ゼロ・ゴリラ・サンスイ

ゴリラスレイヤーの後日談めいたエピソード。
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碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

嘗て、この国はゴリラが支配していた。だが、彼らは謎の樽大砲儀式を行い、歴史の闇へ消えた。そして彼らは、長い時を経て蘇り、この国に仮初めの秩序を与えた……だがそれは、赤黒のゴリラの手によって、脆くも打ち崩された。 1

2014-02-26 13:31:55
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

仮初と言えど、秩序は秩序だ。シンジケートに続きセクト、そしてゴリラ存在を失った結果、経済は乱れ、夜の闇は更に色濃い物となった。だが、以前と違う点はある。それは単なる闇であり、ゴリラという深淵へ続く道ではないということだ。 2

2014-02-26 13:32:38
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ネオキンシャサ中心部。嘗て、フルーツ・ピラーと呼ばれる超高層ビルが有った場所。今は既に新たなビルの建設が始まっている。そして、地上数十メートル。組み上げられた鉄骨の上に、……一匹のゴリラが居た。 3

2014-02-26 13:33:37
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

そのゴリラは奇妙な外見をしていた。濃緑の体色。その上に、金の毛が渦巻き模様を描いている。明らかに自然の産物ではない。……そう、彼こそはゴリジュゲイター。ヨロシサン製薬によって人工的に生み出された、バイオゴリラだ。 4

2014-02-26 13:34:29
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ゴリラ。コンゴを支配する半神的存在。ヨロシサン製薬は、ヨロシサン海外遠征チームが発見したその神秘存在を暴き尽くし、再現に成功。独自のバイオテックによるアレンジメントを加えてバイオゴリラとして生まれ変わらせた。それがゴリジュゲイターである。 5

2014-02-26 13:35:48
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ゴリラとカラテをミックスしたゴリラカラテを搭載する彼のパワーは、既にゴリラを凌駕している。少なくとも彼自身はそう信じていた。この力があれば、CEOになれる。そう思った。 6

2014-02-26 13:36:29
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

テストとしてこの国へ派遣される事が決まった時、ゴリジュゲイターは内心喜んだ。ゴリラを殺し、己の性能を示せばCEOが近付くと。……だが、ゴリジュゲイターのプランには誤算が生じた。 7

2014-02-26 13:37:54
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

戦えど戦えど、ゴリラを発見することは叶わない。何故なら、ゴリラは滅びていたからだ。ゴリジュゲイターの我慢は限界に達しようとしていた。これでは、己の優秀さを示すことが出来ない。CEOになることが出来ない。 8

2014-02-26 13:38:50
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

……しかし、ゴリジュゲイターにとっては、その失望もつい数秒前までの過去の物であった。なぜなら、ゴリジュゲイターのバイオゴリラ感覚器官は接近するゴリラの気配を感じ取っていたのだから。 9

2014-02-26 13:39:57
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ゴリジュゲイターは不意打ちは行わない。何故なら、それでは自分の性能を十分に示せないからだ。CEOとなるには、常にエレガントに事を運ばねばならぬ。……そうしているうちに、ゴリジュゲイターが待ち構える鉄骨の上へ、ゴリラが姿を表した。 10

2014-02-26 13:40:47
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

現れたのは……赤黒のゴリラ!だが、彼はゴリラスレイヤーでは無い!!(ゴリゴリナイトです)赤黒のゴリラは、手話によってアイサツをした。(ドーモ、ゴリゴリナイト=サン。ゴリジュゲイターです)手話アイサツ・プロトコルは正常に作動している。 11

2014-02-26 13:41:41
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ゴリジュゲイターは、漸く出会えたゴリラ存在との邂逅に胸踊らせていた。ゴリラを退け、己の優位を証明出来る喜びに。両者はドラミングを開始。……ゴリゴリナイトを名乗るゴリラのドラミング音は不自然なまでに軽い。 12

2014-02-26 13:43:11
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

カラテが乗っていないのだ。……いや、そもそもゴリラ存在にカラテという概念が有るか自体不明なのだが。ゴリジュゲイターは力強いドラミングを行う。その音は周囲数キロへ響き、住民達に遺伝的なゴリラの恐怖を思い出させる。 13

