ケンペイ天狗「ブロークン・ブルタル・マシーナリー・プライド」

アナ・イゴール @KNPITNG

◆艦これ＆忍殺二次創作◆　（実況・感想用タグは #knpitng をご利用下さい。)　#ケンペイ天狗

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【ブロークン・ブルタル・マシーナリー・プライド＃１】　#ケンペイ天狗

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ネオヨコスカ南部、ワンカップ・ディストリクトの湿ったビル街。　１　#ケンペイ天狗

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夕刻。重金属酸性雨がにわかに勢いを増し、薄汚れたストリートを叩いた。客引きマイコやサラリマン達が建物や地下街へと逃れる横で、全身をフード付きポンチョで覆い隠した女が立ち止まる。フードから覗く厭世的な黒い瞳が雨宿り出来る場所を探して建物群を見回している。　２　#ケンペイ天狗

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女の視線の先、歩道に張り出したビルの壁面に映る過剰広告ディスプレイには轟沈する暁型駆逐艦の動画がループする。『アッまた沈んだ！貴方はこうならないようヴァレー・タンボ社のケモサンドで健康倍点だ！今なら実際安い！』悪趣味なCMだ。女は小さく舌打ちすると再び歩き出す。３　#ケンペイ天狗

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女はまだ若く、美しい黒髪がフードからこぼれ落ち、豊満な胸はポンチョ越しに膨らみを主張している。だがそれ以上に目立つのはポンチョ越しでも分かるほど異常に盛り上がった女の右腕。まるで右腕を重機アームに挿げ替えたかのような異貌は、女の美貌を台無しにして余りあった。　４　#ケンペイ天狗

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「ヘイ、アカチャン……アイエッ？！」一瞬女に声をかけようとして飛び退いたヨタモノ達の前を女は無表情で通り過ぎ、酒場の前で立ち止まる。大衆食堂を兼ねた安酒場。「……上々ね」壊れたオートメーション・ドアーを左手だけで押し開けると、女は酒場の中に足を踏み入れた。　５　#ケンペイ天狗

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―――薄暗く広い酒場のホールが、女の登場に一瞬静まり返った。女がフードを脱ぐと黒く美しい長髪が雨滴と共にこぼれ落ち、酒場の男達の目線を集める。何人かの男が声をかけようと腰を浮かせ、彼女の右腕を見て座り直した。女は奥のテーブルに腰掛け、ポンチョを右腕に纏い直す。　６　#ケンペイ天狗

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「それでラバウルがマイアミめいて……」「ネコ、マグロ、群馬県……」「ヤンバーイ」すぐに店の空気は無関心と喧騒を取り戻し、赤く髪を染めた店員が女に近づいた。「ご注文は？」「スシカツ１０人前とサケをお願いします」「アイエッ！？１０人前」「ええ、１０人前」「アッハイ」７　#ケンペイ天狗

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まもなくテーブルの上に置かれた山盛りのスシカツを器用に左手だけで口に運ぶと、女の厭世的な表情にようやく笑顔の色が差す。女がまとうポンチョは、重金属酸性雨だけではなく泥や砂にまみれ、女のこれまでの旅路が決して楽なものではなかったことを物語っていた。　８　#ケンペイ天狗

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「上々ね」イイ店だ。舌鼓を打ちながら女は独り頷く。安い油で揚げられたスシカツは少し水っぽいが、中のネタに手抜きは見られない。サケも加水してあるものの工業用エタノールを混ぜ込んだ粗悪品とは違う。とはいえ、艦娘である彼女には工業用エタノールも害にならぬのだが。　９　#ケンペイ天狗

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そう、この女は艦娘であった。その名前を赤城と言う。かつては一航戦の赤城の異名を持ち、グンレイ・エイトエイツが一人アマギ中将の不動の秘書艦としてその名をネオヨコスカ中に轟かせていた正規空母娘であった。ケンペイ天狗と呼ばれる狂人のテロリストと戦い敗れるまでは。　１０　#ケンペイ天狗

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ケンペイ天狗との戦いで赤城は自身の生命線である飛行甲板を失い、更に提督であるアマギに反逆し、彼を殺した。それからというもの赤城に安息の時は無い。ネオヨコスカを闇から支配する巨大軍閥グンレイ・アクシズが彼女を第一級の反逆者として執拗に追い続けているのだ。　１１　#ケンペイ天狗

