大罪戦闘企画

《幕間記録》
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――とある大罪

筋トレがんばりたい深海 @_dsea

しゃらしゃら、鎖の音だけが緩慢に。 ゆっくりゆっくり、辺りを見回しながら歩みを進めて。 ふと、立ち止まる。空の彼方、その向こうを見ようとでもするかのように、鈍い色の目を細め、囁いた。 「ねえ、そこから見る景色(色)は、きれいかな」 一言だけ落として、また緩慢に、鎖の音が響きだす。

2013-12-17 18:05:58

――とある大罪

華夏の勇者 @battle_atom

【舞台裏】 「…彼は、思い出したかな」 趣のある和室の一角で、静かに本を読んでいた男が静かに呟く。 形の整った眉が僅かに顰められ、声色も心なしか重い。 「…あれは、【君】の記憶ではないというのに。」 小さく溜息をついた男に、すぐ傍にいた少女が、怪訝そうに男の方を向いた。

2013-12-17 19:54:28
華夏の勇者 @battle_atom

「あら、でもあれは【パォシー】でしょう?」 「あの赤毛の【暴食】は、あくまでも【紅の暴食(パォシー)】になりそこなった【暴食】なんだよ、怠惰君。Ifとでも呼べばいいのかな。誰も迎えに来なかった【暴食】が、誰かが迎えに来てくれた【パォシー】にはなれないよ」

2013-12-17 19:54:56
華夏の勇者 @battle_atom

すらすらと、まるで歌でも謳うように、舌先から零れ落ちる言葉に、少女は尚更顔をしかめる。大きく頬を膨らませ、「難しい事はわからないわ」と拗ねたように言葉を漏らした。 「まぁ、つまりは最初からないものを思い出せるはずがないという事さ。…おっと、そろそろ時間だね、私は行くよ。」

2013-12-17 19:55:48
華夏の勇者 @battle_atom

「あら、誉がいくの?」 「君だって、もう少しあの子と遊んでたいだろう?…せっかくできた友人なんだ、大事にしなさい」 「うん!」 「それじゃあ、いってくるよ。暴食君が帰ってきたら、宜しく頼むよ」 僅かに苦笑を浮かべながら、男は少女の柔らかい髪をかき混ぜる様に、くしゃりと頭を撫でた。

2013-12-17 19:57:05

――とある大罪

ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

月の明るい夜だった。月明かりに照らされて柔らかく輝く白の花園を、一人の少女がひどくゆったりとした足取りで歩いて行く。ふわりと青のフリルが踊り、ひらりと黒のリボンが泳ぐ。今しがた戦場から帰ったとは思えないほど綺麗な身形で凛として進む少女は、名を『傲慢』と言った。

2013-12-17 20:24:55
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

さわりさわりと花々が囁き声を漏らす。頬を撫でる風に目を細め、足を止める。ゆるりと巡らす視線の先に白ではない、赤い色。少女はくすりと微笑んで在りし日を思い出す。 その赤は、少女の大切な『暴食』が少女に強請ったものだった。

2013-12-17 20:25:13
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

いつだってお腹が空いていて、心にぽっかり穴が空いている気分だと語った彼女は、それを誤魔化すための薔薇が欲しいと言った。色は赤、大きくても、小さくても良いけれど、綺麗じゃないといけないの、そうでないと食べても食べてもお腹が空いてしまいますわ。

2013-12-17 20:25:27
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

眉尻を下げ、すまなそうに語る彼女に少女は直ぐに薔薇を用意した。彼女の希望通り、真っ赤な綺麗な薔薇を自らの城の周囲に植えた。彼女は言った。嬉しいけれど、良いの? 白ばかりの花園に艶然と佇む薔薇の姿は、きっと彼女自身のように思えたのだろう。少女は頷きこう言った。——当たり前でしょう?

