ホームレスには生きる資格がないので殺処分すべきだと主張する引きこもりについて２

アドリア海 @keizi80

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「別に僕が規定したわけではない。したわけではなくホームレスだなんて君、 一般的には生きる価値がない、殺されてしまったほうがいいと そう広く認識され、吹聴されているではないか」 岬９３

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「誰が規定したかという問いに あえて答えるのなら社会だろうね。社会そのものが彼らの生存権を否定しているのだよ」 『あなたの言うホームレスとは具体的にどういう人のことですか』 岬９４

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「どういう人って、おかしなことを聞く人間がいるものだ。ホームレスにそういくつも 種類があるわけないだろう。ホームレスはホームレス、乞食だ。家を持てずに 露天に寝て暮らす最下層の畜生のことだ」 岬９５

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『では家を持てずに寝て暮らす人間はホームレスであり同時に生きる資格がないということなのですね』 「まあそうだろうね」 『では家をもてるのに野外で寝て暮らす人間がいればそれはホームレスではなく、また生きる 資格はあるということになるのですか？』 岬９６

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「はあ？」 きこもりはこいつはいったい何を言っているのだろうかと登山男をぼんやり見据えた。 いよいよ頭がおかしいに相違ない。 岬９７

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「家をもてるのに野外で寝て暮らす人間なんているわけないに決まっているではないか。 有り得ない仮定の話には付き合えないよ」 『なぜ有り得ないのです？』 岬９８

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登山男は肩からリュックを下ろすと、前かがみになって引きこもりの顔を覗き込んだ。 背は引きこもりよりも一段高く、やせてはいるが山歩きで鍛えられたものと考えられる 引き締まった体軸には威圧感があった 岬９９

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いよいよやる気かと引きこもりは頬を引きつらせながら後ずさった。 登山男はその巨大な登山リュックを開くと、中からなにやらビニール製のごわごわしたものを取り出した。 テントであった。 岬１００

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『私は昨日あそこの山中にてこのテントで野宿していました。ちなみに私は家を持っています。 安い借家ですが雨露を確保する場所は持っています。にもかかわらず私は野外で寝たのです。 私はホームレスですか？』 岬１０１

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「・・・・・」 『生きる資格がないのですか？』 「・・・・・」 『であればさっさと殺したらいかがです？』 「・・・・・」 岬１０２

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『どうしましたなぜ殺さないのです殺せばいいでしょうさあさあ』 「ふふ・・・」 引きこもりは冷笑した。 再度虚勢を張ることで自分の身を守ろうとした。 岬１０３

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「君、それは違う。君がしたことはあくまでアウトドア活動であって、ホームレスになったわけではないではないか」 『ではあなたのいうホームレスが山にテントを張って生活していたらどうなるのです？ 』 岬１０４

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『彼らの属性はホームレスから登山家に変貌し、生きる資格を回復するのですか？』 「そんなことはない、ホームレスはどうあってもホームレスだ」 岬１０５

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『なぜです矛盾している。かたや山で野営した私の行為をただの登山の一環と評価し、 かたや山にテントを張るホームレスをあくまでホームレスと規定し続けるその差別の所以は何です？』 岬１０６

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「なにってわからないやつだな。いいかいさっきも言ったようにホームレスというのは 雨露しのぐ居場所を確保する経済力すら持ちえず、権利もなく他者の土地で寝泊りする 不貞なやからのことだ」 『私も国有地で勝手に寝泊りしましたが』 岬１０７

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「だから君のはあくまで趣味の登山ではないか」 『ではホームレスが趣味の登山であると称して山で寝泊りしていたらどうなるのですか』 岬１０８

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「だから君には家を持つだけの財力があるのだろう？実際借家に暮らしている。 日銭も稼げずやむにやまれず地を這う人間とはわけが違う。逆にそんな人間が趣味で 野営しているなどと言っても誰に相手にされるのだね」 岬１０９

アドリア海 @keizi80

「みなそいつをやはりホームレスだとみなす だろうよ」 『ではお金なのですか？』 登山男は丸い丸い黒目をいっぱいに見開いた。 『結局あなたはその経済力によって人の生存権に線引きをするのですか？』 岬１１０