雑誌『POSSE』編集長による2013年紅白解説

ポップミュージックに反映された世相、なかでも「労働」についてどううたわれているか、雑誌『POSSE』編集長が2013年紅白歌合戦を独自の視点で解説。 「労働問題を文化から論じてみる実験的な意味も込めて紅白労働ネタツイートを連投してみたんですけど、反発が大きかったようで、歌手のファンの方には抗議されフォロワーも減るという残念な反響でしたが、精進しようと思います…。POSSEの浮ついた部分の担当として、開き直って頑張ります。」
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坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

昨年の紅白で美輪明宏が歌った「ヨイトマケの歌」も、そのカップリングで今年披露された「ふるさとの空の下に」も、戦後復興から高度経済成長へ、がんばって働けば報われるという物語が機能していた時代の歌だった。新卒の正社員すら使い捨てになるブラック企業の時代には、どこか羨ましくすら見える。

2013-12-31 22:43:42
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

「恋するフォーチュンクッキー」はMV冒頭で黒人DJが「カネがない、仕事がキビシイ」と宣言する、貧困と過労の時代の音頭であると同時に、総選挙を制した指原莉乃センターの「人気投票1位」という歌詞で競争を相対化する物語でもあると主張したい。 http://t.co/YRyVpSK7HL

2013-12-31 22:53:37
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坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

福山雅治というとまず90年代の「HELLO」を思い出す世代なんですが、この歌は「そんなはずはないさ」「25時の電話のベル 土曜日の仕事」で始まるんですよねー。これも長時間労働の歌だ。

2013-12-31 23:01:26
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

泉谷しげるは名曲「春夏秋冬」もいいけど、同じアルバムに収録されている「街はぱれえど」(72年)もいいですよね。残業と低賃金と上司の視線のなか細々と生きる日本の労働者の姿は、40年後のいまもなおリアルだ。 http://t.co/lYIN9Jf3M6

2013-12-31 23:04:22
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坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

いきものがかりに労働の歌なんてありましたかね…。シングル「いつだって僕らは」がユーキャンのタイアップなので、資格を身につけて新しい職業をめざす歌という側面はありますね。

2013-12-31 23:08:08
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

嵐メドレーの冒頭のシングル「Endless Game」は、松田優作の映画で有名な「家族ゲーム」のリメイク版ドラマの主題歌。家庭教師の櫻井翔が日本的な家族を崩壊させる話。なお人事部でリストラ担当者だった父親は自身も解雇されてハロワで求職するという展開でしたね…。

2013-12-31 23:10:59
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

松田聖子の「あなたに逢いたくて」。恋人と別れて「毎日忙しくしているわ」というところに、女性の総合職が一定広がっていった90年代を重ねることもできるかもしれない。

2013-12-31 23:21:19
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

AKB大島優子は事務所的にも経験・スキル的にも、彼女の「夢」を心配する人はいないだろう。AKBという組織の責任がむしろ足枷になってたわけで。組織の責任と自分の叶えたい「夢」の狭間で今後一層苦しむのは髙橋みなみだろう。将来を不安視した若手メンバーの卒業とは別の労働問題がここにある。

2013-12-31 23:24:42
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

日本型雇用がまだ安定していた時代に仕事を愚痴った「たぶんオーライ」(95年)から20年、日本型雇用が変容したブラック企業と非正規雇用の時代に「生真面目さん」な働き方から距離をとる「JOY!」は、意外と本気で日本の働き方の新しい方向性を志向しているんじゃないかと思っている。

2013-12-31 23:29:50
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

このサブちゃんの龍がつくれるなら、「紅蓮の弓矢」で大型巨人つくるべきだったんじゃないかなー。アニメじゃなくて。

2013-12-31 23:34:50
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

今日の「まつり」は北島三郎の花道であったと同時に、現代の「まつり」へのバトンタッチでもあったように思った。AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」やSMAP「JOY!」のように、過労や競争に対して距離をおきながらの、参加型の「まつり」。

2013-12-31 23:44:26
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

13年の紅白は卒業づくしでしたね。EXILEからHIROが「卒業」し、AKB48から大島優子が「卒業」することを発表し、紅白から北島三郎が「卒業」し、あまちゃんからあまちゃんファンが「卒業」した、と思う。

2013-12-31 23:47:33
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@dianthus_ile372 福山さんの歌はその現実を前提としてこその恋愛の歌だから、まったくけなす内容ではないですし、その意図もありません。言い方をもう少し変えた方がよかったのかもしれませんね。

2013-12-31 23:51:29
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労働問題を文化から論じてみる実験的な意味も込めて紅白労働ネタツイートを連投してみたんですけど、反発が大きかったようで、歌手のファンの方には抗議されフォロワーも減るという残念な反響でしたが、精進しようと思います…。POSSEの浮ついた部分の担当として、開き直って頑張ります。

2014-01-01 00:10:34
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

労働というテーマの場合、歌手の実存がそのまま歌詞に反映されなくても、背景として半ば無意識に描写された環境が、結果的に労働の現実をなぞってることがある。残業とか。また近年、アニメやアイドルで歌が物語のサントラ化し、その物語が労働を軸にしているために結果的に労働の歌となることもある。

2014-01-01 00:24:48
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

後者の例が「紅蓮の弓矢」や「恋チュン」。これらをなぞることで、労働問題を声高に叫ぶ意識の高いミュージシャンに頼らずとも、労働の現実について文化から知ることができるんじゃないの?という実験が昨日の紅白ツイートでした。これらを介して、意識高いミュージシャンの発展にも期待したいです。

2014-01-01 00:29:59
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

紅白ツイートに需要があると言ってくださった方、ありがとうございます。今年は個人的にこういう方面の活動も頑張りたいと思います。

2014-01-01 00:32:43
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

つぶやかなかっけど紅白出演者で2013年はNMBにもSKEにも労働っぽい歌あったな。年越したのに去年のネタでツイートするのは気がひけるけど、今後いう機会もないだろうからつぶやいとこう。

2014-01-01 00:41:08
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

NMBにとって13年は48グループ内の競争を加速させる一年だった。友情より競争、二番なんかいらん、ライバルをどつき倒してカチコミだと息巻く1stアルバムの表題曲「てっぺんとったんで」の歌詞は、競争を軸にした48Gの物語の真骨頂だった。 http://t.co/c5vZZOcPWj

2014-01-01 00:45:44
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

2013年、SKEはメンバーが大勢卒業した。大手事務所に所属できず外部のオーディション参加も禁止され、夢を叶えようのないまま。卒業メンバーが歌った「それを青春と呼ぶ日」は、秋元康が彼女たちに花道を与えたいわば転職の歌でもある。 http://t.co/zV5M8rwLTD

2014-01-01 00:49:24
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坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

あと仕事についてほとんど歌っていないaikoですが、01年のカップリング曲である「陽と陰」に 「この先勇敢な戦士になるの?それとも負け犬になるの?」というフレーズがあった。 http://t.co/GiqJfZmN2O

2014-01-01 00:51:51
坂倉昇平@『大人のいじめ』(講談社現代新書)/総合サポートユニオン/NPO法人POSSE @magazine_posse

ももいろクローバーZは12年に直球で「労働讃歌」がありましたね。大槻ケンヂ作詞ということで「暁の戦力外部隊」のような80年代サブカル的アウトサイダー像が、10年代にノンエリート労働者のモデルとしてバージョンアップされたと言えるのかも。 http://t.co/oSOpdFrv1v

2014-01-01 01:02:34
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