2014-02-26 13:44:17
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ドラミングでは圧倒。しかし、ゴリジュゲイターに油断はない。ゴリゴリナイトという名は知らぬ。だが、赤黒のゴリラの噂はゴリジュゲイターの耳へも届いていた。この国を支配した『シンジケート』、『セクト』を滅ぼした存在。……もし本物ならば、相手に取って、不足は無い。 14

2014-02-26 13:45:18
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ドラミングの後。ゴリジュゲイターとゴリゴリナイトは静かに接近し、組み合った。「ゴリラとカラテをミックスしたゴリラカラテを搭載する私のパワーは、既にゴリラを凌駕しています」ゴリジュゲイターのゴリラカラテプログラムは、会話を継続しながらでも正確な動作を可能とする。 15

2014-02-26 13:46:52
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「そして、この力があれば……CEOになれる!!」その瞬間、ゴリジュゲイターのニューロンが弾け、筋肉が膨張した。これこそ、ヨロシサンの特許技術。ゴリラとバイオニンジャのテックを組み合わせて作り上げし、ゴリラのための「ジツ」! 16

2014-02-26 13:48:02
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「貴方を力づくで服従させる(ゴリジュゲイト)。これがバナナ・ジツです」組み合った状態のまま、ゴリジュゲイターは強力なバイオゴリラ腕力によってゴリゴリナイトを押し潰そうとする。……だが、その手は途中で止まった。感触が妙だ。 17

2014-02-26 13:49:07
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

柔らかな感触。……これはゴリラではない!着ぐるみだ!!「ウッホイ!!」その瞬間、ゴリラの着ぐるみの背中が弾けた。中から姿を表したのは……ゴリキドである!!ゴリラスレイヤー、否、ゴリキドは着ぐるみから脱出、鉄棒めいたムーヴで大車輪回転、ゴリジュゲイターの背後を取った!! 18

2014-02-26 13:50:21
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

背後を取ったゴリキドは腕をゴリジュゲイターの首へ回し、力を込める。絞め技である。ゴリラの首は実際太い。……だが、ゴリキドの腕はゴリジュゲイターの血管組織を毛皮の上から的確に締め上げていた。これは、ゴリラの身体構造を熟知していなければ不可能な事である。 19

2014-02-26 13:51:38
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

この男は、何者だ。ゴリラではないのか。ゴリジュゲイターの中で、疑念と失望が同時に育っていた。だが、考える暇は無い。「ウオーッ!!」ゴリジュゲイターは首筋へ纏わり付く男を強引に引き剥がし、放り投げる! 20

2014-02-26 13:52:58
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「グワーッ!!」ゴリジュゲイターのバイオゴリラ腕力によってゴリキドは鉄骨へと叩き付けられた!!「ゴフッ!」ゴリキドは血を吐いた。人間の肉体でゴリラの腕力を受ければ、こうもなる。 21

2014-02-26 13:54:08
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

凄まじい衝撃と内臓へのダメージ。現実からの逃避めいて、ゴリキドの脳内にはソーマト・リコールが流れる。ゴリキドは戦っていた。兵士として。鉱山で働くよりもずっと昔。少年とも言える年齢の頃だ。ゴリラが蘇るまで内戦の絶えなかったこの国で、それは決して珍しい事ではなかった。 22

2014-02-26 13:55:26
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ゴリキドの意識が過去に囚われていたのは、1秒足らずの出来事であった。だが、その間にもゴリジュゲイターはゴリキドへと歩み寄る。己を愚弄した愚かな男に、罰を与えるために。ゴリジュゲイターは両腕を組み、振りかぶる。……あの時の様に。 23

2014-02-26 13:57:57
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

ゴリキドは微笑んだ。己は何処まで進もうと、戦いからは逃れられない事を悟っていたからだ。……そして、それと同様に、死からも逃れ得ぬ事を。だが、己が死ぬのは、少なくとも今ではない。手は既に打った。 24

2014-02-26 13:59:09