ゴリラスレイヤー

碌星らせん（ろくせい・らせん） @dddrill

それがゴリラソウルの憑依によるものだと判明したのは、ずっと後になってからだった。ゴリラスレイヤーもまた、ゴリラによって鉱山の落盤事故に遭った時、ゴリラソウルに憑依された。それが、全ての始まりだった。 22

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ゴリラ憑依者達は、大きく2つに分かれた。ひとつは、ゴリットマン達の様に、人間としての残滓にしがみつく者。もうひとつは、ゴリラとして生きる者。後者の中でも、リアルゴリラを師として得られたゴリラスレイヤーは幸運であった。 23

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ゴリラスレイヤーは最後のリアルゴリラ……即ち生まれながらのゴリラであるゴリラ・ゲンドーソーからゴリラとして生きる術を学んだ。それはゴリラとしての全てだ。 24

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……そうして、彼はゴリラスレイヤーとなった。 25

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永遠にも等しい一瞬の沈黙の後。見つめ合っていたゴリラスレイヤーとゴリットマンはレスリングめいて組み合う。互いのゴリラ腕力とゴリラ腕力が激突し、トロッコが異常振動する。 26

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「ギャアオオオオオ！」「ギャオオオオオ！」ゴリラスレイヤーとゴリットマンは激しい威嚇の声を上げ、組み合い続けながらも互いに噛み付こうとする。強靭なゴリラ咀嚼力はそれ自体が強力な武器となるのだ。 27

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互いに譲らぬゴリラスレイヤーとゴリットマンの攻防は膠着を迎えつつあった。いや、より正確には、徐々にではあるが体躯で勝るゴリットマンが優勢になりつつある。だが、そこへ更に亂入する者……否、老ゴリラが一匹！ 28

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そのゴリラは体を高速回転させるヘリコプターめいた飛行を終え、トロッコへと着地した。突如現れた第三ゴリラにゴリットマンのゴリラ腕力が一瞬怯みを見せる。これは一体如何なる術か？それはゴリラ……真のゴリラのみぞ知る所であろう。 29

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年老いたゴリラはゆっくりと姿勢を整え、ゴリラ特有のナックルウォーク姿勢を取った。彼こそは、最後のリアルゴリラ。即ちゴリラ・ゴリラ・ゴリラという種族最後の生き残り。ゴリラ・ゲンドーソーである！ 30

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「ウホウホ」ゴリラ・ゲンドーソーは両者の間に割って入り、二人の顔を見た。仲裁の構えである。そして、より強者であるゴリラ・ゲンドーソーが現れた時点で、ゴリットマンの標的はゴリラ・ゲンドーソーへとシフトした。これは本能的なものだ。だがその時！ 31

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いかな精霊の悪戯か、トロッコが急カーブへと差し掛かった！ゴリラスレイヤーとゴリットマンは耐える。しかし、仲裁のため構えを解いていた老ゴリラは……トロッコから振り落とされるゴリラ・ゲンドーソー！このままゴリラ轢殺死体と成ってしまうのか!? 32

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「ウオォーッ!!」だが、最後のリアルゴリラはゴリラ運動神経により体勢立て直す！トロッコをゴリラ腕力により強制停止させようというのだ！だがそれも虚しく、猛牛めいて突進するトロッコの下敷きとなり、跳ね飛ばされる！ヘリめいた飛行も叶わない！ 33

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「ウホ！ウホホ！ウ……ホ……」ゴリラ・ゲンドーソーはそう言い残し、落下した。リアルゴリラのゴリラ腕力をもってしても、トロッコを止めることは叶わなかったのである。 34

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「センセイーー！」ゴリラスレイヤーには、ゴリラ・ゲンドーソーの言葉が確かに聞こえた。そして、その後に続く情報も。（……苦労のない 穴に さようなら）嘗て、伝説上のゴリラが死について語ったとされる言葉である。 35

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（……センセイ）ゴリラスレイヤーは人知れず涙する。センセイが自らを慮った事を知ったからだ。心に穴を開けるな。苦しむな。そう伝えている。リアルゴリラの知能は並みの人間を凌駕する。この程度造作も無いのだろう。 36

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今のゴリラスレイヤーにとっては、ゴリラ・ゲンドーソーこそが唯一の家族と言える存在であった。そして、ゴリラスレイヤーは一人になった。それでも戦わねばならない。「……ゴリラ、殺すべし」ゴリラスレイヤーはゴリットマンに向け、ただ静かにそう言った。 37

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そして、「……オヌシも終わりだ、ゴリットマン。フルーツ・シンジケートはたった今潰れた」ゴリラ・ゲンドーソーが最期に齎した情報を、口にした。 38

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【GORILLA SLAER】

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あらすじ：ゴリラスレイヤーは師であるゴリラ・ゲンドーソーの尊い犠牲を前に、ゴリラに対する殺意を新たにする。そして、ゴリットマンにこう告げた。「シンジケートは崩壊した」と……

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【GORILLA SLAER】

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「……オヌシも終わりだ、ゴリットマン。フルーツ・シンジケートはたった今潰れた」そう伝えられたゴリットマンの心に、驚きは無かった。 39

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地軸の変動により気候が変わり、生態系が破壊されたこの国で、もはやバナナの収穫は不可能であった。それでも、十年は持ち堪えた。それはゴリットマンをはじめとするゴリラ憑依者達の力だ。 40

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だが、それで状況が好転する筈も無かった。ゴリラはバナナ無しでは生きられないのだから。 41

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師を失ったゴリラスレイヤー。シンジケートという群れを失ったゴリットマン。共に、彼らを待つ群れはもうない。ここに居るのはただ、もはや人でも無く、ゴリラとしても生きられない中途半端な存在が二人。 42

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トロッコは終点の建物へと到達した。そこは巨大な廃墟であった。否、これは廃坑だ。二人が乗っていたのは資源搬出用高速トロッコ鉄道だったのである。尊い犠牲を出しつつも、ゴリラスレイヤーはゴリットマンを策に嵌めた形だ。 43