海の大戦:プロローグ

――大戦の切っ掛けとは。
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人間《ディアドラ》 @actSkbz

「チッ、これだから【海賊】共は……!」 厭になる、と吐き捨てて体勢を整える。まさか接近して船体同士をぶつけ、無理矢理こちらの船の動きを止めてくるとは思わなかった。これだから、【海賊】は厭なんだ、とぶつぶつと文句を垂れながら、片手の本を胸に抱き、向こうの船を睨む。

2014-02-23 23:38:05
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「おい! どうしてくれるんだ、私の船が壊れたらどう責任をとってくれる!?」 やり場のない怒りの矛先なら、うってつけの相手がいる。 そう怒鳴りつける。――別に、答えが無くても構わない。あろうがなかろうが、己は『神託』を述べるのみ。

2014-02-23 23:38:13
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「どうしてこうして、っと」 槍先で『殉教』の船の縁(ヘリ)を叩いて傷つけ降り立つ。 「信徒の愛船は壊れて当然!海賊はぶっ壊して奪ってなんぼでしょうが!あっはっは、名乗り遅れたな。オレは『無学』。ロックな神様から『加護』を頂いた海賊女。そんだけ覚えて水底に逝きなよ、姉ちゃん?」

2014-02-23 23:50:29
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「断る! 私の船を傷付けた報いは――受けて貰うぞ、無学ッ!」 【海賊】に怒声を浴びせて、頁を捲る。言葉を辿る。綴られる『神託』に目を運び、表情は怒りから喜悦へと移る。声は恍惚として。 「ああ、海神様……! 貴方様の仰せの通りに!!」 『神託』は高らかに告げられる。

2014-02-24 00:07:15
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「『天の裁きを、その身に受けよ!』」 白雲から下される雷の色が蒼、【海賊】へ真っ直ぐに放たれる。

2014-02-24 00:07:19
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

経典だろうか。読み上げて何になるのか。一回読まされたけど2ページ目を読んだ頃にはもう寝てたから内容は知らない。修道船団を襲ったりすると、唱えたりする人もいるが。まさか断罪の先鋒が神サマの祝賀会でもやっているのだろうか。

2014-02-24 00:28:00
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

刹那、足が考えるより速く横に動いていた。投槍を躱すときの、感覚に近い。そんな流れ弾で仕留められるほど、安く喧嘩は売ってない。そうして先ほどまで居た、1メートル弱のところに炸裂した雷。格が、違う。何もせず勝負になる訳が無い。少なくとも、命を張らないと戦いにならない。

2014-02-24 00:28:08
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「楽しくない訳がないじゃないか。頭脳労働は趣味じゃねえんだ。喜んで引き受けた先鋒だ。絶対(ぜってー)勝つ」 槍を脇に挟み、右手に握る。

2014-02-24 00:28:35
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「《オレの自由は天ごときがどうこうできるもんじゃねえ》んだよ」 槍から発射された長さ1メートルの刃が上に奥まった弧を描きながら、すーっと殉教に向かう。決して速さと威力があるとは言えないにしろ、食らえば血は流れる。

2014-02-24 00:28:58
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「『我が身を護る壁、現れ出でよ』!」 此方に向けて発射された刃を目にすれば、厭うかのように舌打ち。直後、先程の『神託』とは入れ違いに綴られた『神託』を告げ、眼前に手を伸ばす。――現れた石の壁は、“殉教”の身の丈程だが、向かってくる刃を受け弾くには充分であろう。

2014-02-24 00:53:10
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「『穿つ雨は四肢を貫く』!」 船に当たる波飛沫が矢じりのような形を持つ。その数、十程。その全ては無学の四肢を狙い、四方八方から襲い来る。 「ああ、自己紹介が遅れた。――『殉教』だ。憶えなくていい、そのまま息絶えてくれればそれで」 深海の眼は、冷たさを湛えて。

2014-02-24 00:53:17
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

言葉が何でも異変に変わる。そういう感じか、とごちり 「《蠢け、唸れ》」 絡まる40センチほどの刃が飛び出してすぐに消え、その間に4つの矢じりを叩き伏せた。それが消えるより速く一回円を描きながら前進する30センチの刃が僅かの間現出して、4つ更に叩き落とす。残りは右腿を二箇所抉る。

