディスカバリーは扉を乗り越えた。スーサイドが続く。彼は心中で呟く。シマナガシの面子は、何人辿り着いている?「ドーモ。連れてきたぜ」ディスカバリーが言った。「おう」スーサイドに片手を上げてみせたのはフィルギアだ。ストーブを囲んで座っている。15
2013-12-07 00:40:22
ストーブの周り、フィルギアの他に二人。ヒゲモジャの老人がスーサイドを凝視する。軍服じみた装束は大量の勲章で飾られている。もう一人は迷彩ニンジャ装束に身を包み、熱にうかされたような独特の眼差しを持つ男。ベトコンじみた編笠と満載の背嚢を脇に置いている。彼もまたスーサイドを見る。16
2013-12-07 00:44:33
「名前」老人は低く言った。膝に置いた手には、いつの間にかショットガンピストルが構えられている。ディスカバリーは老人に見えぬよう、スーサイドを肘で突いた。スーサイドはオジギした。「ドーモ。はじめまして。スーサイドです」「……」顔を上げる。ピストルは構えられたままだ。 17
2013-12-07 00:50:56
「……」フィルギアは口を半開きにして、無言のままにスーサイドを、それから老人を見た。やがて迷彩装束のニンジャがショットガンピストルの銃身に手の平を当て、ゆっくり銃口を下げさせた。「やめておけ。友軍だ」「若い奴には最初が肝心。でなくば即座につけ上がり、ワシを侮る。絶対に許せん」18
2013-12-07 00:58:51
「こちらはキャプテンジェネラル=サン!」フィルギアは緊迫した空気の隙間を縫うように、老人を紹介した。そして迷彩装束のニンジャを。「こちらはサヴァイヴァー・ドージョーのフォレスト・サワタリ=サンだ。お歴々、あいつがスーサイド=サン。人見知りなんだ。キャプテン、頼むよ。な」 19
2013-12-07 01:05:42
「フーッ!フーッ!」キャプテンの顔は真っ赤だった。自己の中で怒りを増幅させるタイプなのだ。「座っていいか」ディスカバリーが言った。キャプテンジェネラルはかろうじて頷いた。フィルギアがショットグラスにスピリットを注ぎ、キャプテンに差し出した。そしてスーサイドにも。「カンパイを」20
2013-12-07 01:10:34