torii_hさんの「起業のファイナンス」関連のつぶやき まとめ

torii_hさんが磯崎哲也氏の著書「起業のファイナンス」の解説&護憲をtweetしてくれていたので、自分用のメモがてらまとめました。
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H.Torii @torii_h

以下、応援の意味で @isologue 氏著「起業のファイナンス」 http://amzn.to/bIcJO5 について書きます。本書はVC側視点ですから反対側の半面には経営側があります。私自身が某銀行証券部出身であり経営側として語るので温度差をお楽しみ下さい。

2010-10-17 21:57:41
H.Torii @torii_h

当たり前ですが出資者であるVCと出資を受ける経営者とでは利益相反します。ここで行き違いがちなのは、日本の創業者は『基本的には一生自分で経営に責任を負うつもりで起業する覚悟が必要』(p.251)。だからではないでしょうか。

2010-10-17 22:00:33
H.Torii @torii_h

日本では社長業の人材流動性が恐ろしく低い。そもそも自分で会社を起こして育てた人材が乏しい。成功したシリアルアントレプレナーなんて聞いたことがありません。こういう環境の違いををシリコンバレーと勘違いすれば大いなる悲劇が待っているのです。

2010-10-17 22:02:02
H.Torii @torii_h

ビジネスは賭けで失敗も当然あります。ベンチャーとなればさらに勝率が低下。ここで何を勝ちとすべきか。普通の人はそこそこ稼いで会社が軌道に乗れば成功と思うでしょう。しかしVCが絡むと成功=上場かバイアウト、いわゆるEXITを意味します。

2010-10-17 22:03:45
H.Torii @torii_h

p.316に書かれてる通り日本では『バイアウトを前提にしにくい』のでベンチャーは必然的に上場をプッシュされます。ではベンチャー企業がVCの一般的な投資期間7年ほどの間に上場できる確率はどれほどでしょうか。言うまでもなくはっきり言って高くはありません。

2010-10-17 22:04:28
H.Torii @torii_h

上場もバイアウトも無理となった時に何が起こるのでしょうか。お人よしなVCならばp.179の『日銭を稼ぎながらチャンスを待ちましょう』と言ってくれるかもしれません。しかしそれも僅かな期間です。彼らは投資事業組合の運営者。所詮は客商売ですから。

2010-10-17 22:06:19
H.Torii @torii_h

現実は実に厳しい。VCの投資期間には終わりがあります。自分の会社が売られてしまうかもしれません。「株式の買取条項」(p.288)を盾に身ぐるみ剥がされる可能性だってあります。しかも「Living-Dead」(=生ける屍)の汚名を浴びながらです。

2010-10-17 22:06:53
H.Torii @torii_h

有効なHands-On(=投資家がただ資金を投資してくれるだけでなく、自身にネームバリューがあり人材や取引先の紹介・提携などの仲介をしてくれること)があったならばLiving-Dead呼ばわりされた側も納得感があるでしょう。

2010-10-17 22:08:16
H.Torii @torii_h

VCは二言目には『Hands-Onします』と言います。Google創業におけるアンディ・ベクトルシャイムの出資がその典型例でしょう。しかしそんな日系VCは寡聞にして知りません。

2010-10-17 22:08:33
H.Torii @torii_h

かくしてVCから出資を受けたベンチャーの5年目でそろそろ結果が必要な年頃となった時です。外見は立派なビルに入居し人材もすごい。しかし上場に届かないのは明らか。すると経営がわかる人ほど先行きを読めてしまいます。社員の前に取引先の会社の方が去っていくことに。

2010-10-17 22:09:22
H.Torii @torii_h

これがJAFCOやJAICが出資した大半のベンチャーが辿る姿だったりします。

2010-10-17 22:09:25
H.Torii @torii_h

会社訪問するとき、世間知らずの学生さんは入居しているビルや従業員数が気になるかもしれません。しかし私たちから見ればそんなのお化粧可能。手段を厭わなければ売上高や利益水準さえ操作できます。初対面の会社を見る時は資本の部が最重要です。

