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「生かされているとはいうけど、そんなこと頼んだ覚えはない。というか助けられた覚え自体ない 実際に人から施しを受けられるなら誰も自殺などしたりしない」 『おやおや』 登山男はおどけるように目を丸くした。 岬23
2014-01-31 10:32:53『まるであなた自身がこれから自殺せんとするような物言いですね』 「・・・」 『もしかしてやはりこれからおやりになるおつもりで?』 「違う!」 引きこもりはわめいた。 岬24
2014-01-31 10:33:44自殺者をさげすむこのような男に自らの自殺意思を悟られてはならぬと引きこもりは危機感を覚えた。 自分の最後の時間を彼にに蹂躙されるのは我慢ならなかった。 岬25
2014-01-31 10:35:04『そのわりにずいぶんとこだわりがあられるようですが?』 「俺の友人が自殺したんだ」 『ほお』 「・・・去年死んだんだ」 『ほお』 岬26
2014-01-31 10:36:15引きこもりに友人など存在しようもないことは言うまでもない。 しかるに彼は嘘をついたのだ。 自分の尊厳を守るために嘘をついたのであった。 岬27
2014-01-31 10:42:39「あれは一人苦しんでいた。誰からの理解も支援も受けられることなく 絶えず疎まれ嫌われ否定され、あらゆるコミュニティからはぶられ精神的に 異常をきたし、」 岬28
2014-01-31 10:43:39『ほお』 「それで泣く泣く命を絶ったのだ。あれだって本当は死にたくなどなかったはずなのに そういう人間をあんたは馬鹿にするの?罰当たりだと言ってまだ非難するの?」 引きこもりは思いのたけを息荒くまくし立て、登山男を圧倒した。 岬30
2014-01-31 10:48:05これは実際自殺にに直面した者だけが吐露できる哀しい泣き声であるのだと引きこもりは自負した。 そうである以上浮ついた理想論に狂う目の前の宗教じみた自然崇拝者ごときに反論の余地などあろうはずもなかった。 岬31
2014-01-31 10:50:57引きこもりは勢いあまり興奮しすぎたことをはじつつも、心の奥底でひそかに溜飲を下げた。 『非難しますね』 しかしながら登山男は顔色一つ変えることなくそう言ってのけた。 岬32
2014-01-31 10:51:55『どうのような事情があろうが自殺は悪です。お友達にはいろいろとお辛い事情もおありになったかと ようですが、少なくともその死に至る年まで生き延びることができていたのは、常に誰かしら、何かしらの 助けと支えがあっての事なのです。ご友人がそれを認識できていたか否かにかかわらずです』
2014-01-31 10:52:57「友人は誰からも助けてはもらえなかった!」 引きこもりは喉を枯らして叫んだ。 「本当に支えがあったというなら、さっきも言ったとおりあいつは死ぬことなんてなかった! 死なずにすんだんだ!」 岬34
2014-01-31 10:54:24「俺は、その当時、あいつがそこまで追い詰められているとは知らなかったんだ」 『ほお』 「なんにせよ、あいつだって生きたかったんだ。でも無理だった」 岬36
2014-01-31 10:56:35「そのままだともう 飢えて死ぬしかなくなるという未来に確信が持てたから、泣く泣く死を選択したんだ。 ほんとうにほんとうに死にたくなんてなかったんだ。それをどうして事情も知らない あんたなんかに貶められなくてはならないんだ」 岬37
2014-01-31 10:57:07『本当に無理だったんですか?』 「は?」 『本当に生きるの無理だったんですか?』 「は?」 『単純に努力しなかっただけなのではないですか?』 岬38
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