悪い男に騙される山城【解】『HAruna's waRD』真最終章其の壱『悪い男に壊される山城』
壁に背を預けたまま山城は動かない。 なんだ、もうおしまい? 吸い込んだ水分で倍以上に重くなった衣を脱ぎ捨てながら歩み寄る。 まぁ、それでもこわすけど。 『いい加減にして!』 いい加減にするのはそっちだって。なんでわからないのさ。 『その身体は…』 この身体は?
2013-12-05 02:25:56足が止まる。 山城はまだ動かない。 頭が痛い。 なぁ『榛名』 『何よ『鬼』』 はは、それが違うんだって。 『何ですって…?』 逆なんだよ『榛名』。その前提が完全に逆。逆逆逆。笑える程逆。 『何が言いたいの?』 頭が痛い。どうにかしないといけないのに。
2013-12-05 02:30:26山城を庇うように扶桑さんが腕を広げる。 どかすのもこわすのも簡単な事だった。 今の私には容易い。 いいかい『榛名』逆なんだよ。 『だから何が…!』 この身体を『私』が乗っ取ってる、だなんて考えてるんだろ? 『…』 気付いた? いや、薄々は気付いていたよね。知ってる。
2013-12-05 02:33:57山城の手が、ぴくりと動く。 扶桑さんの脇を縫って、その手を踏み潰す。何かが折れる素敵な感触が亜日の裏から返ってくる。 記憶は共有してるんだ。『榛名』の考えてた事も全部知ってる。 『なら…』 もういいじゃん。わかってるんだろ? 受け入れなよ。 『違う…』 違わない。
2013-12-05 02:36:38白黒の世界。見せられる景色。壁に映る光景。誰かの呼び声。 咲いていく花びら。散っていく花びら。枯れていく花びら。 すべてが白と黒で作られていて。 水も無いのに世界に色が戻る景色が広がる光景が包まれる呼び声が明確になる。 花びらが、再び咲き誇り。
2013-12-05 02:40:51「成功です」 誰かの声が聞こえて『私』は目を覚まし――― 「自分の名前がわかるかな?」 誰かの声が聞こえて『私』は名前を名乗る――― 「そうだ、榛名君。君の名前は榛名だ」 榛名。『私』は榛名――― 「鎮守府での生活を楽しんでくれたまえ」 はい―――
2013-12-05 02:45:09「榛名? 貴女…」 金剛姉さんが。 「え? だって榛名は…」 比叡姉さんが。 「姉、様…?」 霧島が。 はい、高速戦艦榛名です。よろしくお願いします。 やめ―――
2013-12-05 02:47:06目を覚ますと灰色の壁に囲まれていた。 ここは…独房、か…。 すぐに察した自分を怖く感じる。頭が痛くない事に安堵する。 隣の牢から山城のすすり泣く声が聴こえた。 …。 そう。ここから始まるのね…。
2013-12-05 02:49:12