【第一部-拾七】妹を愛する扶桑、そして山城 #見つめる時雨

扶桑×山城
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扶桑視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

部屋の中央にある丸机。その傍に座布団を敷いて、山城が座っていた。山城の横には、そこに座って欲しいと言っているかのように、座布団が一枚敷かれていた。私はその座布団に腰を下ろす。すると、山城が私に身を寄せてきた。山城の頭が、私の肩にトンと置かれる。 「…おかえりなさい、姉様」

2014-02-21 22:00:35
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…夕立にはこの前言っておいたわ…後はあのコ次第だけれど…」 山城の頭を撫でる。山城はくすぐったそうに頭を動かした。…夕立にはああ言ったけれど、思えば私らしくない言い方になってしまったかしらね…。でも、あの方が夕立らしく動けると思うわ。 「ありがとうございます、姉様…」

2014-02-21 22:05:30
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…時雨はどう思うかしらね…?」 「…とても驚くと思います」 そうね…夕立の告白を受けて、時雨は驚くと思う。何しろ、そんな気持ちを夕立が抱いてるなんて、考えもしなかっただろうから。

2014-02-21 22:10:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…私達が夕立にそういう気持ちがあるんじゃないかと思い始めたのは、夕立が時雨を襲った時。時雨には言わなかったけど、その気持ちが引き金になったんじゃないかと思っていた。そのうち、時雨の方が勘付くかなと思っていたけれど…。 「…夕立の気持ち、受け取って貰えるかしら…」

2014-02-21 22:15:34
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…わかりません。でも、夕立の気持ちだけでも…そういう気持ちを向けて貰ってるって事を、時雨に知って欲しいなって思います…」 …時雨は、本当に一途な良いコ。でも、一途過ぎて、他からの自分に対する好意に鈍感なのね…。その鈍感さが、夕立を悲しませてるとも知らないで…。

2014-02-21 22:20:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…あのコたちも幼い子どもではないし、本当なら見守っていてあげたかったのだけれど、村雨にある傷を見てから、そうもいかなくなったと悟った。…このままでは、いずれもっと大変なことになる。私は山城と相談して、少し介入することにした。といっても、するのは夕立の背中を押すくらいだけど…

2014-02-21 22:25:25
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…時雨には幸せになって欲しいと思ってるわ…。だけど私や山城は、時雨が求めている想いはあげられない。だから、時雨にその想いをあげられるコの存在を知ってほしい。それだけでも救われると思うから…時雨も、夕立も…。村雨はきっと…あのコが支えてくれると思うわ

2014-02-21 22:30:25
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…山城、デートは楽しかった?」 「…もう…意地悪な言い方しないで下さい…」 山城が私の肩を頭でぐりぐりしてくる。くすぐったい。 「…時雨ね、私の頭に雪がついてたのを見て、払ってくれようとしたんです。けど、背が足らなくて、私に屈んでって言ってきたんですよ」 山城が微笑む

2014-02-21 22:35:31
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…私、それが可笑しくって、つい笑っちゃったんですけど、そしたら時雨、むっと膨れて、でもそれがまた可愛くて…」 「…ええ」 山城の口から語られる時雨との話。山城の心情を悟っていた私は、山城の言葉に、ただ相槌を打った…。

2014-02-21 22:40:28
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…時雨ね、私がメニューに夢中になってるのを見て、可愛いね、なんて言ってきたんですよ。いいじゃない、ちょっとくらい夢中になったって…本当に美味しそうだったんだもの」 「ふふ…私もそう思うわ。可愛い」 「…姉様まで…」 山城が私の太ももを人差し指でつつく。

2014-02-21 22:45:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…山城が静かにため息をついた。私に身体を寄せる。 「…時雨ね、最後に…私にチョコをくれたんですよ。いつもお世話になってるから、その御礼ですって…。…嘘ばっかり…。震えながら渡す義理ってありますか…?どう見ても本命じゃない…」 山城が私の胸に顔を埋める…

2014-02-21 22:50:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…私がチョコをあげたら…時雨…泣きそうになってた…。私…また、時雨…」 …山城。 「…私は…時雨の気持ちには答えられない…。でも、それを言ってしまうと…時雨が離れていってしまうような気がして…言えなかった…」 …私の胸で嗚咽を漏らす山城。私はそんな山城の頭を優しく撫でた…

2014-02-21 22:55:33
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「私は…私をこんなに想ってくれて…あの時も、最期まで私に寄り添ってくれた…そんなコの想いを突き放せない…。でも、私は…姉様が好きなの…。時雨のことは好きだけど…でも、でも…」 …私は、震える山城を抱きしめた…。

2014-02-21 23:00:29
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…今回のことも…結局は私がこんなだから…時雨も、夕立も…村雨まで巻き込んじゃって…私が…私が…」 「…そんなことないわ…。貴女のせいじゃない…。ちょっとのすれ違いが、沢山重なっていってしまっただけ…。…あのコ達を信じて、見守りましょう…」 「…はい、姉様…」

2014-02-21 23:05:29