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NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ハァーッ……!ハァーッ……!」ニンジャスレイヤーはザンシンを決めると、ついに視界を揺るがせ……その場で力無く片膝をついた。「ハァーッ……ハァーッ……ハァーッ……」そして頭の重みすらも支えきれぬように後ろに倒れ、全身を、無防備に甲板上へと投げ出した。1
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もはや甲板上に、彼をカイシャクする者はなかった。殺し尽したからだ。赤黒の死神は五体を投げだし、ただ、空を見上げていた。彼の身体が取りうる動作は、とにかく今はただ、それだけだった。 2
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かつて彼はアマクダリ・セクトの陰謀を阻止せんと挑み、そして敗れた。彼はそれを己の弱さが招いた結末として捉えていた。而してこの10月10日。マジェスティ、ブラックロータス、メフィストフェレス、ジャスティス、マスターマインド、ハーヴェスター。「12人」のうち6人が既に倒れた。 3
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ハーヴェスターは艦砲射撃の爆炎に呑まれ洋上に消えた。他の五人は直接のカラテによって爆発四散せしめた。彼らは皆、ネオサイタマの表社会をリードする名士でもあった。そこには現職の官房長官も含まれていたのだ。社会はタダでは済むまい。それはおよそ人ひとりでは負いきれぬ責任だ。 4
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負傷と極度の疲労によって途絶えがちなニューロンが脳信号のオルゴールを鳴らす。彼は遥か遠く、ネオサイタマに在る胡乱なセンセイを微かに想起した。それから、同じくネオサイタマに在る胡乱な同盟相手を……その男と、かつてのアマクダリ・セクトとのイクサの折にかわした協定を。 5
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これは実際、危険な状態だ。死に際のニューロン加速……ソーマト・リコール現象に入りかかっている。ニンジャスレイヤーは抗おうとする。足音が近づいてくる。ためらいがちな足音が。ニンジャの足運びではない。ナンシーでもない。ニンジャスレイヤーの意識は途絶えた。 6
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【ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101517:ニチョーム・ウォー】
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日本国ネオサイタマネオカブキチョ、ニチョーム・ストリート。官製バリケードと検問システムによって囲われ、排他的空気の圧迫によって緩やかに自壊するかと思われたこの小さな街は、10月10日の日の出以降、がらりとその様相を変えていた。7
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ハイデッカー秩序によって住人を閉じ込めるべく設置された筈の黒壁であったが、今やその壁面はアクリルスプレーの諧謔的グラフィティ群によって汚され果てた挙句、更にその上を悪魔じみた鉄条網が縦横無尽に覆い、検問車両の残骸もろともに強固に繋ぎ止めて、外敵を排除する防壁と化した。 8
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防壁を覆う鉄条網は魔王の居城を護る有毒の茨じみて極めて恐ろしいシルエットを形成していた。見た目だけではなかった。ハイデッカーのオナタカミ・トルーパーズは状況の変化に対応すべく、実際、何度かこの壁への攻撃、突破を試みた。結果は悲惨である。近づいた者は引き裂かれ、砕かれ、呑まれた。9
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鉄条網群は壁からニチョームの路地に根を張り、伝い、街の中で最も高い建物であるヤグラ337ビルディングに収束している。鉄条網はそのままビルディングを登り、最上階の展望部……気に入りの布を被せたソファーにふんぞりかえる大柄なニンジャの足元に繋がっている。彼の名はアナイアレイター。10
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アナイアレイターはニンジャである。それも並のニンジャソウル憑依者ではない。彼に融合するのはいにしえのニンジャ六騎士の一人、フマー・ニンジャであり、街全体を囲む危険な「生ける壁」は、古代ニンジャ大英雄ならばこそのワザマエである。宿主にそれを制御しきる資質があれば、なお良かった。11
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ソファにもたれかかる大男の顔を間近で覗き込めば、それがリラックスからは程遠い状態である事がわかった事だろう。アナイアレイターの金色の瞳はカッと見開かれて虚空を睨み据え、震える手が卓上のコロナ・ビールに時折伸びては、浴びるように喉に流し込む。その心中は窺い知れない。 12
