- treeofevil
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宙に浮かぶティーカップ。飛んでは落ちる銀のナイフ。少年は黒いテーブルに肘をつき、窓の向こうを眺めて嗤う。 「甘やかすのは、良くないよねえ」 そう優しく呟いて、鈴を鳴らす。りぃん、りぃん。青い空は途端に色を変え、厚い雲がぐるりと渦巻き、晴天は嵐に変わる。 「僕の玩具なんだし、ね?」
2013-12-10 19:01:58ふふふふふ、あっははははははっ! もうそろそろ時間だよねえ! 準備はいいかな?良くなくても知らないけどね! 舞台は既に整ってるんだから! あははははははははははははははは!
2013-12-10 19:02:33《演者紹介:第二三公演》 【暴食】エメロード・アンセクト (@krwz_7ds) vs 【傲慢】アロガンサ (@b7s_mt)
2013-12-10 20:52:34《まもなく……12月10日21:00より……第二一公演、第二二公演、第二三公演、第二四公演が同時開演致します…… ご観覧の皆様はお席にお着きくださいますようお願い致します……》
2013-12-10 20:53:09あはははははは! それじゃあ時間になったことだし始めようか! 君らの文句は聞かないよ! だって此処では僕が神様なんだから! たとえそれが偽りであろうとね! さあ戦って!殺し合って!そして死んでいってよ! 此処はそのための舞台なんだからさ! あははははははははははははははは!
2013-12-10 21:00:05廃虚然とした城、荒廃した庭、境目等あってないような荒れ枯れた森を抜けた先、踏み出した足の感覚が変わると共に、足音もまた甲高く響いた。 堂々と踏み入れた足先、伝わったのは堅い石畳の感覚。 拡がっているのは、原形の半ばほどまで残った廃虚群。
2013-12-10 21:18:26見慣れた形の建物たちに、す、と目を眇めた。胸中、去来したのは回顧と郷愁とそれから嫌厭。 しかしそれらを表情に出す前に押し込めて、変わらぬ調子で歩いてゆく。 時折瓦礫で埋まった石畳には、やや苦い顔をしながら。
2013-12-10 21:21:47「なんだか、どこかで見たような景色ね!!」 溌剌とした声は廃墟然とした中世の街並みに、似つかわしくない。扉を潜る前は三十前後だった雀蜂の群れは、百、千、万と徐々に数を増やし、まるで影のように少女に付き従う。――くう、と鳴った腹を軽く押さえて、少女はにっこりと笑みを浮かべる。
2013-12-10 21:32:51「おいしいアップルパイを食べたら、なんだかもっとお腹が空いてしまったわ!」 いやね、と頬に手を当てて見せ、そのまま。つい、と指を動かし、示すは今にも音を立てて崩れそうな家。 「食べておいで、ツェーリの時とは違って、お菓子の家は無いみたいだけれど」
2013-12-10 21:33:04少女の舌にはこの廃墟群ですら、美味たる食物となる。 指し示された方向に、雀蜂は幾つかの群れを作って向かう。――喰らい尽くさん、と。 ティーセットの入った鞄に腰を落ち着け、ぶらぶらと足を揺らす。 「ん、わるくないわ!」 ぺろり、唇を舐め。口の中に淡く広がる味を記憶と照らし合わせる。
2013-12-10 21:33:33破れたカーテン。暖炉の燃えカス。焦げ付いたフライパン。年季の入った煉瓦。壊れたお人形。使われない模型。縮んだ洋服。――ああ、これは、骨の味? ころころと飴玉を口の中で転がすように、慣れ親しんだ味を舌の上に馴染ませる。 「ああ、これよりもおいしいモノ、あるかしら!」
2013-12-10 21:33:42高らか響くのは己の靴音のみだったそこ、いつしか耳に届く音に靴音ではない、別の音が混ざりだした。じりじりと耳を掻くのは、 「虫の羽音、か…?」 生きものの気配などないように思えたが。思索の間も歩みは緩まず、止まらず。 歩みを進めていく先で、目に映った小さな影は複数。
