東京都知事選挙と『終りに見た街』について　《山崎雅弘》

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

昨日の夜、選挙結果を伝えるニュース番組を観ながら、なぜか山田太一の小説『終りに見た街』を思い出した。http://t.co/PadFnAShxG　現代の東京に生きる家族が、昭和19年（1944年）の日本にタイムスリップし、戦時の過酷な境遇に直面する、という話。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

父親と母親は、その戦争の「結末」を知っているので、外国との戦争に勝つ為に全てを犠牲にする周囲の日本人の思考を理解できず、早くそこから脱出したいと考える。しかし、同年代の若者と接した子供たちは、彼らの純粋な「愛国心」に共鳴し、やがて父親と母親の考えこそが「間違っている」と言い出す。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

父親や母親と子供の違いは、その戦争の「結末」を知っているか否か、ということ。現代の日本で戦後の歩みを否定し、相対的に戦前戦中の体制を肯定的に評価する人の数は増えつつあるが、彼らは誰一人として「その路線で突っ走った結果、最後にどんな結末を迎えたか」という点には一切触れようとしない。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

日本にとっての太平洋戦争の結末は、切り立った断崖に激突したとも、深い谷底へ転落したとも言えるが、どちらにせよ日本は「全面戦争の結果」として、その終着点にたどり着いた。政府と軍と国民が、自国中心視点の独善的な思考で戦争を遂行した結果、国家滅亡の寸前という日本史上最大の危機に陥った。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

もし日本政府が1945年8月に降伏しなかったら、この国はどうなっていたか。新たな原爆が各都市に次々と投下され、本土で地上戦が始まれば多くの市民が沖縄と同様の最期を迎え、ソ連軍やイギリス軍、中国軍も日本領内に部隊を上陸させ、天皇と皇族は自決するか捕まって処刑された可能性が高い。

山崎 雅弘 @mas__yamazaki

個々の歴史的事件について「日本だけを責めるのはアンフェアだ」と、自分が被害者のような立場で語る態度はある意味で「気楽」だが、当時の思考や価値判断基準の行き着く先が「国家滅亡の寸前」「日本史上最大の危機」だったことを、我々とその上の世代はきちんと理解し、今の若い世代に伝えているか。