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魔城めいたそのシルエットは実際ウィアードであり、近隣の高台では、事情を知らぬ白塗りの青年達が手元の黒い鬼瓦モッド望遠鏡を交互に覗き込んでは「ゴシック」「……ゴシック」と呟き合うなどしていた。半ば本能的なその尊敬の念は、ある意味では的を射ていた。ニチョームは疎外者の最後の砦だ。13
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そしてこのヤグラ773の2階に、自治会設置の電算拠点が位置する。UNIX、LAN、町内の有線監視カメラ網の映像も、ここに集まる。即ちこのヤグラ773がニチョームの物理的・電子的な最重要の要という事だ。しかしながら……「フー」ネザークイーンはエンジニアを振り返り、溜息をつく。14
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「とりあえず問題ないってことね?」「ダイジョブです」エンジニアは汗を拭った。床や壁に焦げ跡がある。UNIXシステムのうち一基が突如爆発し、彼らの肝を冷やしたのだ。卓上のデジタル時計は「15時17分」の表示のまま、時を刻めなくなっていた。 15
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「どっちにせよUNIXの一つ二つ爆発したところで今更」ネザークイーンは歪んだ笑顔を作った。そして華奢なサイバネ腕で車椅子を漕ぎ、隣室に戻った。「……」隣室で待たされていた「客」は伏せていた目を上げ、ネザークイーンを見た。「ダイジョブだったか」「ええ、平気よ。それよりアータよ」16
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「俺か?」どこか親しみやすい顔立ちの男は己を反射的に指さした。「いや、俺は平気……」「そうでしょうとも」ネザークイーンは頷いた。「それはいいんだけど、それじゃ、いよいよ説明して頂戴ね。見ての通り、今は有事も有事なの」「本当に済まなかったよ。俺もここの邪魔をしようとは……」 17
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「幸いそうはならなかったわ。邪魔には」ネザークイーンは低く言い、この銀色装束の男を見た。どちらもニンジャである。「だけど、済まないと思うなら、アタシ達に力を貸してほしい。たいした貸し借りもないけどね……」「その、有事ってやつの説明も頼む」男は言った。シルバーキーが彼の名だ。18
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「今はイクサの真っ最中」ネザークイーンが言った。そして付け加えた。「……絶望的な」「ああ。何のインガか、『状況』ッてやつに投げ込まれるのは慣れてる。コルセアのおっさんも、舟の上でそんなような事を言ってやがったし」シルバーキーは謎めいて言った。「イクサに間に合わせるッてよ」 19
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「コルセア?それは奇術師か何か?UNIXを爆発させて、アータをエントリーさせたって?」ネザークイーンはシルバーキーを睨んだが、やがて溜息をついた。「ンンン……冗談と状況の切り分けが……」「俺はふざけてない」シルバーキーは言った。「だが説明が難しい」「オーケイ。呑み込む……わ」20
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まずシルバーキーは時事的問題の知識を驚くほどに持ち合わせておらず……それについては彼自身も困惑していた……状況説明を始めるにはだいぶ遡って始める必要があった。だがネザークイーンは辛抱強く、短く、できる限り的を絞ってシルバーキーに語って聞かせた。「キてるな」が彼の第一声だった。21
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ネザークイーンは彼を制御室に連れて行った。監視カメラ網のモニタが彼らを出迎えた。「奴らの手から奪い取ってやった。壁と同様にね」ネザークイーンは言った。「日の出と共に、旗が上がった……旗が」天を仰ぎ、続けた。「その直後、腐れハイデッカーの統制が乱れたの。アタシらは打って出た」22
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「アタシらは監視員連中をブチのめし、検問所を破壊し、クソ車両をひっくり返した。それをまとめてひっくるめて、ジツで覆って要塞にした。ファックしてやったの。奴らは大慌て。ニチョームのインフラ遮断を試みたけど、地下水道はサヴァイヴァー・ドージョーが掌握済。電気を再び引き込んだ」23
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2015年5月27日
ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10101517:ニチョーム・ウォー #2 http://togetter.com/li/827020
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