無名大戦;第一戦闘フェイズ 第二の狭間ログ
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(傷つけることが、) (酷いなあ、) (痛い、) (痛いよ、) 身を起こそうとするけれど、鈍った三肢ではうまく立ち上がれない。それでもどうにか、徐々に動かなくなっていく腕を必死で動かし立ち上がる。 …立ち上がって、目を向けた先。
2014-02-13 00:23:25木片や食器が飛来してきた方向で、テーブルが何かの前触れのように揺れているのが視界に入った。それで察する。おそらくあれも、先程のように飛ばすつもりなのだろう。 「…………ッ!」 冗談じゃない。あんなのぶつけられたらひとたまりもないし、あれが飛来した時、防ぐ手段は自分にない。
2014-02-13 00:25:39(ちくしょう、) 首を巡らせ、這うにも似た速度で寛容へと近付く。 …近寄れば。我が身可愛さに動かすのを止めるか、それとも己が身を巻き込むことを恐れず動かすか。 …前者であればいいと思うが、それこそ甘い判断だろう。そう思いながら、それでも近づくのはやめない。
2014-02-13 00:28:58相討ち共倒れなんて真っ平御免だ(だって約束した)、けれど、ひとり無様にやられる方が嫌だ。どちらかが全て倒れるまで続くのだから、自分のせいで皆が傷つくような要素が増えるのは絶対に嫌だ。 だからどうか間に合えと必死で脚を動かす。
2014-02-13 01:04:25急ぎ振り返った嫉妬は、次の瞬間に床へと転がる。 痛々しく咳き込むのを見て、翠の上には水分の膜が張った。 (目を伏せたい。傷つけたくない。…でも、逃げてはだめ。) 伏せれば落ちるだろう滴。しかしその瞳から零れることはなく、ただ翠が揺れて。 唇を引き結ぶ。…頭がぼんやりするのだ。
2014-02-13 01:17:35気を張っていなければいつ倒れてもおかしくない。 (おそらく、水分が足りない、) 心臓が締まるような心地。身体の限界が、精神にも影響している。 かたかたと規則的に揺れていたテーブルは、不規則に音を立てて揺れ始め。 テーブルの上に載っていた物は煩わしい音を立て床へ散らばっていく。
2014-02-13 01:22:45はく、はく。浅い呼吸音が一旦止んで、 「私が朽ちたら、貴方の渇きは癒えますか?」 続くは、掠れた声で頼りなく問う声だった。 気付いているだろうか、回避行動は一度も取っていないと。…動ける状態ではないからと、気にされてないかもしれないが。 (自分の体など、如何でも良いんです。)
2014-02-13 01:23:12『寛容』とは、心の在り方。だから心が、心のままに在れれば。 急くように迫りくる嫉妬。――その彼を抱き留めようと。 そう呼べるかどうか怪しい、腕を広げる。茶色く干上がった、枝のような腕を。 《寛容》の行動はいつだって彼の答え次第、行動次第だ。 それは今もで――反応を、待つ。
2014-02-13 01:36:03流れ出る血は即座に渇くけれど傷口は塞がらない。流れ出ては渇くそれは、生臭さよりは鉄臭さの方が鼻に付くだろう。水の足りない身でそれだから、失血の寒さで余計に震える。震えを止めるように食いしばった。 騒音を気にかける余裕はない。
2014-02-13 07:27:30それに気を向けるくらいならと慌てるものだから、動かない三肢と失血とで尚更転びそうになる。 少し靄のかかったような視界の先、掠れた声が届いた。 (渇きは、癒えるか、なんて、) 「…そんなの、無理だよ。だって、僕は、この渇きで、『渇望』で、嫉妬の、大罪に、」
