カー&島田荘司を愛する北アイルランド出身のノワール作家
「カーやクイーン、クリスティー、セイヤーズ、そして『占星術殺人事件』やポール・アルテが大好き」な北アイルランド出身のノワール作家がいるということを知ったので、それについて11連続ツイートします。
2014-02-07 07:13:45(1)まるで日本の新本格作家のような発言をしている北アイルランド出身のミステリ作家を発見。彼はエルロイやエルモア・レナードのような文体で暴力的なノワール小説を書きつつも、一方で子供のころから密室物・不可能犯罪物が大好きで、今年ついに《ノワール小説かつ密室物》の作品を上梓した。
2014-02-07 07:14:20(2)その作家の名はエイドリアン・マッキンティー(Adrian McKinty、1968- )。タイトルは『In the Morning I'll Be Gone』。「なぜ最新作に黄金時代の要素を取り入れたのか」と尋ねられたこの作家の返答は以下の通り。
2014-02-07 07:14:41(3)「昔からずっと密室物、不可能犯罪物が好きでした。モルグ街を幼いころに読んで、そのあとディクスン・カーを発見しました。クイーンやセイヤーズ、クリスティーもその種の作品の傑作をたくさん書いています。『三つの棺』なんかは特に好きです。
2014-02-07 07:15:20(4)西洋でこのジャンルの人気がなくなってしまったことを残念に思っています。日本では今でも大人気だそうですけど。そして、読むのと同じくらい書くのも楽しいんです! オリジナリティーがあってロジカルな密室物を考え出すのは思ったより難しい。そして、真相がばれないように留意しつつ、
2014-02-07 07:15:56(5)作中の探偵役と同時か、あるいはそれよりも早く、読者が解決に至れるようにしなければならない。なかなか面白いチャレンジでした」この作品は刑事のショーン・ダフィーを主人公とするシリーズの第3作。作中でダフィー刑事は密室ミステリの古典作品に言及しつつ捜査を進めていくそうだ。
2014-02-07 07:16:32(6)で、ちょっと検索してみるとこのエイドリアン・マッキンティー、ちょうど1週間ぐらい前にイギリスの『ガーディアン』紙に「密室ミステリ・ベスト10」 http://t.co/aWZfCTK7wE という記事を寄稿している。驚くのはマッキンティーが書いたその導入部。
2014-02-07 07:16:58(7)マッキンティーは、「英米では密室物はすっかり過去のものになってしまったが、一方でフランスではポール・アルテが不可能犯罪物を書き続けているし、日本では偉大なる島田荘司が《logic problem》というサブジャンルを生み出し、今でも大いに人気を博している」などと書いている。
2014-02-07 07:17:18(8)記事のタイトルは「密室ミステリ・ベスト10」だが、記事中の説明によれば実際は「密室物/不可能犯罪物」のベスト10だそうだ。マッキンティーが選んだベスト10、第1位はカーの『三つの棺』、第2位は島田荘司『占星術殺人事件』、第3位はポール・アルテ『七番目の仮説』。
2014-02-07 07:18:05(9)4位クイーン『帝王死す』、5位ルルー『黄色い部屋の秘密』、6位ザングウィル『ビッグ・ボウの殺人』、7位ブランド『自宅にて急逝』、8位クリスティー『そして誰もいなくなった』、9位カー『連続殺人事件』、10位コリンズ『月長石』。
2014-02-07 07:18:30(10)『ガーディアン』紙に掲載されたものには少々省略があり、原文はマッキンティーのブログで読める http://t.co/vinjkOXyvR 。見てみると原文には「Shinhonkaku」という単語も使われているのだが、これは『ガーディアン』紙では削除されている。
2014-02-07 07:18:55(11)エイドリアン・マッキンティーのインタビューの引用元はこちら http://t.co/gTr9hZhfrc (訳は大雑把なものなので必ずしも正確ではないかも……)。CWA賞の候補歴もある作家だが、邦訳は1作もなさそうだ。この件についてのツイートは以上。連投お騒がせしました。
2014-02-07 07:19:16問題の『In the Morning I'll Be Gone』、検索したらふつうに密林で買える模様です。なので「みんなのおすすめ商品」にも上げておきますた。 http://t.co/vdYRZXGkeQ
2014-02-07 09:24:37「logic problem」とは何か
@junk_land 「logic problem」は新本格のことです。ガーディアン掲載版で「the "logic problem" sub-genre」となっている箇所が原文で「the Shinhonkaku “logic problem” sub-genre」となっています。
2014-02-07 19:18:33@junk_land マッキンティー氏がどこで日本のミステリ事情を知ったのかは分かりませんが、氏が読んだ資料では「シンホンカクというのは“logic problem”という意味だ」あるいは「ロジックを重視するジャンルだ」とでも説明されていたのではないでしょうか。
2014-02-07 19:18:57@junk_land または、英訳版『占星術殺人事件』の解説でそんなような説明がされているのかもしれません。英訳版『占星術殺人事件』は持っているんですが、部屋の中で行方不明でして……ちょっとすぐには確認できません、すみません(汗)
2014-02-07 19:19:19@junk_land 英語版Wikipediaの「島田荘司」のページでは、「Honkaku」は「logic」という意味、「Shinhonkaku」は「logic mystery genre」だと説明されていますので、あるいはマッキンティー氏はこれを読んだのかもしれません。
2014-02-07 19:19:45@junk_land それにしても……せっかくイギリスの大手新聞で紹介されたのに、英訳版『占星術殺人事件』はしばらく前から入手不能なんですよね。イギリスamazonだと新品が最低価格35000円、中古品が最低価格7400円で出品されています。
2014-02-07 19:20:18@junk_land ただ、英訳版『占星術殺人事件』は日本の文化庁の事業の一環で出版されたもので、それなりに多くの図書館に寄贈されているはずなので、記事を読んで気になった人が読もうと思えば図書館で読めるのだろうとは思います。
2014-02-07 19:20:46@junk_land 英訳版『占星術殺人事件』は日本の出版社から刊行されたものですが、島田先生は1年半ほど前に、アメリカの出版社で新たに出し直そうという話もある、というようなことをツイートしていらっしゃいました。それがどうなっているのかも気になるところです。
2014-02-07 19:21:58@Colorless_Ideas おお!そうだったんですね!この辺りのお話も、まとめに追加させていただきます。ご教授、ありがとうございました!
2014-02-07 19:37:14エイドリアン・マッキンティーの新作が密室物になったのは『占星術殺人事件』を読んだのがきっかけだった
1「本格ミステリ好きのアイルランド人ノワール作家がノワールと密室物を融合させた新作長編を発表した」 2「その作家が選定した《密室ミステリ・ベスト10》で島田荘司の『占星術殺人事件』が第2位に選ばれている」 おとといツイートしたこの2つを上回る驚きの情報を入手しました。(続く)
2014-02-09 07:28:05