2013-12-17 20:26:10
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

ゆらりと揺らす視線を真っ直ぐに、正面に聳える城を見た。それは少女の為の城。少女の為だけにある城だった。 ある時、一人の女が目を覚ました。ジャックと名乗った彼女は、自らが何かを知らなかった。大罪であることも、『正義』であることも。

2013-12-17 20:26:29
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

少女はそれで構わなかった。何一つ気にすることはない。けれど困ったことに少女は彼女に名乗れる名前が無かった。黙ってしまった少女を、彼女はお姫様と呼んだ。こんなにも広くて大きなお城に住んでいるなら、貴女はきっとお姫様でしょう? 少女は苦笑して頷いた。

2013-12-17 20:26:46
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

お姫様なんて自身とは程遠い存在だと少女は知っていたけれど、彼女が納得するならそれで良かった。汚いものを嫌う彼女は、少女が綺麗なものであるかのようにニッコリ笑う。少女はそっとこう言った。——貴女はとても綺麗な人ね。 静かに少女は振り返る。来た道の先、暗い森の向こうを静かに見やる。

2013-12-17 20:27:25
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

まるでその目に映っているかのように。 森の奥深く、底の底で少女は『怠惰』を見つけた。昏々と眠りにつく少年を少女は一生懸命抱き締めて、お城へと連れて帰った。死んだように冷たくて、少女の肌を侵食する黒なんて気にならなかった。

2013-12-17 20:27:40
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

早く、早くと、使っていない空き部屋のベッドにそっと横たえて、少年が目を覚ますのを待って。薄く開いた少年の目に全てを悟って少女は何も言えなくなった。想いも何も、少女には踏み込む場所も、触れる場所さえない。分かっていたけれどその少年があまりにも悲しくて、哀しくて。

2013-12-17 20:28:47
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

少女は優しくこう言った。——ずっと此処に居て良いわ、貴女は私の大切な大切な『怠惰』よ。 瞼を下ろす。振り払うように前を向き、再び足を進めていく。扉の前に立てば、ギィ、という音と共に城の扉がひとりでに開いて。少女はそれを当たり前のように受け入れ、悠然と城の中へと足を踏み入れた。

2013-12-17 20:29:15
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

玄関ホールを抜けて、絵画の並ぶ白い廊下へ。ほんの少し立ち止まり、それから前へ前へと景色を流す。 此処に在る絵画は全て、少女の『強欲』が意味も無く購入した物だった。彼の舞台は貴族ばかりのオークション。

2013-12-17 20:29:34
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

高額をつける貴族たちを相手に更なる高額をつけては目の前で掠め取った悪趣味なコレクション達だ。彼が言うには、貴族は誰もがオークション会場に現れるべきでない身形の彼を好奇と蔑視の篭る目で見るらしい。

2013-12-17 20:29:52
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

けれど高額落札をしたのが私だと分かると、有り得ない、なんて顔をして、時には顔を真っ赤にして怒ったりして、面白いんですよ。そう語る彼に少女は呆れながらも楽しくて笑った。だって、少女にしたら彼が落札するのなんて当然のことなのだ。

2013-12-17 20:30:07
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

彼が所持している金は、今や一つの国家予算も軽く超えているのを知っている。その殆どが少女が与えた報酬で。少女は冗談めかしてこう言った。——いっそオークション会場ごと買い取ってしまいなさいな。 ぱたんぱたんと少女の靴音が廊下に響く。広間にはおそらく『暴食』と『正義』が居るだろう。

2013-12-17 20:30:49
ウィリアム・ウィドー @s_akiyui

相性はあまり良くないけれど、きっと大丈夫だろうから。少女は小さく微笑んで、廊下を急ぐ。目指すは突き当たりの先にある、『嫉妬』の自室。いつも閉じこもってしまって、殆ど出てこない子だけど、なにせ折角の機会だから。あの子が久し振りに外に出るのも、悪くないだろう、なんて——

2013-12-17 20:31:37

――とある大罪

エメロード @actKrwz

「――でね、大変だったのよ! いっぱい影が出てきて! 食べても食べてもいなくならないし、味はしないし! でも楽しくなっちゃってっ」 あちこち掠り傷だらけの少女は半ば雀蜂たちに押されるようにして、扉から転がりながら出てきた。どちらが主なのだかと笑いながら麗しの姫はその頭を撫でる。

2013-12-17 23:04:20