2014年都知事選について、あるいは安倍内閣ファシズムについて

笠井潔 @Kiyoshikasai さんの分析をまとめました。
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笠井潔 @kiyoshikasai

21世紀のグローバリズムと世界内戦の深化は、それに適応した新型国家を要求している。20世紀のファシズムとボリシェヴィズムが世界戦争を遂行する国家、世界戦争国家だったとすれば、世界戦争の敗北形態である日本戦後国家の廃墟に誕生するのは、世界内戦国家だろう。

2014-02-16 19:40:54
笠井潔 @kiyoshikasai

戦後左翼による「狼が来る!」式の大衆動員は、とっくに耐用年限が切れている。と書いたら、安倍ファシズムとして、とうとう本当に「狼は来た」のだという反論が寄せられた。戦後民主主義国家の破壊が現実問題になっている事実を、もちろん否定するつもりはない。

2014-02-16 19:46:08
笠井潔 @kiyoshikasai

とはいえ、「来た」のは本当に狼(ファシズム)なのだろうか。かつての狼を思わせるが、狼よりもさらに悪質で手強い敵なのではないか。とはいえ、ライオンや虎というわけではない。イメージ的には、狂犬病に感染した狼というところだろうか。

2014-02-16 19:48:40
笠井潔 @kiyoshikasai

戦後左翼が想定した「狼」は、自民党右派のイデオロギー攻勢と政治攻勢だった。自民党右派の基礎を据えた岸信介がA級戦犯容疑で、巣鴨プリズンに長期拘留されていたように、この勢力は戦前日本、とりわけ戦時天皇制国家(昭和新体制)を肯定し、その復活をもくろむものとして警戒された。

2014-02-16 19:53:35
笠井潔 @kiyoshikasai

しかし、今回「来た」のは、自民党右派に主導された旧来の反動攻勢(狼)ではない。では、なにが「来た」のか。その正体を明らかにするためには、自民党右派的なものと安倍路線と、ネットから路上に溢れだし、都知事選では田母上支持層として形をなした新排外主義について問わなければならない。

2014-02-16 20:00:14
笠井潔 @kiyoshikasai

というわけで、今夜は終わりにする。続きはまた、時間があるときに。

2014-02-16 20:00:58
笠井潔 @kiyoshikasai

しばらく出かけるので、3日前からの「ファシズム」ツイートを終わらせてしまおう。

2014-02-17 15:20:46
笠井潔 @kiyoshikasai

1930年代の昭和維新運動は、同時代ヨーロッパのファシズム運動と、革命と社会主義に混在したナショナリズムと保守主義という点でよく似ている。ファシズムが大衆集会や武装デモから蜂起にいたる社会主義運動的な戦術を駆使したのに対し、日本ではテロとクーデタがそれらを代行した点は異なるが。

2014-02-17 15:28:32
笠井潔 @kiyoshikasai

この点は、軍事クーデタ(と内戦)で独裁権力を樹立したスペインのファランヘ党のパターンと似ている。ただし、フランコ政権に社会主義的要素は希薄だが。昭和維新運動をイタリアとスペインの中間に置いてみれば、これを30年代の広義ファシズムの一翼と位置づけても、さほどの不自然感はない。

2014-02-17 15:34:57
笠井潔 @kiyoshikasai

また日中戦争下に確立された昭和新体制は、国民社会主義を唱えたファシズム国家に似ている。新体制の参照例はソ連とドイツだったのだから、それも当然だろうが。民間右翼と皇道派が「革命」の極を体現したとすれば、統制派と革新官僚は「社会主義」の極を体現したともいえる。

2014-02-17 15:39:35
笠井潔 @kiyoshikasai

岸内閣は1950年代後半に、国民皆保険・皆年金制度をはじめとして、1980年代に完成をみる日本型福祉国家の基礎を整備した。昭和新体制の国民社会主義的要素は、第二次大戦後にも総力戦体制を「平和」的形態で温存しながら、福祉や再分配という点でも戦後に持ち越されたのである。

2014-02-17 15:45:56
笠井潔 @kiyoshikasai

イタリアやドイツのファシズム運動/国家と日本のそれとの決定的な相違点は、昭和維新運動を潰して既成国家(明治憲法体制)がファシズム化した点にある。昭和新体制には保守主義とナショナリズムと社会主義的要素はあっても、革命だけが存在しない。

2014-02-17 15:50:45
笠井潔 @kiyoshikasai

革命的な切断を回避した昭和新体制は、ファシズム国家というには不徹底で微温的だった。丸山眞男のような近代化主義者は、その根拠を日本社会の後進性に見るわけだが、間違いだ。それよりも、日本が第一次大戦を正面から通過していない事実のほうが大きい。

