【第一部-七】誰かを見つめる時雨と夕張 #見つめる時雨

時雨 夕張
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誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

……今日ね、夕立が戯れてきて、また首を甘咬みされるのかなって思ったら、思いっきり首に吸い付かれたんだ。そしたら、たまに山城や扶桑の首元についてる、あの点そっくりな跡が僕の首に出来てて……これって、そういうことだったんだね…そうか…

2014-01-03 19:56:57
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

どうやら夕立は、夕張に借りた本にこういうことが載ってたらしく、それの影響を受けたみたい。……後で夕張のところへ行こう

2014-01-03 20:03:35
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

夕張の部屋の扉をノックしてみてるんだけど、返事がないんだよね。部屋の中から物音がするから中にはいるはずなんだけど……あ、鍵空いてる……入っても大丈夫かな?

2014-01-03 20:13:19
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「夕張?」 部屋に入って見ると夕張がヘッドホンをつけてパソコンの前にいた。なるほど、あれで僕のノックが聞こえなかったのか。……何をやってるんだろう?

2014-01-03 20:25:32
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…相変わらず返事がないから、悪いかなと思いつつ、夕張が見ていたパソコンの画面を覗いたんだ。そしたら……その……

2014-01-03 20:31:56
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「きゃああああああ!?」 ようやく僕の存在に気づいた夕張が悲鳴をあげた。 「なななな何でぇ!?あ!!これは!!違うの!違うのぉー!!」 画面には…その…服が乱れた2人の女の子が…うん……

2014-01-03 20:38:02
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

僕は画面から目が離せないでいた。この片方の女の子、髪が黒くて長くて…扶桑に似てるかも…なんて思いながら。 「そ、そんなまじまじと見ないでぇー!!?何この辱め!?だいたい何で時雨がここに居るのよ!?私に何か用!?」 あ、そうだ。夕張に用事があって来たんだ。

2014-01-03 20:50:16
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

夕張が正座で座っている。まるで叱られた子どもみたいな…そんなつもりはないんだけどな…むしろ僕がお願いしたいことって…えっと… 「ゆ、夕張…その、お願いがあって来たんだけど…」 「はい、何でしょう…」 「さっきの画面みたいなのって…」 夕張がひぃ!っと小さく悲鳴をあげた

2014-01-03 21:03:35
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「その…知りたいんだ、僕…そういうこと…」 そう言うと夕張が固まった。そして次の瞬間には後ろを向いて頭を抱えながら何やらブツブツ言い始めた。 「…何この展開…私どこでこんなフラグ立てちゃったわけぇ!?ここで選択肢間違えたら、扶桑さんと山城さんに間違いなくころされる…!!」

2014-01-03 21:23:55
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「その、駄目…かな…?」 夕張がこちらを向き、引きつった笑みを浮かべた。その顔には冷や汗のようなものが見える。 「え…えっと…その…ど、どうして時雨は、そんなこと知りたいの?」

2014-01-03 21:33:11
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「……好きな人がいるんだ。でも僕はその人に子ども扱いされてる気がして、実際僕はまだまだ子どもで…知らないことも沢山あって…だから…」 「あ…」 そして少しの沈黙のあと、夕張は立ち上がり、本棚へと移動した。 「…そんなあんまり背伸びする必要ないと思うけど…」

2014-01-03 21:38:43
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「時雨って、漫画とかって読んだりする?」 「多分、人並みに……」 僕の返答に、ふむ、と頷き、本棚から何冊か本を取り出した。 「じゃあこれ、貸してあげる。恋愛ものよ。ちょっとそういうシーンもあったりするから……その、私から借りたことは内緒にしておいてね…!?」

2014-01-03 21:49:14
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

夕張から紙袋も貸してもらい、それを持って廊下を歩く。 夕立にも見られないようにしたほうがいいよね…?こっそり、夕立が寝たあとに読もう…… 僕は内容を想像して少しドキドキしながら部屋へと戻った……

2014-01-03 21:59:21

次の日…

誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「お茶が入ったよ、夕張。少し休んだらどうかな?」 今日の秘書艦は夕張。せっせと事務仕事をこなしていた彼女に、労いのつもりでお茶を用意したんだ。 「ありがとう、時雨。ふー、つかれたぁ」 夕張が腕と背筋を伸ばす。少し顔にも疲労の色が浮かんでいた。

2014-01-04 15:26:08
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ふー…時雨の淹れてくれたお茶って美味しいわ。何か秘訣とかあるの?」 扶桑がこの前、お土産にと玉露を買ってきてくれたんだ。とてもいいお茶だけど、出し惜しみしてても勿体ないし、折角だから淹れてみたんだ。美味しく淹れられたみたいで、良かった。 「そうだね…温度と抽出時間かな」

2014-01-04 15:32:45
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「へー…そんな事まで知ってるなんて、時雨って大人よね」 夕張がお茶を飲みながら言う。 「そんなことないよ。調べただけだし、扶桑の方が上手だよ。扶桑の淹れるお茶は本当に美味しいんだ」 扶桑は淹れる時の雰囲気からして違う。凛としていて優雅というか…そしてそれが味にも出ているんだ

2014-01-04 15:37:36
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…ねえ、この前貸した本、どうだった…?」 夕張が遠慮がちに聞いてきた。 「うん…恋をするって、好きな人と触れ合うって、素敵なことだと思ったよ」 そんな僕の感想に夕張が目を丸くした。あれ…僕、変なこと言ったかな…?

2014-01-04 15:42:26
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…やっぱり時雨って大人ね…。私なんて、ああいうのを初めて見た時はドキドキしてしょうがなくて、本当に興味ばっかり先走ってて、そんな風に考えられる余裕もなかったもの…」 夕張がため息を吐きながら言う。

2014-01-04 15:46:38
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…僕だって、読んでる時はドキドキしてしょうがなかったよ。好きな人とこんなことするんだ、そんなことまでしちゃうんだって…でも、その後の幸せそうな絵を見てたら、やっぱり素敵なことだなって思ったんだ」 何も包み隠さない、僕の本音。

2014-01-04 15:50:41
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「そう、何だか安心したわ…。ねえ、私は時雨の恋、応援してるからね!」 「ふふ、ありがとう、夕張」 夕張がお茶を飲み干し、机へと戻っていく。…僕もそろそろ戻ろう。 窓の外を見ると空が茜色になっていた。…この空を見ると、いつも少し寂しい気持ちになるのは何でなんだろうね…?

2014-01-04 15:55:02