ケンペイ天狗「パンツ・サンダーボルト」

アナ・イゴール @KNPITNG

◆忍殺風艦これ二次創作「ケンペイ天狗」◆　（実況・感想用タグは #knpitng をご利用下さい)　#ケンペイ天狗

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◇コラボなのでどちらかだけ知っていれば楽しめる、ご安心な。そして当然パラレルだ◇ 　　感謝重点：スエズ鎮守府：togetter.com/li/604927 　　　 #ケンペイ天狗

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【パンツ・サンダーボルト＃１】　#ケンペイ天狗

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ネオヨコスカより西へ１万キロメートル。エジプト、スエズ。　１　#ケンペイ天狗

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丸く大きな赤い太陽が土を灼き、渇いた風が黄金色の砂を巻き上げて彼方の大地まで運んでいく。道を歩く人々は過酷な自然に逆らわないようにゆっくりと道を歩き……やがて訪れる冷たい夜までに家へと帰り、家族と食事をとる。そのどれもがネオヨコスカには無い光景だ。　２　#ケンペイ天狗

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スエズの街は栄え、バザールには人混みが絶えない。理由は単純、この街が商業的、政治的な要地だからだ。深海棲艦が出現してより人類の海上交通路は大半が機能を停止し、比較的安全なインド洋の沿岸沿いルートを擁するスエズ運河の重要性は大きく高まり、ヒトとカネが集まった。　３　#ケンペイ天狗

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それゆえ街を行き交う人々も国際色豊かだ。寄港した船の国籍混合の船員達、運河の"共同管理"のため進駐した白い肌の国連軍、抜け目の無い紅毛の商人達、周辺国から押し寄せた出稼ぎ労働者達。しかし何よりも目を引くのは白い軍装を着た東洋系の軍人と、彼が手を引く少女。　４　#ケンペイ天狗

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少女は紺色のスカートと少し癖のある栗色の長髪を黄色の風に任せたまま、汗でズレた赤いアンダーリムの眼鏡の位置を直す。レンズの奥の瞳は砂漠と同じ淡黄色で、背格好とは不釣り合いの落ち着いた知性を宿していた。女性の肌の露出を忌避するこの地においてその存在は異色である。　５　#ケンペイ天狗

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「しれーかん」しかし手を引く男を呼ぶ少女は周囲からの奇異の視線を気にすらしない。慣れているのだ……彼女が本国、日本にいた時から。彼女は人間ではなく艦娘、生きた兵器なのだから。そして彼女を連れた男こそスエズ運河を守るため日本から派遣された提督、スエズ提督である。　６　#ケンペイ天狗

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「なんだ望月？」スエズに単身派遣された彼らにかけられる海軍上層部の期待は重い。国際協力という建前の裏で、艦娘という圧倒的武力を活かしスエズ運河の権益を確保、あるいは諸外国から奪いとることが彼らの任務であることは公然の秘密。彼らを見る諸外国、国連軍の目は厳しい。　７　#ケンペイ天狗

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だが、どうにも様子がおかしい。「しれーかんってば！」望月と呼ばれた娘はバザールの中央で足を止めるとコシャリ屋台の一つを指差す。「いい加減お腹減ったよー、何か食べよう？」「おうっ！？」手を引いていた相手に突然立ち止まられた提督は一瞬つんのめり、振り返る。　８　#ケンペイ天狗

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「おいおい、鎮守府に戻るまで待てよ。うちは貧乏なんだから」「だからって屋台で買い食い出来ないほどじゃないでしょー？」「いや、そんくらい貧乏だから。このままだと今月の電気代払えない」「まじかよ……」言い合いをする二人は親子、あるいは年の離れた兄妹めいている。　９　#ケンペイ天狗

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「ゲームも出来ないじゃん！どーしたらそんだけ貧乏するんだよー！」「仕方ないだろ！本国がカネ送ってくれないんだから！」……そう。この二人の言動は、とても海軍の重大任務を背負っているそれではない。「今日も素パスタだ」「まじかよ……」そしてあからさまに財政難なのだ！１０　#ケンペイ天狗

