無名大戦;第一戦闘フェイズ 第二の狭間ログ

第二の狭間は夜の廃屋。暗闇の静寂が響き渡る。 立つのは嫉妬( @noname_envy )、寛容( @nnm_tolerance )のふたつ。
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嫉妬 @noname_envy

かたん、小さく音を立ててそこへ踏み入れ、数歩。歩くたび、ぎしぎしと床が軋む音が、静かな中で余計に響いた。あたりは暗いが、バルコニーらしいところから月明かりが差し込んでいる。暗闇に目が慣れて、やっとここがどのようになっているかを把握した。 パーティの最中に忽然と人が消えたような。

2014-02-11 18:23:22
嫉妬 @noname_envy

各所に置かれた白かっただろうテーブルクロスは月明かりだけでもわかるくらいには古びて汚れ切っていて、皿の上の料理は腐ったのか乾いたのか鼠などにでも荒らされたのか、黒ずんだ何かと化している。ふうん、とそれらを興味なさそうに見渡し、緩めていた包帯を外してコートのポケットへ捻じ込んだ。

2014-02-11 18:27:34
寛容トレランス @nnm_tolerance

扉の先は、暗闇。埃っぽい空気に顔を顰めるが、暗くてまだ何も見えない。 (…月が綺麗、) 室内に光を落とす外を見やって思う。綺麗な夜空だった。 足を踏み出せば軋む音。それは一つではなくて、暗さに慣れた目で見回す。 広間のようなその場所。雑然と物の置かれた古ぼけたテーブルが目に入る。

2014-02-11 18:49:09
寛容トレランス @nnm_tolerance

その、すぐ傍に人の影。 (……アレが恐らく、) もう一つの音の発生源、自分が相対すべき『大罪』だと、一人納得して。 一歩、二歩、ゆっくり近づく。相手もきっと《寛容》の存在には気づいているはずだ。 「あのぅ…あなたが、大罪でしょうか?」 そう一言、その影に向かって問うた。

2014-02-11 18:52:59
嫉妬 @noname_envy

声と、ぎしぎし床が軋む音。歩くだけでこんなに軋むなんて、走り回ったりしたら抜けてしまうんじゃないかとか下らないことを思いながら、そちらを見た。暗闇、月明かりに輝く金の髪。(綺麗な髪だ、)一瞥して、声に応える。妬む要素は既に十分。 「そうだよ。そういう、あんたは、美徳の、何かだろ」

2014-02-11 19:07:17
嫉妬 @noname_envy

大罪たちといたときの穏やかさはまるで無い口調で乱雑に、ざらざらの砂嵐に似た嗄れ声で吐き捨てるように名乗る。 「僕は嫉妬、嫉妬の、座の、エンヴィー」 吐き捨てるようであってもしかし名を告げるのは誇らしげに。 皆が呼ぶその名を、誇るように、愛おしむように。

2014-02-11 19:11:20
寛容トレランス @nnm_tolerance

掠れた声の返答を聞く。心なしか投げやりに聞こえるが気のせいだろうか。 別の色が混ざる名乗りに、此方も返した。 「そうですか。エンヴィーさん、はじめまして。私は美徳の≪寛容≫、トレランスと申します。」 大罪を前にしても穏やかさは変わらず。白いワンピースの端をつまみ、軽く礼をして。

2014-02-11 19:28:43
寛容トレランス @nnm_tolerance

三歩、四歩。軋む音も最小限に、ゆっくり近づきながら瞬いた翠は、逸らされた紫を見つめるように。 …五歩。そこでぴたり立ち止まった。まだ距離はあるものの、声が届くには十分だろう。 ふわり、枯葉色の彼へと微笑む。 「私は貴方を、『受け入れ』に来ました」

2014-02-11 19:33:40
嫉妬 @noname_envy

(光る金の髪が、) (こちらをまっすぐ見るその翠が、) (自分の嗄れ声とは違う滑らかな声が、) (礼をするなんてそんな余裕ぶった態度が、) (無防備に近づき笑いかけるなんて行動を取れることが、) その全てが妬ましい。

2014-02-11 19:54:17
嫉妬 @noname_envy

せいぜいそんな風に近づいてきたことを後悔すればいいと心中嗤いながら、不快だと表すように歯軋りを一つ。 …寛容。受け入れる。 (何、それ) 自分を受け入れに来たなどとこれは言う。 ふざけるな。 自分の渇きはそんな易いものじゃない。 …それを堂々宣言できるその恩着せがましい態度。

2014-02-11 20:01:38
嫉妬 @noname_envy

それを言い切れる、その精神。 全くもって、妬ましい。 へえ、と頷く。込み上げる嫉妬を押し殺す必要はない。…自分の嫉妬を皆に向けるのは論外だし、まず嫉妬を向けようとも思わない(それでも時々妬みそうになってしまうけれど)。だがこれは別。こんなの、嫉妬する以外にないじゃないか。

2014-02-11 20:07:37
嫉妬 @noname_envy

「…なあに、それ。本気なの。へえ、羨ましい、なあ、それ。そういう風に、言えるって。――僕と、一緒に、なっちゃえば、いいのに」 嗄れ声は低く囁くように。こちらを見つめる翠を暗紫で睨みつけながら、近寄ってきたのは好都合と『渇望』の幅を少し狭めた。しかし数歩下がった位では抜け出せない。