2010-10-17 22:10:03
H.Torii @torii_h

そこにVCの名を発見し資本金数億円とでもなっていれば、よほどイケてる事業をしてない限り「資本の部」が墓標に見えてしまうのです。

2010-10-17 22:10:16
H.Torii @torii_h

次にこの本の著者が望んでやまない『イケてるベンチャー』とはどんなのか考えてみましょう。たとえばSNS3社、DeNA、mixi、GREEでしょうか。

2010-10-17 22:11:29
H.Torii @torii_h

SNS各社の例で言えば、DeNAが1999.3創業2005.2上場、mixiが1999.6創業2006.9、GREEが2004.12創業2008.12上場、いずれも上場先は東証マザーズ。いずれも小泉政権(2001.4-2006.9)と時期が重なっているのは偶然ではありません。

2010-10-17 22:11:46
H.Torii @torii_h

マイクロソフトもソフトバンクも楽天DeNAも、同時代を見渡せば決して勝てない勝負をしてません。マイクロソフトが負けてもデジタルリサーチが残ったでしょうから。著者が言う『イケてるベンチャー』の数は環境が決めるのです。ここ超重要です。

2010-10-17 22:12:41
H.Torii @torii_h

著者はp.177の欄外に『独断と偏見で言えば、「マクロ経済動向がこういう状況だから投資してもらえない」などと一般論を言っているベンチャー企業はアカンと思います』と書いてますが、蟷螂に斧型努力は虚しい。ここを勘違いすると悲劇が待ってます。

2010-10-17 22:13:30
H.Torii @torii_h

著者が例にした孫子に範を求めれば『用兵の法は、十なれば之を囲み、五なれば之を攻め、倍なれば之を分かち、敵すれば能く之と戦い、少なければ能く之を逃れ、若かざれば能く之を避く』。オリバー・ストーンの映画「ウォール街」にも使われた名文句。不利な時期や場所で起業するのは間違いです。

2010-10-17 22:14:51
H.Torii @torii_h

次にVCと付き合わないとどうなるか。ひとつの可能性は間違った出資者を選ぶ可能性。『いくら優秀でも「ダークサイド」が強い人が成長期の企業の重要なポジションにつくと、その企業はどんどんダークサイドに転がっていくものなのであります』(p.186) 好例は日本振興銀行です。

2010-10-17 22:15:59
H.Torii @torii_h

出資者の選定は重要です。では起業は無理か。これはYesでもNoでもあると思います。逆境の時期や場所で起業するならば、明日の巨大なリターンよりも今日のコスト圧縮を先に考えねば、ということだと思います。イケてるベンチャーではないかもしれませんが。

2010-10-17 22:16:14
H.Torii @torii_h

今周囲を見渡すと非上場会社のイケてる社長さんほどハッピーに見えます。VCから見れば『夕方5時で帰りますというような経営者で成功した人というのは、あまり見かけたことがありません』(p.288)かも。ところがどっこい、成功した経営者でそんな人は多い。それはなぜか次に考察します。

2010-10-17 22:18:22
H.Torii @torii_h

会社が大きくなれば幸せか。想像がつかないかもしれませんが金で買える日本人の幸せは5-10億円あたりに上限があります。これは本書p.79に書かれてる通りで、家も車もファーストクラスも専業主婦の奥さんもこれでOk。それ以上持っても良いことはあまりありません。

2010-10-17 22:19:33
H.Torii @torii_h

このレベルの成功であればマスコミの役員になるとか外資系金融機関に勤めるなど、ベンチャーよりもよっぽど成功確率の高い手段があります。

2010-10-17 22:19:50
H.Torii @torii_h

そこでベンチャー企業を上場させたとしましょう。先に比べると一桁大きい金銭的幸せです。仮に100億円ゲットしたとします。納税して半分残るかも。それで済めばいいのです。が、ここから嫌になっちゃう人が少なくありません。

2010-10-17 22:21:33
H.Torii @torii_h

上場準備と維持には年間1億円級の経費がかかります。創業メンバー以外に気心の知れない証券会社出身者を雇ったりします。税務調査も地方税務署ではなく国税管轄。株主もうるさくなります。もはや静かな生活は帰ってきません。だから上場したら離脱する経営者が後をたちません。

2010-10-17 22:23:34