- ScratchedLaura
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ミー(1)物心着いた頃には、すでにそばにいた。私にとっては最も身近な動物だった。実家で飼っていたネコの名は「ミー」という。ベタである。
2010-10-19 18:06:11ミー(2)ミーは、母が嫁いでくるときに実家から一匹だけ連れて来たネコである。私が最も接したのは、二代目のミーである。当家では、ネコの名前は全てミーと呼ばれる。ベタである。
2010-10-19 18:06:40ミー(3) 結婚するとき、両親が家内の実家に挨拶に行った。家内の実家にもネコがいて「テン」という。 こたつに近づいてきたテンに向かって、母は何のためらいもなく、ミーと呼び掛けた。うちではネコは全てミーである。
2010-10-19 18:07:44ミー(4)ペットといえばミーと呼ぶのが当たり前となっていた。しかし、それが災いし、悲劇を呼ぶことになる。 小学生の頃、モルモットを買って貰ったことがある。発想が貧弱な私は、ひとしきり悩んだあげく、結局そのモルモットにもミーと名付けた。
2010-10-19 18:08:08ミー(5)ある日、モルモットのミーに首輪を付けて庭で遊ばせていた。いつも通り、モルモットに対して、ミーと呼びかけていた。しかし、その呼びかけに応えたのは、縄張り巡回を終えてきたネコのミーであった。
2010-10-19 18:08:32ミー(6)ネコのミーが、モルモットのミーを視覚に捉えた途端、ネコのミーの目付きが変わった。本能に衝き動かされたネコの動きは素早く、私には何をする術もなかった。
2010-10-19 18:09:05ミー(7)モルモットの首を一撃で仕留めたミーは、私の怒鳴り声にびびって、咥えたモルモットを置いて去って行った。私は大変なことをしてしまったと子供心に狼狽した。可哀想なモルモットのミーは、庭に穴を掘って葬ることになった。それ以来、ネコ以外のペットにはミーと名付けていない。
2010-10-19 18:09:33ミー(8)しばらく経ったある日、ミーはいつもと変わらず、足元に擦り寄ってきた。可愛いのだが、モルモットを仕留めたミーが許せず、思わずミーの頭をコツんと殴ってしまった。なぜ殴られたかわからないミーは困惑して逃げて行った。ミーは何も悪くないのに…なぜ殴ってしまったのだろう。
2010-10-19 18:10:39ミー(9)田舎の夜は声が通る。ご飯時、縄張り巡回中でいなくても「ミ~っ!」と叫べば、にゃあ~と帰ってくる。「ミ~っ!」と呼ばれても、きっとミーにはそれが自分の名前とは解せずに、「ごはんだよ~」の掛け声だと思っていたのかもしれない。
2010-10-19 18:11:13ミー(10)イヌ派かネコ派かと問われれば、ネコ派と答える。イヌも好きだが、イヌの従順さよりもネコの自由奔放さに惹かれるからだ。 うちのミーも飼い猫ながら、家ではなく外で飼われていた。自由奔放に飛び回っていた。
2010-10-19 18:11:41ミー(11)ミーはよく近所を渡り歩いて、ごはんをもらっていたようだ。◯◯さんちのミーちゃんが来てたからごはんあげといたわ、と近所の人に言われると、子供ながらに、いつもすいません、と心の中で思った。飼いネコのはずなのに、まさに地域ネコである。でも、そんな風土が田舎にはあっていい。
2010-10-19 18:11:54ミー(12)自由奔放と言えば聞こえはいいが、いい事ばかりとは限らない。自由には困難や危険が伴う。 ある寒い冬の日のこと。居間の堀コタツでテレビを観ていると、ネコの声がした。ミーと呼んでみると「にゃあ~」とこたえてくる。でも、家にはいない。
2010-10-19 18:13:09ミー(13)そう、ミーは寒さをしのぐ為、縁の下から潜り込んで、堀コタツの外側で暖を取っていたのである。家にいれてあげたかったが、野生化?しつつあったミーには、残念ながらその発想は無かった。
2010-10-19 18:13:29ミー(14)しばらくして、ミーは庭で亡くなっていた。毒キノコでも食ったんだべな、と祖母は言っていたが真偽のほどは定かではない。 母が嫁いで以来、飼われたミーの家系はここで途絶えた。
2010-10-19 18:13:49ミー(15)それから20数年後、実家からネコを飼い出した、との連絡があった。野良猫で妙になつくので、父が情にほだされて飼うことにしたらしい。名前は何と付けたかと聞けば、案の定、「ミー」とのこたえ。全身真っ白なきれいな子猫だった。
2010-10-19 18:15:02ミー(16)真っ白なミーちゃんは、家猫として育てられることになった。しかし、父の願い虚しく、なつくのは豆に世話をする母の方であった。当然の結果である。母の膝上で丸くなるミーちゃんをみて、父は嫉妬の炎を燃やしたに違いなかった。拾ってあげたのは俺なのにと。
2010-10-19 18:15:14ミー(17)しかし、もともと野良猫だったミーちゃんは、外へ出たがった。一度飛び出して行ったが、ちゃんと帰ってくることがわかった。ただ、泥だらけで帰ってくるので、母に首根っこを掴まれると、風呂場でシャワーの刑に浴することになった。
2010-10-19 18:15:40ミー(18)しかし、ある日、ミーちゃんは出て行ったきり、帰って来なくなった。私と家内は実家へ帰ったときの楽しみが減ったと落胆した。 後日、車にひかれたらしき真っ白な猫を見つけた近所の人が、手厚く畑のあぜ道に葬ってくれたと知った。 自由にはリスクが伴う。
2010-10-19 18:16:34ミー(19)それでもやっぱりネコが好き。ペットを飼うのは勇気がいる。人より長く生きられない以上、必ず別れのときがきてしまう。飼うならそれを覚悟しなければならない。 さーて、どうしよう。ま、飼ったとしても、名前はもう決まっているが。
2010-10-19 18:16:59