大罪戦闘企画

【魔王】 @Tokimine_Seo

「……私はな、お前たちのように血を流し、苦しみ、常に変化していく生き物というものが、羨ましい。妬ましい。概念の私は変われないのだから、」 だから、と続ける。 「『お前たちも、私のように、変わらぬものに』」

【魔王】 @Tokimine_Seo

唐突に、男はそれまでの人の形を崩した。また狼になるでもなく、全身がどろりと灰色の粘液に変わり流れてゆく。 傷ついた青年と女を呑み込み、永遠の彫像に変えてしまおうと。

華夏の勇者 @battle_atom

己の死を忘れた青年。その記憶は青年が暗殺される前、前代未聞の最年少軍官として、国の英雄としてあり続けた時のまま止まっている。 だから、青年は知らない。 ――彼の死後、彼に関するある一つの事実、彼の中を流れる血によって、英雄としての功績はおろか、その存在さえ抹消されている事を。

華夏の勇者 @battle_atom

「……俺はもともと変わらないよ、【英雄】であり続けるんだ」 形を崩し、ただの液体と化する男の姿を見て、青年は小さく呟いた。 傷ついた方の足で、軽く、地面を二、三度叩く。 そこは盛り上がり、青年の足元からはやや小柄な戦車が現れた。

華夏の勇者 @battle_atom

その上に立った状態になった青年は、自分が撃った彼女を見下ろすようにして、新たに拳銃を構え、引き金を引いた。 その目標は、彼女の額。最後の最後で、青年の顔は再び仮面を被る。 年相応の、穏やかな笑顔だった。 「…そうすれば、みんなは俺を愛してくれるだろ？」

グラナート @ktmyng

「変われない男が、こーして『変われないように』『変えていく』ってのも、よく解らねえな」 皮肉のような言葉は、溶けた男には聞こえていないだろう。もう自分は動けそうにない。 しゅるしゅると縮んでいくハサミを見ても、どうやら此処までのようだ。 振るえる腕、なんとか一本ナイフを取り出す。

グラナート @ktmyng

悪役っていうのは、『悪足掻き』してこそだろうと。 霞む視界に映る青年にそれを投げた。手を離す直前には、『肥大』と唱えることも忘れずに。 「そうやって自惚れてろ、独りで」 穏やかな笑顔に対し、にやりと意地悪く笑む。掠れたその言葉は、青年に届いたかは知らない。

グラナート @ktmyng

自分の投げた銀が、霞む視界に広がるのをなんとなく捉えて、それを最期に意識は途絶える。 銃弾が、狙い通り額を撃ち抜いたからだ。 けれど身体が、腕が床に再び落ちる音はしない。そのままぱきぱきと石化は進み、 ――動かなく、なった。

華夏の勇者 @battle_atom

「…独りなんかじゃないさ、だって俺には愛しき国と、国民がいるからね」 最後に投げられたナイフは避けきれずに肩口に大きく突き刺さった。 巨大な刃は肺を巻き込んでいないだろうか、心なしか呼吸が苦しくなってきた気がする、と青年はその場に膝を落とした。

華夏の勇者 @battle_atom

液体の波は地面を覆い、戦車の下の方をも石と化していく。 そんな光景の中、美しい石像と化した彼女を見て、青年はほぅ、と小さく溜息をついた。 「…父親が野蛮人でもさぁ、母親が腐れ売女でもさぁ、……案外世界ってものは受け入れてくれるもんだよ、それが【正義】である限りはね」

華夏の勇者 @battle_atom

――みんなみんな、俺を必要としてくれる、英雄だと言って、慕ってくれるんだ。 仮面を張り付けたまま、穏やかにそう告げる青年の姿は、石となった彼らの目には、どのように映るのだろうか。 「…よかった、俺はまだ、ヒーローだ」 抱えた膝に顔を埋めて、青年は息を吐き出す。

華夏の勇者 @battle_atom

汚い血を漏らし過ぎたせいか、少し貧血を起こしている様だ。 苦しい、と漏らした声は、嘘で塗り固め、隠し続けた青年の本心か。 ゆるく目を伏せ、座り込んだまま青年はただ【扉】が現れるのを待った。 「…苦しいな………まるで、水の中にいるみたいだ」

【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

《以上をもちまして……第三四公演は終演致しました…… どなた様もお忘れ物のございませんよう……いま一度、お手回り品をお確かめ下さいませ…… 本日はご来場頂き……まことに有難うございました…》

【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

コーエンはシューエンいたしましたー！ ジカイコーエンヨテーはミテーです！ −−赤く沸き立つ穴一つ ふふふふふ！ 愚かな演者に！くだらない演劇に！ −−投げ入れられた箱たちは 惜しみない拍手をお贈りください！ −−満たす糧になりえただろうか？ あはははははははははっ！