2014-02-17 15:55:46
笠井潔 @kiyoshikasai

ボリシェヴィズムもファシズムも、世界戦争の衝撃から生じたところの、異様に苛酷で残忍な20世紀思想/運動/国家だ。第三の20世紀国家=世界戦争国家がニューディール以降のアメリカで、ソ連と組んだアメリカがファシズム陣営を打倒したのが第二次大戦ということになる。

2014-02-17 15:59:57
笠井潔 @kiyoshikasai

第一次大戦を未通過という日本の固有条件が、革命と社会主義の分裂および両者の不徹底性という、「日本ファシズム」の特殊性に帰結した。この特殊性を決定的と見なせば、昭和維新体制はファシズムでは「ない」ことになるし、それを部分的と見れば、日本ファシズムは「存在した」という結論になる。

2014-02-17 16:05:33
笠井潔 @kiyoshikasai

以上のような事情さえ正確に押さえておけば、日本ファシズムの有無をめぐる神学論争に、これ以上立ち入る必要はない。

2014-02-17 16:08:27
笠井潔 @kiyoshikasai

革命と社会主義の面で日本の特殊性が無視できないように、保守主義とナショナリズムの面にも同様のことがいえる。昭和新体制に親和的な革新右翼に対し、観念右翼と呼ばれる勢力が存在した。平田国学や水戸学の流れを汲む尊王攘夷派は、明治政府の開国・近代化路線によって裏切られる。

2014-02-17 16:17:09
笠井潔 @kiyoshikasai

明治政府に裏切られた尊王攘夷派のウルトラ天皇主義と神国思想が、観念右翼の源流となる。また日本の右翼運動には、自由民権運動の国権論に由来するアジア主義的勢力も含まれる。前者が神話的な保守主義を、後者が侵略的なナショナリズムを体現したとも整理できそうだ。

2014-02-17 16:27:26
笠井潔 @kiyoshikasai

天皇主義や神国思想は観念的に過激化し、凡庸で通俗的な近代社会に革命的切断を加えようとする。昭和維新運動に革命性をもたらしたのは、こうしたウルトラ保守主義だった。この復活を第二次大戦後の日本で目指したのは三島由紀夫だが、結果は見ての通りである。

2014-02-17 16:39:55
笠井潔 @kiyoshikasai

知識人のバーク的な正統保守主義は福田恆存などに体現されたが、それと原理的に異なる大衆の俗流保守主義は、道徳教育や良妻賢母のノスタルジーや根性主義という微温化された形態で戦後も延命したし、今日も一定の影響力を保っている。しかし、それが昭和維新運動のような革命に通じる可能性はゼロだ。

2014-02-17 16:48:11
笠井潔 @kiyoshikasai

革新官僚として出発した岸信介は合理主義者だから、天皇主義や神国思想というウルトラ保守主義の精神とは無縁だ。利用できるものはなんでも利用するという、リアリストとして判断はあったとしても。政治家として岸を駆動していたのは、あくまでも帝国主義的ナショナリストという要素だった。

2014-02-17 16:58:03
笠井潔 @kiyoshikasai

外務官僚としては英米派だった吉田茂は、日米安保と抱き合わせでサンフランシスコ条約を成立させ、対米従属・経済優先という戦後保守本流の路線を定めた。総力戦体制を平和的形態で継続した戦後復興・高度成長路線は、労資協調の日本型福祉国家に結実する。

2014-02-17 17:06:38
笠井潔 @kiyoshikasai

自民党右派の岸信介も、総力戦体制の戦後的形態で経済成長を追求する点では吉田路線を継承した。異なるのは、対米従属・経済優先のうち前者のほうだ。岸による1960年の安保改定は、日米関係を多少とも対等化する方向を目指していた。この点の把握は、当時の共産党より新左翼のほうが妥当だった。

2014-02-17 17:13:57
笠井潔 @kiyoshikasai

GHQによって監獄に叩きこまれた岸が、素直に改心して親米派に転向したわけがない。とはいえ、戦前の帝国主義的ナショナリズムをそのまま復活させることもできない。可能なのは日米反共軍事同盟をより対等化することで、世界戦争の敗北形態である半国家日本を「普通」の帝国主義国家に戻すことだ。

2014-02-17 17:20:06
笠井潔 @kiyoshikasai

岸の実弟の佐藤栄作や、中曽根康弘の政権は自民党右派に属するが、政権運営は大枠で自民党主流派の対米従属・経済優先路線の枠内にあった。たとえば非核三原則が佐藤政権によって定められたように(もちろん「持ちこまず」は当初から空文だったわけだが)。

2014-02-17 17:28:40
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