『ゴリラスレイヤー ア・カインド・オブ・ダークゴリラ』#4
UNIX上の進捗バーは現在49%を示している。テストは順調であった。だが、モニタを満足気に眺めるヨロシサン係長に「不味いですよ」とヨロシサン社員が耳打ちする。「侵入者が地下へ到達しました」 45
2014-02-15 12:19:47侵入者とは無論ゴリラスレイヤーの事だ。「タイムイズマネー。だからこそテストを急いでいる」バイオバナナ製造テストが終了すれば、契約はひとまず完了だ。故にヨロシサン係長は意に介さない。 46
2014-02-15 12:20:50しかし進捗バーは49%から動きを見せない。ヨロシサン社員の焦りは募る。「船から呼んだ戦力が、侵入者と鉢合わせをする可能性があります」「それがどうした。戦力にはニンジャも含まれている」 47
2014-02-15 12:22:21そのニンジャの名はプレシャス。実力的には中堅だが、良い働きをするニンジャである。「ゴリラの無能を、我が社のニンジャが取り返す。いい取引材料になるとは思わないか?」「しかし、万一プレシャスが撃退された場合……」 48
2014-02-15 12:23:55「それもまた良し。我々はニンジャすら退けるゴリラのデータを手に入れ、帰国する」何という計略!!だが実際、ヨロシサンがこの不安定な国に目を付けた理由は鉱物資源だけでは無かった。ゴリラ存在。ニンジャと同等と目されるその神秘を手に入れる。それこそがヨロシサンの第一目標であった!! 49
2014-02-15 12:25:12「なに、ニンジャの代わりなど幾らでも居るさ」係長はそう言い捨てた。万魔殿ヨロシサンの人間は決して一筋縄ではゆかぬのだ。「アッ、ハイ……」ヨロシサン社員は気圧されて思わず頷く。「撤収準備を同時進行で進めろ。契約成立次第、船へ戻るぞ」 50
2014-02-15 12:27:38役職こそ係長であるが、このネオサイタマから見れば世界の果てとも言える場所で責任者を務め、ビズを遂行する。それは一体どれ程の手腕があれば務まるものか。ヨロシサン社員の背に冷たいものが走った。 51
2014-02-15 12:29:14ゴリラスレイヤーはバナナの香りを頼りに地下を進む。香りの源は近い。だがその時、ゴリラスレイヤーは殺気を感じ、背後を振り向く!!飛来する物体!ゴリラスレイヤーはゴリラ動体視力でそれを捉え、弾き飛ばした。 53
2014-02-15 12:31:28跳ね飛ばされたダイヤモンド型スリケンがゴリラスレイヤーの足元へと刺さった。スリケン……そう、スリケンである!振り返ったゴリラスレイヤーの視線の先には、乳白色のニンジャ装束とメンポを付けたニンジャの姿が有った!! 54
2014-02-15 12:33:08そして。「ドーモ、ゴリラスレイヤー=サン。プレシャスです」(ゴリラスレイヤーです)プレシャスは日本語。ゴリラスレイヤーは手話。互いに通じぬアイサツを交わし、ゴリラとニンジャ。禁断の対決が今幕を開けた。 55
2014-02-15 12:33:42「イヤーッ!!イヤーッ!!イヤーッ!!」プレシャスの連撃がゴリラスレイヤーを襲う。だがゴリラスレイヤーのガードは固い。「ウォーッ!」ゴリラスレイヤーのゴリラストレート反撃!!だがプレシャスはブリッジ回避。 56
2014-02-15 12:51:05ゴリラスレイヤーはそのまま踏み込み、距離を詰める。ゴリラ筋力はワン・インチ距離でこそ距離を発揮するのだ。だが、プレシャスはブリッジ回避からそのまま180度回転し回し蹴りを繰り出した!これぞ暗黒カラテ蹴り、メイアルーアジコンパッソである!! 57
2014-02-15 12:51:33「グワーッ!!」ゴリラスレイヤーは回避姿勢を取るも、避けきれない!ボクシングならば3~4階級は異なるであろう体格差が災いしたのだ!強烈な蹴りをまともに受け、怯むゴリラスレイヤー。しかしゴリラスレイヤーは倒れない。強靭なゴリラ脚力によって辛うじて踏み止まった!! 58
2014-02-15 12:52:04「しぶとい!」プレシャスは更なる追撃を試みる。 ((ウホ……ウホウホウホ……(ヒトモドキ如きに遅れを取るとは……!我ら全てに対する冒涜ぞ……!)))ナラクピテクスの声が脳内へ響く。周囲全ての動きが緩慢になり、時間が引き伸ばされる様な感覚。 59
2014-02-15 12:52:45ゴリラスレイヤーはこの時点で、対敵がゴリラではなく、アンシーの情報にあったニンジャであることを推察していた。(ナラク……これがニンジャなのか)(((ニンジャ……その名を聞くも業腹よ。種としての尊厳を捨てた大兇共めが))) 60
2014-02-15 12:53:39(ナラク!?)(((替われ……こやつらが、母なる大地を踏むことは許せぬ)))(だが……)(((替われ……いや、頼む……!!この一時だけだ!)))ナラクピテクスの懇願。その思念が伝わる。……その根底に有る物は怨嗟の声。 61
2014-02-15 12:57:26生の営みを破壊する者……ニンジャへの復讐を望む声。これはゴリラスレイヤーと同じものだ。己と同じ目的を持つ者を、無碍にできようものか。(ナラク、この体預けるぞ……!!)(((忝ない……!))) 62
2014-02-15 12:58:00ゴリラスレイヤーの肉体の主導権がナラクピテクスへと移る。これが果たして如何なる変化を生むか。ただ今は只、黙して見守ろう。ゴリラスレイヤーの肉体は次第に縮み、光るゴリラから老類人猿の姿を取る。……ナラクピテクスの姿を。 63
2014-02-15 12:58:22身体の変化が収まると、老類人猿は後方へ跳躍、プレシャスに向きオジギをした。「ドーモ、プレシャス=サン。ナラクピテクスです。オヌシらのアイサツではこうするのだったか?」「……ナラクピテクス、だと」その言葉は日本語だ!プレシャスにも実際通じる!! 64
2014-02-15 12:59:24「そう。我こそは、全類人猿の憎悪を孕む者。良くぞ我らを嬲ってくれたわ!!」ゴリラスレイヤーの肉体を包む光が、赤黒く燃える炎へと変わる!!棘棘しい殺気が辺りを包んでいる。それはまるでブッダデーモンの如き様相。 65
2014-02-15 13:00:17馬鹿な。ゴリラスレイヤーは明らかに先程よりも小さく、弱くなっている筈だ。しかしプレシャスの身体は震えていた。本能が。……ニンジャとしての本能ではない。一個の生命としての本能がナラクピテクスを恐れているのだ。 66
2014-02-15 13:01:32プレシャスは逃走へと転じる。聞いていない。あんな化け物の事は聞いていない。だがプレシャスの足は間もなく止まる。いや、それ以上動けなくなくなったのだ。プレシャスは恐る恐る振り返り、ナラクピテクスの握るそれに気付く。 67
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