【邪悪の樹――三ツ牙】第一戦闘フェイズ――第五の樹

星の教会
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【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

【第一戦闘フェイズ——第五の樹】 『引き裂く者』より『貪欲(@Ja3_donyoku)』 『断ち切る者』より『拒絶(@rripsi3rd)』 星が輝いている。幾万の星が輝き続けている。途方も無く広い地に、教会だけが明かりを灯して建っている。……月は見えない。 #邪悪の樹

2015-08-06 20:10:55
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

扉から歩む『貪欲』。何かの光点が瞬いている。 「すごい、空だ。……星が、見える」 どれぐらいの時間、空を忘れていただろう。 「星空が、美しい」 空に手を翳す褐色赤髪の女性。

2015-08-07 21:06:18
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

ふと、瞳孔が小さく開いた。 私は獣を狩る代わりに、金を得ていた。 いいや、私は。 「魔物を狩って、それのお礼を、潰れる寸前まで払わせていた  ひどく卑怯な人間だったのね」 それらの記憶が、実体験として身体に帰って来た。

2015-08-07 21:06:23
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

「誰か、いるのかしら」 競うべき相手が、いるはずだ。まだ、距離は遠いのか。 あるいは近いのか。そこを探る。 「来なさい」 光塵となって消え行く扉が蹴破られるようにして、『棍棒』が貪欲の手におさまる。 「お前に、鮮度のいい血を吸わせてあげる」 貪欲は、光を蔵める力の弱い目を細めた。

2015-08-07 21:06:29
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

乾いた風が頬を撫で、白金の髪を遊ばせる。青年は空を見上げながら屋敷で読んだ書の記述を思い起こし、少なくともこの『外』は『夜』で、更に言うならば『夏』ではないらしいと見当をつけた。頭上に世界中の星屑を撒いて散りばめて、とは何処の詩人が唄ったものだっただろうか。

2015-08-07 22:25:36
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

頭を振って周囲を見渡す。近くに灯りのともった建物があった。おそらくは神、あるいはそれに準ずるものに祈りを捧げる場所。足元にあった石を拾い、おもむろに投げる。緩く弧を描いたそれは、窓に当たって小さな音を立てた。中に人がいれば、気付いて外に出てくるだろう。

2015-08-07 22:26:00
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

「……逃げてくれ」 第三者がいるなら、守らなければならない。守りきれないならば、せめて逃がさなければならない。巻き込むわけには、いかない。 視界の隅に認めた人影は、『第三者』では、ないだろう。

2015-08-07 22:26:17
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

杖の音を極力潜め、距離を詰めていく。やがて明確になる姿に、青年は目をすがめた。褐色の肌、屋敷で時折見た茜空に似た瞳。何処かで見た、と直感し、大広間の肖像画だ、と思い当たる。相手がこちらに顔を向ける間合いで、口を開く。 「こんばんは。あなたが……いいや、お前が、僕の相手?」

2015-08-07 22:26:59
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

敵に敬意は払わない。 「戦いを望まないなら降伏してほしい。無闇に危害を加えることはない。ただし」 敵に情けはかけない。 「侵略や闘争を望むなら、容赦はしない」 敵が、自分と同じだとは、思ってはいけない。 杖を強く握る仕草は、戦い慣れていない者が震えを押し殺すように、映るだろうか。

2015-08-07 22:27:32
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

ガラスの割れる音に、鋭敏に反応して教会を向く。 「……だれ」 小さく虚空に尋ねようとして、その音に、知っているどの声質よりも低音の声が重なっていた。 びっくりして肩を大きく跳ねたが、すぐに呼吸を落ち着かせる。

2015-08-07 23:30:09
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

相手の者が話し終えるのを待ってから、口を開いた。 「薄い金の髪、血の瞳。見前がいいのですね  ……この素敵な夜は、私達の出会いを祝福しています  月がないのは、どのような無道もお許しになられるからですね」 なんて、と微笑した。

2015-08-07 23:30:14
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

言の葉はそう紡がれても、目元は更に険しくなる。 「――いかにも。私があなたの敵であり、私があなたという「心」ある生き物を追い詰め堪能すること。それが今回の主旨というものでしょう」 違いますか、と空いている手を差し向けて、問う。

