- treeofevil
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――この『ごーまん』も、なにか美味しいものを食べさせてくれたりするのだろうか。 じゅるり、と零れそうになった涎を飲みこみ、にこりと笑みを浮かべる。
2013-12-10 22:53:58「呼び、辛…」 少し愕然とする。初めて言われた。 しかし続いた言葉に持ち直す。あだ名、渾名。そんなもの、名乗るとすればいつ以来だろうか。そもそもそんなもの、なかったのかもしれない。 「…ならば、ログ、ではどうだろうか、蟲喰のメロ嬢」 少々考え込んで、やっと告げる。
2013-12-10 23:10:42「ログ、ログね」 幾度か、音を口の中で転がす。うん、これなら呼びやすい。何より憶えやすい。 「おぼえたわ! おいしそうなひと、じゃなくて、えっと、そう、ログ!」 びしぃっと人差し指を向けて、むふん! と再び胸を張る。螺旋を描く金が緩やかに揺れる。 「あなたの呼び方も何だか新鮮」
2013-12-10 23:15:21無邪気な笑みが零れ落ちる。くう、と鳴いた腹を押さえながら、首を傾げる。 「それで、ログは何をしにきたの?」 単刀直入。 「ちなみに、あたしは食べに来たわ!」 背に在る雀蜂たちが一層大きな羽音を鳴らした。まるで、同意するかのように。
2013-12-10 23:15:32金糸がわずか煌めいたのが廃虚に似つかわしくなくて少々残念に思う。このような荒れた場所ではなく、森、草原の青空のもとがよく似合うだろうに。 「食べに来たとは、いやはや暴食らしい」 くつりと一つ笑みをこぼし。 「私は、私でない傲慢を殺り(とり)に」
2013-12-10 23:25:34ああでも、もう一つやることができたと続けて、 「蟲喰のメロ嬢、暴食よ。嬢が暴食ならば、秩序(わたし)の後ろへ在るのは、如何かな」 私から続く暴食その座は、いまだ空位でね。欠けているのは秩序としてよろしくないのだよ。
2013-12-10 23:26:39「なぜ、殺して(食べて)しまうの?」 こてりと首を傾げる。あの何でも許してくれる姫様は、同じ罪がいたと楽しそうだったけど。 「なぜ、後ろなの?」 至極、不思議そうに。自分の知り得る『ごーまん』らとはまるで違う。 ただただ不思議だと言わんばかりに、矢継ぎ早に訊ねる。
2013-12-10 23:30:22「秩序であるが故に、だよ」 問い掛けは二つ、返答は一つ。 「二つも同じ罪は要らん。『秩序』に相応しくない。傲慢ならば尚更だ。在るだけで、私の秩序を侵すのだから」 それは半ば、吐き捨てるように。続けて、 「秩序たる傲慢(わたし)から、全ての罪が始まるからだよ、メロ嬢」
2013-12-10 23:36:36「あたし、ちつじょ? とか、そういうむつかしいことはわかんないわ!」 思考を、投げ捨てた。考えるとお腹が空いて仕方がない。 「後ろとか前とかよくわかんないし」 思考はまま、子供のものゆえに。 「だから、ついていくとか、いかないとかは」 言葉を切る。雀蜂は指先や揺れる金にとまり。
2013-12-10 23:41:52「――ログ、あなたが、あたしに、『おいしいもの』を持ってきてくれるか、くれないか」 くうくう、と腹が鳴る。雀蜂の羽音は一層、騒がしさを増して。 「それによるわ!」 びし、と人差し指を突き付けて、少女は無垢に笑う。 少女の根に在るのは、満たされる事のない空腹故に。
2013-12-10 23:41:59…何よりも大事は食欲か。確かに確かに、これは暴食。 くつくつと笑う。 しかし、彼女の望みにこたえられるものを持っていない。持ち合わせがないともいうが、さて城に帰ったところであるかと言えばかなり怪しい。
