ケンペイ天狗「ショクニン・ストラッグル・ウィズ・フェアリー」

アナ・イゴール @KNPITNG

軍需工業地帯ミサキ・リバー地区で起こる元艦娘の連続失踪。そしてそれを調査したケンペイ天狗を襲った不審な過重装備艦娘とヤクザ。まさに暗黒鎮守府の暴虐計画と秘密保持行動が闇で蠢いているのだ！おお、ケンペイはこの暗黒権力の前に容易く口封じされてしまったのか？……否！２５　#ケンペイ天狗

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「Wasshoi!!」瓦礫の山を吹き飛ばしケンペイが跳躍する！BLAM!「アバーッ！？」空中からのリヴォルヴァー射撃でヤクザの頭部を破砕！BLAMBLAM!「「アバーッ！？」」着地と同時にヤクザ２人の頭部を銃撃し破砕！３連続ヘッドショット！ポイント３倍点！ ２６　#ケンペイ天狗

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ケンペイはオメーンの呼吸孔から硫黄の蒸気を吐き出すと白雪に向き直る。「ば、馬鹿な」白雪は怯んだ。主砲の直撃にも関わらず、ケンペイには殆ど外傷が無かったのだ。病的に白い肌に赤黒い血管が脈打ち、天狗オメーン越しに赤黒い眼光が燃える！「これで手下のヤクザは全滅だ」　２７　#ケンペイ天狗

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「あっ、うっ」「どうやらアタリだったようだな。その１４ｃｍ単装砲は破壊し、お前にそれを装備させた下らぬ計画、それを考えたブラック提督も殺す。オヌシには全てを話してもらう」後退りする白雪にケンペイ天狗はジュージツを構えた。「ブラック提督殺すべし、慈悲は無い」　 ２８　#ケンペイ天狗

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同日・夕刻。ミサキ・リバー地区　カワガサキ・インダストリ工場第三艦娘食料工場 ３０　#ケンペイ天狗

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アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。プレス機がベルトコンベア上に並んだボーキサイトをハンバーグ状に成形していく。そしてプレス機が上がるごとにボーキサイトを裏返す。ただそれだけが今のチュンタロの仕事だ。 ３１　#ケンペイ天狗

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退屈だが、ウカツをしてプレス機に手を挟まれれば手首から先がケジメされかねない危険な仕事だ。スローリーな合図が呼び起こす眠気と戦いながら、チュンタロはショクニン時代の自分の栄光を思い起こしていた。鉄の焼ける匂い、初めて15.5サンチ連装砲が出来た時の喜び…… ３２　#ケンペイ天狗

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アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン。アーップ、ダウーン……　３３　#ケンペイ天狗

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……。　３４　#ケンペイ天狗

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「本日の業務はこれでシュウリョ！カラダニキヲツケテネ！明日も遅刻はケジメドスエ！」無機質で威圧的なマイコ音声が工場に響き、プレス機が鈍い音をたてながら停止する。今日もやっと一日を乗り越えた……、チュンタロはため息をついた。早く帰ろう、早く帰ってサケを飲もう。 ３５　#ケンペイ天狗

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「チュンタロ＝サン！」帰途につこうとしたチュンタロを男が呼び止める。「なんだ……？……！」鬱陶しげに振り向いた彼は驚愕し、自然と背筋を伸ばした。目の前の男の服装は袖の先までノリの効いた白い軍服。そう、海軍軍人！この世を表からも裏からも支配する超エリート！　３６　#ケンペイ天狗

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「ぐ、軍人さんがこんな俺になんか用で……？」「いやいや、噂は聞いてるよ。優秀なショクニンが酷い扱いを受けていると聞いてね」軍人はブッダめいた笑顔を崩さないままチュンタロの手をとった。「私はそんな理不尽が我慢ならないんだ」「ヘ、ヘェ」　３７　#ケンペイ天狗

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チュンタロの膝は産まれたてのシカめいて笑っている。無感情な反応は目の前の軍人の言葉の言葉が聞こえなかった訳ではない、むしろその逆だ。ショクニンを解雇された自分の不幸を雲の上の軍人が共感してくれるという感動を、チュンタロのニューロンは処理しきれなかったのだ。　３８　#ケンペイ天狗