2013-12-10 21:43:13虫の群れ、だろうか。群れる虫に心当たりはさほどない。蟻、蜂くらいがせいぜいだ。あれらが耳を掻く羽音の主ならば、あれらは蜂、なのだろうか。 しかしほどの数が集まっているのは、巣の近くくらいでしか拝んだことが無い。
2013-12-10 21:54:52だがこの廃虚群、この周辺に巣があるとは、考えづらい。作為的、とでも言おうか。羽まで黒い蜂とは、さすがに不自然だ。 ――さて、どうなるか。 雀蜂の群れが飛来してきた方向へと、歩みは止まらず。
2013-12-10 21:54:58「……あら?」 少女の口元が僅か、楽しげに弧を描く。羽音につられて、ひとり。 ――ああ、やっぱり、ここにもいたんだわ! 「うふふ、お利口さん。ここまで来たら、あたしのところに、いてちょうだいね!」 くすり、くすくすくす。鞄からぴょこりと降りて、こつりと靴音を鳴らす。
2013-12-10 22:02:22「こんにちは、おいしそうな人」 にっこりと、深まる笑み。口の中を満たす唾液をごくりと飲み込んで、示した指先に止まる影のような雀蜂にそっと、口付けを落とす。 「ねえ、あなたは食べてもいい人?」 問い掛けは無邪気そのもの。無垢な笑顔で、何でもないように。
2013-12-10 22:02:29詰めようと思えば、瞬時に詰められる程度に距離を置いて、一際高く、打ち鳴らすように足を下ろした。 「開口一番それとは、お前の座は暴食か?」 大罪だろう少女の言動を、静かに見て。 「だが暴食で在ろうと、食べられるのは、御免だな」 問い掛けには、否を返した。
2013-12-10 22:11:24少女はどこか不満げに唇を尖らせると、ドレスを抓み恭しく礼をする。 「うん、あたしは暴食。『蟲喰』のエメロードよ」 そうしてすぐに面を上げ、訊ねる。 「おいしそうなあなたは、誰?」 群れが一つ、また一つと戻って来る気配がした。少女はそのままくるりと青年に背を向ける。
2013-12-10 22:30:28――少女の背に控えるは、小さな身の丈をゆうに超える雀蜂の軍勢。少女がその中へと身を躍らせれば、わっと雀蜂に覆い隠される。それらは当然、少女に針を向ける訳も無く、寧ろ甘えるかのようにどこか甘く響く羽音を鳴らして。 「ねえ、みんな。おいしかったかしら?」 まるで、対話するかのように。
2013-12-10 22:30:47擽ったそうに身を捩り、少女は楽しげに笑う。 「そう! まだ『此処』には沢山あるみたいだし、少しだけ待ってちょうだい!」 言い切り、少女は青年を振り返る。そうすると、軍勢は左右へと分かれ、再び少女の背後に控える。僅か、離れた距離を特に意識する事も無く、少女は問い掛けの答えを待つ。
2013-12-10 22:30:59集まった虫は、数えるのが困難なほど。百や二百程度ではきかぬ、千か、万か、それ以上か。群れに瞠目しかけて、細めた。 「やはりか、…『蟲喰』、ならばその蜂の群れ、罪科の顕現か」 後半は、囁く程度に収めて。
2013-12-10 22:44:04「暴食においしそうと言われるとは光栄だがね、生憎食われてやる気はないよ。――私は秩序、大罪の、一の罪たるArogansaだよ。傲慢さ。傲慢と呼ぶのなら、好きに呼んで構わぬよ」 問い掛けには、常の如く。
2013-12-10 22:44:43「あろ……?」 ああもう、どうしてごーまんの名前ってちょっと長かったり呼びにくかったりするのかしら。――ああでも、王たる傲慢の彼女はそうでもなかったか。とひとり、羽音に掻き消されてしまう程度の声音で呟き、伏せていた顔を上げる。 「呼びづらいわ!」 腕を組み、遠慮も何もなく。
2013-12-10 22:53:33「あだ名、とか無いの? おいしそうなひと。 あたしはあるわ! メロっていうの!」 むふん! と自慢げに胸を張るそれは、普通の少女と変わりない。 それにしても、と頭の中で数を数える。おひめさま。ツェーリ。あろなんとか。
2013-12-10 22:53:45