2014-02-13 07:28:47声が途切れたのは、咳き込んだから。 視界が揺れる(だめだ帰るんだ約束したんだまた集まるんだそして皆で)。 …この渇きが癒えることはない。 あと数歩の距離が遠い。 振り絞るように踏み出した最後は、気が緩んだのか。 半ば崩れ落ちるようにして、寛容の腕の中へ。
2014-02-13 07:30:09それは不器用な抱擁にも見えるかもしれない。 抱きとめられた腕はすっかり渇き切っていて。 (なんで、僕を、) (ああ渇いてる、) (それなのに、) なんて皮肉、抱きとめられて思う。大切なものにこそ触れられないで、だから、美徳の側になんか抱きしめられてしまうのか。
2014-02-13 07:31:07渇きに巻き込むことを恐れれば触れられず、躊躇いなく渇きに巻き込めばこうして触れ合うことになるなんて。 「…うん、でも、そうだね、……少しは、マシに、なるかも、しれないな」 前がいつかを忘れたくらい久方ぶりに触れたひとは、暖かだ。 …大切なひとたちであったら良かったのに。
2014-02-13 07:31:53迫る嫉妬が、自分の僅か手前で崩れ落ちるように勢いを失う。 腕だけじゃ心もとなくて、頭の翼も大きく広げた。腕と翼でしっかりと、彼を抱きしめ包み込む。 蒸発音。ともに、身体は更に枯れて。 「じゃあ…その渇きをもう少し。いえ、私に出来る限り多く、頂いていきますね。」
2014-02-13 13:46:05彼の腕から、脚から、翼で触れた部分から。 出来るだけ嫉妬の意志を《享受》し、己の中へと存在を流し込んだ。 精神は軋む。内側から朽ちる。それでも《享受》しないことなど、《寛容》にはあり得ない事。 ――彼の答えを聞いた、瞬間から。
2014-02-13 13:46:30嫉妬を『受け入れ』過ぎているからか、今だけはなんとなく、彼の思考がわかる気がした。存在が同化し始めているのかもしれない。 「ごめんなさい、」 呟きは嫉妬に告げているようにも、独り言のようにも聞こえる。 ――皆さんの元に、帰れなくて。 ――嫉妬(あなた)の、大切な人ではなくて。
2014-02-13 13:47:50暴れていたテーブルはそのまま、2人の頭上へと持ち上がった。浮きながら不安定に、ゆらゆらと揺れる。 全身は朽ち果て、力が入らない。寛容はその感覚をも享受して、柔らかな翠を伏せた。その気になれば、嫉妬がこの腕から抜け出て去ることなど容易い。 「『一緒』、に――…」
2014-02-13 13:49:28出会って間もなく、嫉妬が寛容に放った言葉の一部。 零した声は掠れ、罅割れ、最後まで口にすることはなく砕けた。 《享受》を失ったテーブルは、ただ重力に逆らうことなく落ちるだけ。 弱々しくも確実に、相手の意志を《享受》して。 軋む心の奥、『かわき』が癒えることを『渇望』して。
2014-02-13 13:49:49「………………、」 何か言葉を返そうとして、結局何も言わずに口を閉じた。それと同時に、抱かれ包まれる感覚(あたた、かい、)。触れられた瞬間は柔らかだったのが、途端に朽ちていくのが伝わるけれど、それに浮かぶ思いはもうなくて。 けれど朦朧とする意識が、その中で僅かな声を拾い上げた。
2014-02-13 18:32:07(……ああ) (ごめんなさい) (約束したのに) (ごめん) (ごめんなさい) (絶対にって、言ったのに) 聞こえた囁きに重ねるかのような謝罪は声にはならず。 翠が閉じられたのを知ってか知らずか、しかし寛容の腕と翼の中、倣うように暗紫も伏せられて。
2014-02-13 18:32:58――終わりは、夜気を切り裂くに似た音と共に。 床の軋む音も朽ちる音も何もかも、全てが始まる以前の静寂に掻き消されて、月明かりが何かを語ることはない。
2014-02-13 18:34:35