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これは彼ら一流の擬装術だろうか？否。実際、政治的陰謀を嫌うスエズ提督は海軍上層の期待に反し、運河防衛のみに徹し権益奪取を殆ど行っていない。そのため仕送りを打ち切られた学生めいて補給を最低限に抑えられているのだ。だが彼が上層部に冷遇される理由はそれだけではない！１１　#ケンペイ天狗

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「まあ俺は食べるもんあるし」そう言い提督は懐から綿製の白い布を取り出す。これはハンカチか？いや、それにしては薄手で立体縫製されたそれは……ゴ、ゴウランガ！女性物のパンツである！さらに提督はそれを口元へ運び……ま、まさか！パンツを！食べ始めた！ナムアミダブツ！　１２　#ケンペイ天狗

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「うめぇ」おお、なんたる狂気的光景か！フォアグラを味わうようにパンツを咀嚼するスエズ提督！通常人類には繊維質を消化できる能力は無く、衣類を大量摂取すれば腸閉塞を引き起こす。だがそもそもそういう問題ではない！記述を進めねばならない筆者の苦悩をお察しいただきたい！１３　#ケンペイ天狗

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「司令官が食べてもあたしのお腹は膨らまないんだってばー、もー」突如の奇行に対し望月は動揺もなく溜息をつく。慣れているのだ……。「それも海軍のエライさんに嫌われる原因じゃないの？」「お前のパンツ食べるのやめるくらいなら提督やめる」スエズ提督は頷く。深く力強く。　１４　#ケンペイ天狗

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再び歩き出した提督に望月は諦めたように笑うとその手を握った。「パンツを食べないなんて他の提督達は勿体ないよなぁ。こんなエネルギー源ほかに無いのに」「はいはい、さいですかー」「パンツだけあれば何でも出来る」「徒歩で地球半周とか？」「それは物理的に無理かな……」　１５　#ケンペイ天狗

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同時刻。ネオヨコスカまで９,９４０キロメートル。エジプト、スエズ。　１７　#ケンペイ天狗

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丸く大きな赤い太陽が土を灼き、渇いた風が黄金色の砂を巻き上げて彼方の大地まで運んでいく。無限に広がる荒野を左右に断つ一本の舗装道路を、一人の男がバッファローめいて走っている！「イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！」その速度……時速６０キロ！　１８　#ケンペイ天狗

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男の服装は擦り切れた第二種軍装に、赤いテング・オメーン。死体めいて白い肌には赤黒い血管が浮かんでいる。誰が見ても狂人とわかる背格好……。その名をケンペイ天狗。ネオヨコスカの死神の異名を持つ、ブラック提督を殺し続ける第一級指名手配テロリストだ。　１９　#ケンペイ天狗

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照りつける太陽と宙を舞う砂がケンペイ天狗の身体を苛み、体力を奪っていく。彼はオメーンの下で歯を食いしばり前を向いた。車も走らぬ直線道路は地平線まで続いている。彼の目的地はその道のはるか１万キロ先、ネオヨコスカ！制限時間は１０日間！出来なければセプクなのだ！　２０　#ケンペイ天狗

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「ヌゥーッ！」ケンペイは我が身の脆弱さを呪う。もし彼がニンジャであれば時速１００キロで走り、５日とかからぬ内にネオヨコスカにたどり着くことが出来ただろう。だがニンジャなどこの世にいない、カートゥーンのヒーローならぬケンペイは時速６０キロで走るのが限界なのだ！　２１　#ケンペイ天狗

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しかもこの１０日間の地獄マラソンにおいてケンペイは水分・栄養補給が許されていない。唯一許されているのはパンツの摂取のみ。「何故、パンツなのだ」嫌がらせに違いない。ケンペイはそう結論づけた。いかに世界が広かれど、パンツを消化吸収できる人間などいないのだから。　２２　#ケンペイ天狗