2015-08-07 23:30:18
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

紡がれた声音は、ある種の楽器のように青年には捉えられた。彼がこれまで声と知覚してきたものには多かれ少なかれ含まれていたざらつきが全くない、高い声。 「それはどうも。血の瞳、と言うならば、そちらは夕暮れの日の色だ。美しさなら劣らないだろう」

2015-08-08 00:32:19
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

賛美は本心、しかし眉根が寄っていることを差し引けば、どうしてもおざなりに響くだろう。相手の微笑に反するように息をつく。 「違わない、んだろうな。戦いも褒美も要らないと思っている僕のほうが、きっと異端だ。でも」 そのことこそが、【拒絶】には認めがたい。

2015-08-08 00:32:35
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

出迎えてくれさえすればいいと言った自分を否定しなかった存在こそ同胞なのだから、尚更だ。 「追い詰める気で来るなら、迎え撃とう。近づき無道を働くというなら」 向けられた手は取らない。代わるように、杖で指し示すようにして。

2015-08-08 00:32:53
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

「――墜ちろ」 睨み、呟く。相手が動かなければ、無理矢理に手を押さえつけられ下げさせられるような感覚を覚えるだろう。咄嗟に何かを予感し手を引くならば、一瞬の違和感で済むかもしれない。

2015-08-08 00:33:04
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

この人は、楽しませてくれる。一つ、確信を持った。 棍棒が、おかしな動きをした。動揺するも、それが禍罪だと察するには遅すぎた。

2015-08-08 11:11:51
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

棍棒をぶんと後方に振る。呪縛が解けたような気はした。 だが、空いたもう一方の手が地面に近づき、僅かな空隙を残すまで。 「傲慢な禍罪ですこと」 女は硬貨を膝の布地から放った。 銅の色のそれが、地面と手の隙間にねじ込まれる。

2015-08-08 11:11:56
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

棍棒をかかげながら、土下座している貪欲を自覚する。 だが、それは一瞬のことだ。 銅貨がその呪縛を徐々に押し上げて、屈した膝を立ち上がらせる。

2015-08-08 11:12:01
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

貪欲の禍罪は、『巻上』。 放った『仲間』(コイン)を、貪欲が一斉に『収穫』する。 つまり、投擲と回収の二つを合わせた禍罪だ。 「見ての通りだ。投擲したコインを、私の頭頂部に巻上げている」 そんな説明を、堂々とした。 嘘は苦手というよりも、ここで確実に仕留めるという宣告、に近い。

2015-08-08 11:12:08
『貪欲』アプリストス @Ja3_donyoku

そうして、呪縛に抵抗しながら、前かがみぐらいまでは持ち直した。 「……お前の禍罪が攻略された。どんな気持ちだい?」 まさかこれが禍罪の全景といわないだろうな、と確認する意味がある、挑発。 だが、実際、動作が制約下にあり、前かがみなので隙は多分にある。

2015-08-08 11:12:15
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

「傲慢、か」 呟いた唇が、不自然に歪んだ。 「それを賛美ととれる性格をしていれば、僕はここにはいなかったな」 不遜に笑い全てを見下ろすことが出来れば。命を屈服させることこそ己の業だと言えれば。

2015-08-08 13:39:07
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

相手が地面に手をつく刹那、銅貨を投げたことを知覚する。姿勢を立て直しながら揺らぐことなく宣告する、怯えも畏れも知らない凛とした姿に舌打ちをした。自分の禍罪はまだ解いていない。しかし拮抗している、このままでは押し負ける。

2015-08-08 13:39:49
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

今、禍罪の範囲にあるのは相手の腕だけだ、つまり……思考を、打ち消す。それは戦闘ではない、拷問だ。相手の挑発に煽られたゆえの策だと、彼はまだ自覚していない。そして浮かんだ代案のまま、距離を詰める。相手には知りようはないだろうが、杖が禍罪の相棒と化した今、館での速度より幾分か速い。

2015-08-08 13:40:03
【拒絶(アポーリプシー)】 @rripsi3rd

片手の杖は相手に向けたまま、空いた手で相手の腹部を殴る構えを取る。容易に見切れる動作だろう。しかし【拒絶】は、殴る直前に、杖の側の拳を強く握る。 「――墜とすだけしか知らない愚者だと、僕を侮るな……っ」

2015-08-08 13:40:20