2013-12-10 23:55:11「…ふむ、ならばと思ったが、しかし。メロ嬢が満足できるようなものに、生憎と心当たりがない」 無い袖は振れぬとばかりに空の片手を振る、もう片手は、柄に添えて。
2013-12-10 23:55:17じぃぃぃ、と青年を見つめる碧の双眸。 「なんでもいいのよ? お城とか、そうねぇ、いらないトラックとかでもいいし」 ああ、久し振りに馬もいいなぁ。じゅるり。 「……まぁ、でも、無いなら、しかたないわ!」 金は揺れ、碧眼を眇める。影も同じくゆうらりと揺れて。
2013-12-11 00:00:13「おいしそうなあなた(ログ)のどこかを、ちょうだい?」 にまりと笑う。あくまで問い掛けのみで、特に行動は起こさない。 自分は礼儀はきちんと弁えた、一人前のレディなのだから。
2013-12-11 00:00:24とらっくとは、なんぞや。城と同列に挙げられたあたり、何かしらの建築物だろうか。というか、まっとうな食べ物でなくても良いのか。流石の暴食だ。だが城と庭と、ひとに荒らされるのは気に喰わない。たとえそれが、暴食たるためであろうとも。 続けられた言葉への答えを迷う。
2013-12-11 18:35:00漸う口を開いて、ならばと問い返した。 「例えば。この腕くれてやったのならば、メロ嬢はこちらに来るのかね?」 ひらりと、先ほど振った腕をまた一度。
2013-12-11 18:35:59「ログの腕?」 じ、と見つめながら、ぽつりと。そうねぇ、と悩む素振りを見せて。 「いいわよ! でも、それをずっとくれるの?」 ずっと、に力を込めて、暴食は笑う。 「ログが、あたしにうしろに続けというのなら、ログが一番上に立つというのなら、」 くるりと回り、ふわりとレースが揺れる。
2013-12-11 18:43:28「あなたが『傲慢』で在るというのなら、」 少女めいた笑みは何処か薄暗く、その表情に満ちるは空腹への。 「くだるものに、対価をくれるのは、とーぜんよね?」 だが声音に邪気は無い。ただただ無垢に、言葉は放たれた。
2013-12-11 18:43:38「なるほど、嬢の言葉に理があるようだ。対価は必須、与え続けることもまた然り」 頷く。 「しかし、残念だろうがね、私はこの両腕しか持ち合わせちゃいない」 それに、 「与え続けるという行為は、私に嵌らない。――こちらから持ちかけてなんだがね、済まない。」 こちらは空位の大罪が欲しい。
2013-12-11 19:29:29あちらは暴食、その欲を満たすものが欲しい。 しかしこちらが与え続けることは困難、ついでに与え続ける行為はあまり性に合わない。 今ある座たちは、在れぬ一つを除き他を求めることなく成り立つものだから、失念していたらしい。まあ第一、一方的に後ろへ据えただけでもあるし。
2013-12-11 19:29:39眼前の少女の了承を得ようとしたのは、ここが庭ではないからだけれど。 「どうやら嬢の要望に、応えることができそうにない」 目を細めて、剣の柄を握り直す。――さて、ならば。 この少女は、この答えをどうするか。
2013-12-11 19:31:26「ふうん」 何処か詰まらなさそうに。 「くれないなら、あたし、うしろにはいかないわ!」 だってそんなの、わりに合わないもの。と、暴食は微笑む。 「別にあたしだって、もらうばっかりじゃないけれど。 そーゆーのは大事だって言ってたわ、おひめさまが」 少女の知る『傲慢』が。
2013-12-11 19:40:53「いろいろあるのね、よくわかんないけど」 こてりと首を傾げながら、指先にとまる雀蜂を空に躍らせる。 「じゃあ、『此処』を食べて、あたしはかえるわ!」 ひらひらと片手を振り、もう片手にティーセットの入った鞄を手にした。 「もうそろそろ、あの子もかえってくるでしょうし!」
2013-12-11 19:41:03