「いちいち人数分盛りつけるの面倒だろ」ルイナーは肉と野菜を掻き込むようにして食べている。スーサイドは呆れ顔でコロナをあおった。「ほぼ鍋パーティじゃねえか……」「まあ、食っときなよ」フィルギアはハシでスーサイドを指した。「オショガツなんだからさ」 2
2016-01-06 12:21:17アナイアレイターがルイナーに言う。「モチ焼かなかったのかよ」「焼いてから入れるのか!」会話を聞いたフィルギアは相変わらず笑っている。スーサイドは遅れて鍋の中身を椀へ取った。「オゾーニか……」刻んだ根菜類がよく煮えてショーユの色に染まっていた。汁は溶けたモチで濁っている。 3
2016-01-06 12:23:26「意外と旨いな、鍋」「オゾーニだってルイナー=サンが言ってる」「オゾーニだ」「ビールに合う」大の男が4人で一斉にオゾーニをつつく。ほどなく鍋の中身は汁とわずかな具を残すのみとなった。「アー……食った……」満足しきった空気の中、ルイナーは言った。「締めのウドン入れていいか」 4
2016-01-06 12:26:008)ネオサイタマ市内某所/サワタリ研究員
四畳半( @ShiDa4643 )さんからリクエストいただいていた、サワタリ研究員とオゾーニのやつを4ツイートほどなげます。ずいぶんとお待たせしました。
2016-01-11 22:47:08「寒い、寒い……」研究員は肩を縮めて台所へ向かう。コタツの温もりを振り切るのは並大抵のことではなかったが、オゾーニぐらい食べておかねばならぬ。節目に食べる物には何らかの意味があるのだ。詳しくは知らないが。オゾーニはいわばオショガツのアイコンである。 1
2016-01-11 22:48:36鍋に湯を沸かし、合成カツオ粉末を加える。モチは隣のコンロで焼く。冷凍庫から鶏肉と冷凍野菜を出して鍋の中へ。具が煮えたら焼けたモチを入れて出来上がりだ。簡単でよい。研究員はドンブリに移したオゾーニをコタツへ運んだ。コタツに足を入れ、オゾーニを啜って一息つく。「フー……」 2
2016-01-11 22:49:28菜物と鶏肉のオゾーニには「名を上げる」という意味が込められているが、メガコーポの末端サラリマンである彼にはそのような予定も見込みも実際無かった。とはいえ多くの人々がそうであるように、彼もまた、節目に食べる料理に込められた意味を気にする事はなかった。 3
2016-01-11 22:51:47汁はケミカルなカツオ味、野菜は煮えすぎだが、手早く作ったにしては悪くない。コタツの向こうでは古いテレビが色彩を狂わせ昼のニュースを映している。新年の休暇は残り十数時間となった。研究員は空のドンブリを置き、休暇の残り半分を穏やかに過ごすべくコタツに潜り込んで目を閉じた。 4
2016-01-11 22:54:31