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休まらぬ日常、それゆえに安酒場での一時の安息は赤城をとても上機嫌にさせていた。店のラジオから流れるナカチャン・ポップスに小さな鼻歌が交じる。「すいません、サケをおかわり」赤城は右腕が露出しないようポンチョを気にしながら左手で空のグラスを掲げ、店員を呼ぶ。　１２　#ケンペイ天狗

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「ヨロコンデー！」赤髪の店員が赤城に振り返りウィンクで返事をする。周りの客はそれぞれの会話に夢中だ。この店に赤城が艦娘だと気づいているものはいない。赤城は上機嫌に４枚目のスシカツを頬張る。しかしその豊かな時間は、ガラス製のドアが砕ける音で断ち切られた。　１３　#ケンペイ天狗

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「ザッケンナイキュー！」ドアーを蹴破りながら店内に雪崩れ込んで来たのは十人前後のクローンイ級を従えた海軍軍人！「お客様！？」「イキュー！」「アイエエエ！」制止しようとした赤髪の店員が鳩尾を殴られ、失禁しながら床を転がった。サケ・グラスが床に落ちて砕け散る。　１４　#ケンペイ天狗

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「スッゾオラー！海軍ナマッコラー！ドグサレッガー！」「アイエエエエ！」海軍軍人はおよそ軍人とは思えぬ口汚いヤクザスラングを上げると赤髪店員を蹴飛ばし回す！「何の騒ぎ……アイエエエエ！海軍ナンデ！？」奥から飛び出してきた店長と思しき禿頭中年男も軍人を見て絶叫！　１５　#ケンペイ天狗

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「アッコラー？」軍人は店長が出てきたと見るやすぐさま歩み寄り、襟元を掴み上げる。「今月分の海軍税がマダダッテオラー！」「アイエエエ！？海軍税！？海軍税もう払ったのにナンデ！？」「シバルナッケンゴラー！今月から二倍ダッテメオラー！」「アイ！？アイエエエエ！？」　１６　#ケンペイ天狗

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海軍税は提督が自身の鎮守府所管領域に課す私的な税金である。ミカジメ料めいて徴収されるこの税金は滞納すれば容赦なき制裁暴力が待っている。「ザッケンナイキュー！」軍人の合図と共にクローンイ級が店を荒らしだす！グラスを砕きテーブルを割る！我先に逃げる客！阿鼻叫喚！　１７　#ケンペイ天狗

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「２倍払います、払いますからヤメテ……」「ダメだ」たまらずドゲザした店長に対し、しかし軍人は無慈悲にその頭を踏みつけた。「エッ」「今月の海軍税引き上げには反対の店が多くてな、見せしめが必要なのだ」「アイエエエエ！？」理不尽！店長は涙声で悲鳴を上げる！　１８　#ケンペイ天狗

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「やめて欲しくばカネの他にセックスを提供しろ！素人の女と前後したい！」「アイエエ！？」足にしがみつく店長を引きずりながら軍人は店の奥へと入り、怯えるウェイトレス達を物色する。そして店の奥、赤城の傍で足を止めた。美しい黒髪。ポンチョ越しでも分かる豊満。「ホウ」　１９　#ケンペイ天狗

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「アイエッ！」その人は客！「ダマラッシェー！」「アバーッ！」軍人の考えに勘付いた店長が再び軍人に縋りつこうとするが、軍人の一蹴りで血泡を吹いて倒れる！「おい女！私はお前と前後がしたい！」軍人は右手を赤城の左肩に乗せると揺り動かす。しかし赤城は微動だにしない。　２０　#ケンペイ天狗

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性的執念に突き動かされる軍人は不自然に盛り上がった赤城のポンチョに気がつかない。「怯えなくて良い！私のボス、ガマナサ様はグンレイ・アクシズに所属している！実際抵抗しても無駄……」「グンレイ？今グンレイと言いましたか？」「そうだ！ボスはグンレイに所属しアバッ」　２１　#ケンペイ天狗

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軍人が仰向けに倒れた。……いや、正確には軍人の下半身だけが床に崩れ落ち、今まで腰と呼ばれていた断面部分からゴボリ、ゴボリと二度血を吐き出した。当然、即死だ。では、上半身は？この世から消えた。代わりに破裂したトマトめいて飛散した破片が店の壁を赤くスプレーする。　２２　#ケンペイ天狗

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ゴボリ。最後に一度、血と共に腸の破片を吐き出すと、軍人の下半身はそのまま動かなくなった。「イキューアバッ」唐突な指揮官の死に反応できないでいたクローンイ級が、暴走機関車と正面衝突したかのごとく足首から上を吹きばされ、緑色のバイオ血液を壁にスプレーした。　２３　#ケンペイ天狗