2014-02-11 20:19:29
嫉妬 @noname_envy

…徐々に徐々に渇いて乾いていけばいいと、うっそり笑う。

2014-02-11 20:20:20
寛容トレランス @nnm_tolerance

「本気ですよ?私は『受け入れる』ための存在ですし。」 羨ましいと、そう呟く嫉妬の瞳には燃え盛る炎が宿っていた。暗い暗い、紫色の嫉妬の炎。 しかし臆することはしない。その場から動くことも、しない。 『受け入れ』るために来たのだから。私は己の『徳』を、相手へと示すのだから。

2014-02-11 20:50:27
寛容トレランス @nnm_tolerance

(…『一緒』とは、何の事なのでしょう) 彼の言葉の中の一単語に思考を巡らせながら、口を開く。 「一つだけ、訊かせてください。」 しょんぼりと眉を下げて、遠慮がちに言葉は紡がれる。 「出来れば傷つけることはしたくないです。…ので、」 「……退く気は、ありませんか?」

2014-02-11 20:50:51
寛容トレランス @nnm_tolerance

《寛容》の問う声は、何故か掠れ気味。 緊張によるものだろうと、本人はさして気にしなかった。 ――すでに始まっていたとは、少しも思わず。

2014-02-11 20:52:31
嫉妬 @noname_envy

「やだね」 短く却下の意を表す。掠れ始めた声に密かに笑いながら、言葉を続ける。 「そんな、甘い、こと。通らないって、わかってる、だろ? だって、僕らは、大罪で。あんたたちは、美徳、なんだ。…見逃して、なんか、やらないよ」 しかし動くことはない。そのかわり。 (なんて甘いことを、)

2014-02-11 21:31:56
嫉妬 @noname_envy

(きっと『受け入れる』と同じで本気なんだ、) (本気でそんな甘いことを、) (傷つけたくないなんて、) (上から目線、自分が傷つくなんて思ってもいない、) (それを言えるなんて、) (…なんて強い、) 嗚呼、妬ましい。 嫉妬は募りゆく。 ――乾け渇け乾いて渇いてしまえ。

2014-02-11 21:32:37
寛容トレランス @nnm_tolerance

短い、否定の言葉に翠は曇り、そして伏せられる。 (甘いのでしょうか。…甘いんでしょうね。でも、それが『寛容』だから。) 甘いと言われようと、自分はそれを貫くしかない。 (《享受》することだけを考えて、私は此処に立つのです。) そう念じるのは、自身を奮い立たせるため。

2014-02-11 22:29:42
寛容トレランス @nnm_tolerance

「そう、ですか。残念です…――ッ?!」 掠れが増して、声が罅割れる。喉が、不自然に渇いていく。 ぴり、と指先の痺れる感覚も無視して、慌てて喉に手を当てた。 短く小さく、声を何度か吐き出して整えて。なんとか形にして、声を零す。 「…既に能力、発動してたんですね。」

2014-02-11 22:35:38
寛容トレランス @nnm_tolerance

見逃さないとは告げられたが、これで改めてはっきりした。…『戦う』選択肢しかないのだと。 ばさり。意を決したのか、頭の翼が大きく広がった。その左右から二本ずつ、羽が射出される。 それは矢のように、光を纏って。 まっすぐ、まっすぐ、嫉妬のその足元へと、飛んでいく。

2014-02-11 22:35:51
嫉妬 @noname_envy

ああ気づかれちゃった、と残念そうに楽しげに。 「発動も、なにも。僕の、これは、いつも、だもの。」 言いながら暗闇の中で輝くそれを、(綺麗、)左に跳んで回避。――内の、片方だけを。それが突き刺さった場所が痛みを発して、ますます嫉妬を深くする。 (簡単に、) (こんなあっさり、)

2014-02-11 23:21:46
嫉妬 @noname_envy

(痛い痛い痛い、) (痛くない痛くないこれくらい痛くない大丈夫、) (酷い酷い酷いなんてことをするの、) (こんなにあっさり傷つけられるなんて、) (傷つけることがができるなんて、) (そんな強さ、) (酷いよ、) 嗚呼、妬ましい! 右脚の違和を無視して近付く。

2014-02-11 23:26:03
嫉妬 @noname_envy

否、駆ける。床が軋む音で足音は尚更夜に響く。光源は月明かりくらい。でもその程度で十分。 狙うのは、大きく広げられたその羽(それも綺麗、)。 掴んでやるとばかりに腕を伸ばし跳びかかる。サイズの合わないコートの袖が僅かに捲れて、覗いたのは渇ききった骨に皮が貼り付いているような細い指。

2014-02-11 23:33:14
嫉妬 @noname_envy

それを精一杯伸ばす。 「………ちゃえ、乾いちゃえ、渇いちゃえ、枯れちゃえ、朽ちちゃえ…!」 嗄れ声で繰り返す言葉はまるで呪わんとするかのよう。

2014-02-11 23:36:25