カー&島田荘司を愛する北アイルランド出身のノワール作家
「アイルランド人ノワール作家がノワールと密室物を融合させた新作長編を発表したが、そのきっかけは『占星術殺人事件』を読んだことだった」 東アジアには島田荘司ファンの作家も多いですが、まさかアイルランド人作家が『占星術殺人事件』の影響で本格ミステリを書く、なんてことが起こるとは。
2014-02-09 07:29:15ノワール作家のエイドリアン・マッキンティーはアイルランドの新聞に載ったインタビュー記事で、新作長編は『占星術殺人事件』を読んだのをきっかけにして生まれたものだと話しています。(★リンク先、オリエント急行とモルグ街のネタばれあり★) http://t.co/eM1XzpBsR8
2014-02-09 07:30:03それによれば、マッキンティーは少年時代にクリスティーの『オリエント急行の殺人』で本格ミステリの魅力を知り、図書館員が薦めてくれたジョン・ディクスン・カーに夢中になったが、その後は読書傾向が変わっていったとのこと。そのあとのところをざっと訳してみます。
2014-02-09 07:31:12「その後はノワール小説を読むようになり、密室ミステリは読まなくなってしまいました。でも、数年前に『占星術殺人事件』という密室ミステリを読んで、それがすごく気に入って……。それでそれ以来私は、《ノワール小説の設定内で密室ミステリを書くことは可能だろうか》と考えるようになりました」
2014-02-09 07:32:05そして書かれたのが今年刊行された『In the Morning I'll Be Gone』というわけです。ちなみにこの作品はダフィー刑事を主人公とするノワール小説三部作の完結編であるらしく、その完結編が、『占星術殺人事件』の影響で突如密室物になってしまった…ということになります。
2014-02-09 07:32:51補足。先ほど訳した箇所の続きのところでマッキンティーは、よい本格ミステリとは「trickがない作品」だと言っています。英語のtrickに日本語の「トリック」のような意味はなく、これはいかさまとか欺瞞のことです。つまり、読者に対して嘘の記述をしないのがよい本格だ、ぐらいの意味です。
2014-02-09 07:33:29その後、英訳改訂版『占星術殺人事件』の刊行が決定
英amazonで『占星術殺人事件』英訳版(2015年9月)の「この商品をチェックした人はこんな商品も……」を見ると、カーの『三つの棺』とアルテの『七番目の仮説』が並んでいる。やはりガーディアン紙に載った記事 theguardian.com/books/2014/jan… の影響は大きいらしい。
2015-01-20 23:56:19>>第1位はカーの『三つの棺』、第2位は島田荘司『占星術殺人事件』、第3位はポール・アルテ『七番目の仮説』。 殊能先生が見たら笑うか泣くかしそうなランキングだ
2016-08-07 19:57:43@sakaetakashi051 エイドリアン・マッキンティー選のこのランキングが英国『ガーディアン』紙に載ったのが編集者の目に留まって、英訳『占星術殺人事件』のイギリスでの刊行につながったのだろうと島田先生は考えているようです。(『本格ミステリー・ワールド2016』巻頭言参照)
2016-08-07 20:48:28@Colorless_Ideas なんというか、バタフライ効果というか、1ファンが何とコメントしていいのかわからないような壮大な物語を感じます。
2016-08-07 21:00:08@sakaetakashi051 『占星術殺人事件』のイギリスでの刊行が決まった際、Twitterでマッキンティー氏に話しかけたことがあるんですが、「何年もの間、『占星術殺人事件』のことをしつこく薦め回ってきたけど、それがやっと報われた」みたいなことをおっしゃっていました。
2016-08-07 20:56:12@adrianmckinty Hi. Have you heard that the first UK edition of THE TOKYO ZODIAC MURDERS will be published in 2015? amazon.co.uk/dp/1782271384
2015-02-09 07:11:53@Colorless_Ideas I hope I get some credit for relentlessly promoting TZM for the last 10 years or so!!!
2015-02-09 12:15:15Hi @adrianmckinty, I am Soji Shimada, author of Tokyo Zodiac Murders-thanks to your blog post we could publish thru Pushkin Press.
2015-09-01 00:22:49@S_S_Kingdom Mr Shimada, I've sent you a direct message. Its great to hear from you.
2015-09-01 06:49:12@adrianmckinty Will send it right away. Stay well and hope to see you soon-Soji Shimada
2015-09-01 12:36:47Soji Shimada: man of mystery - FT.com ft.com/cms/s/0/a7d625… via @FT
2015-11-21 15:05:14そしてエイドリアン・マッキンティー氏のインタビュー記事を「発見」してから3年10ヵ月後……
ポール・アルテや島田荘司の作品を愛好するアイルランド人ノワール作家、として名のみ知られていたエイドリアン・マッキンティ、ついに邦訳出版決定か!(『ミステリマガジン』最新号参照)この作家についてはMAQさん(@junk_land)がTogetterでまとめてくださっています→ togetter.com/li/626387
2017-11-26 21:34:08邦訳が決まったのは、刑事ショーン・ダフィー・シリーズの第1作『The Cold Cold Ground』とのこと。このシリーズの第3作が、『占星術殺人事件』の影響を受けて、密室物とノワールを融合させた作品になっているらしい(作者自身がインタビューでそう語っている)。ぜひ第3作まで訳してもらわないと。
2017-11-26 22:06:33刑事ショーン・ダフィー・シリーズは、『占星術殺人事件』の影響下に書かれた第3作『In the Morning I'll Be Gone』のみならず、第5作『Rain Dogs』も密室物で、出版社による紹介文には「一人の刑事が生涯で二度も密室の謎に直面するなんていうことがあるだろうか?」という文言が使われていて面白い。
2017-11-26 22:07:22