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「そ、それで俺にどんな用で……」「私のボスは鎮守府一つを率いる提督なんだが、クローン妖精なんて信用できない、ショクニンが良いと言っていてね」「へ、ヘェ」「君のような優秀なショクニンに特別な兵器を開発してもらいたいのだ」「！」軍人がチュンタロの手を強く握る。　３９　#ケンペイ天狗

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「ヘ……」急な展開に言葉も出なかったチュンタロだったが、だんだん目頭が熱くなるのを感じていた。押し殺していたプライドがムクムクと湧き上がったのだ。一週間前までショクニンだった自分。クローン妖精。今の惨めな自分。逃げた妻。４割カットの給料。こんな理不尽は無い！　４０ #ケンペイ天狗

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「ヨ、ヨロコンデー！何でもやります！」チュンタロは手を握り返し、声を押し殺して泣きだした。蜘蛛の糸を掴む亡者めいてチュンタロは承認欲求に飢えていたのだ。「即決か。嬉しいよ」軍人がチュンタロの背中をさする。その声はブッダめいて優しく、瞳は氷めいて冷ややかだった　４１ #ケンペイ天狗

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同日・夜。ミサキ・リバー地区　？？？ ４２　#ケンペイ天狗

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軍人の誘いにのった直後、チュンタロは車で工廠のような場所へ移動させられた。目隠しをされ、どこをどう移動したのかは分からない。外部連絡可能なIRC端末も全て奪われ、チュンタロは先程までの高揚感が徐々に不安と恐怖に滲んでいくのを感じた。　４３　#ケンペイ天狗

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「ショクニンだ。俺はもう一度ショクニンとして働けるんだ！」車を降りながらチュンタロは自分に言い聞かせる。彼のフトコロには高額なクレジット素子が入っている。軍人に前金と言って渡されたものだが、額よりその存在自体が彼のショクニンとしての誇りを癒していた。　４４　#ケンペイ天狗

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「こちらだ。来なさい」「アッハイ」チュンタロは軍人の後を追う。軍人は急ぎ足で工廠の奥へと入っていく。静寂が満たした夜の工廠、沈黙した巨大設備が夜の影によって黒く染められデモンめいた威圧感を発している。遠く聞こえる少女の悲鳴はチュンタロの気のせいではあるまい。　４５　#ケンペイ天狗

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５分ほど歩き、軍人とチュンタロは工廠の最深部、『立入禁止』と書かれた扉の前にいた。「ここだ」軍人は一度周囲を見回すと３つの鍵穴にそれぞれ別のカギを挿しこむ。この厳重なセキュリティ、相当重要な兵器を開発するのか。チュンタロは不安と期待に胸が高鳴るのを感じる。　４６　#ケンペイ天狗

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「シツレイする」軍人はドアを僅かに開けると、隙間に身体を滑り込ませるように中に入る。「貴方もだ、チュンタロ＝サン。早く入りなさい」「アッハイ」促され、チュンタロも部屋の中を覗……「アイエエエエエ！？」ナ、ナムアミダブツ！！　４７　#ケンペイ天狗

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「アイエエエ！！アイエエエエ！！？」部屋の中に入った瞬間チュンタロは失禁、絶叫した。兵器開発室らしき部屋の中に広がっていたのは壮絶なゴア的光景！！艦娘のものと思われる腕や、脚、死体が無数に転がり血の池ジゴクめいた光景を作りだしていたのだ！「死体！？ナンデ！？」４８ #ケンペイ天狗

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「「「ダマレッオラー！！」」」「アイエッ！」部屋の警備をしていたヤクザ達がチュンタロを恫喝する！「やめたまえ」「「「アッ、スミマセン！」」」軍人はブッダめいた笑顔を崩さぬままヤクザをたしなめる。「君も職人なら知ってるだろう、トモヅル・アフェアーを」「！？」　４９　#ケンペイ天狗