2014-02-24 01:03:58
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「武器が言葉。似てても嬉しくないね、オレら。お利口さんの信徒サマは上品な言葉使うんだなー、ダサすぎだぜ」 にぃと笑い。突如、右足裏で地面を蹴り抜く。 「《削ぉぉぉげッ!》」 同時に槍を持つ手首を捻る。盾を十分勘定に入れたカーブを描いて20センチの刃が素早く動く。

2014-02-24 01:11:56
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

次につく足に激痛を感じで、笑みが消えた。 「流石に痛いな。大怪我したの人生で初めてだわ  これが致命傷なのかな。でも死ぬ気しないし多分大丈夫だぜ!うん!」 そう言って槍を構え直す。

2014-02-24 01:12:31
人間《ディアドラ》 @actSkbz

飛来する刃は先程よりも、疾風く此方へと向かってくる。海神様の『神託』を確認する暇が無い。行儀悪く舌打ちを噛まし、致命傷は避けようと後ろへ下がる。――が、綺麗な弧を描いて此方を断たんとする其れは、脇腹を抉って。 「チッ!」 ダンッと足を踏み鳴らし転ぶのを避ける。――屈辱だ!

2014-02-24 01:25:20
人間《ディアドラ》 @actSkbz

もう一度、ダンッと踏み鳴らせば、それを合図として壁が消え失せる。視界が開ける。 「『水は刃、海神様の加護を持って罪深き者を裁け』!」 苛立ちまじりの『神託』に応えるかのように一際高い波が船を揺らす。その波飛沫は集い鋭く大きな刃の形を持って、勢いよく、払うように横薙ぎに動く。

2014-02-24 01:25:28
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「我が海神様の言葉を愚弄するか、下郎ッ!」 殉教の怒声と共鳴するかのように、その横薙ぎの動きは早さを僅かに増した。上空へ跳び上がれば避けられない事も無いだろうが、――果たして。

2014-02-24 01:25:38
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「ひー。これはヤバい」 しなやかな左足を伸ばして。裂けるような痛みを抱えた右腿をぐっと引いて 槍を脇で締め上げ、右手を自由にする。そうして背後へもんどりうって倒れると、左脚と右手と左手を柱(ささえ)に姿勢を机のようにしていた。(俗にいうブリッジに近いだろうか)

2014-02-24 01:41:00
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

やり過ごすやいなや左手で強く地面を突いて起き上がり、その反動を利用し右脚を地面に叩き込んで距離を詰めようとする。 「《矢》ァッ!」 文字数が短ければ現出時間は短い。短いと、形状と飛距離が同時に適うことはない。最短で敵に届く直進の刃を、間合いを近づけて放つ。 その狙いは、左胸。

2014-02-24 01:46:21
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「『盾』!」 殴り書かれたそれを反射的に読み上げる。薄くは無いが、【海賊】を相手とするには頼りない、鋼鉄製のシールドは貫通しかけるが、半ば程で進行を止めさせた後、がらんっと大きな音を立てて落ちる。 「――く、これ以上の消耗は避けねば……!」

2014-02-24 02:36:26
人間《ディアドラ》 @actSkbz

綴られる文字が雑多になって来ている。我が海神様はもう飽いておられるのであろう。殉教自身も無意識に、自分の喉に手を当てて、軽く咳き込む。――足りない。否、己だけでも十分事は足りるが、完全に下すには足りないであろう。 「『飛ばせ、神風は罪人を押し戻す』ッ!」

2014-02-24 02:36:34
人間《ディアドラ》 @actSkbz

『神託』は、【海賊】を帰せと、“殉教”には還れと仰られた。 強い風はまるで意志を持ったように、無学に纏わりつき、そのまま敵方の船へ押し返さんと働きかけようとする。――次の一文はもう、綴られている。あれが、大人しく船へ戻りさえ、すれば。

2014-02-24 02:36:43
人間《ディアドラ》 @actSkbz

脇腹から滴る血に足を滑らせそうになりながら、ぐっと堪え。見届けようと。

2014-02-24 02:36:50
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

烈風。痛みは無い。 消耗を避ける、と言っていた。なら、一度撤退か。 仕留めるにはあまりにも動き難い、脚の根本。 「へぇ、いいんだ?好機だぜ?ここで一枚落としとくのも。……よっと」 背後の自分の船に飛び移る。

2014-02-28 19:32:20
【強奪】『無学』 @nigayuki_umi

「立て直しだ。互いに沈んじまったら壮観な戦争が見れねェだろ。《じゃあな》?」 槍から40センチの刃が射出される。狙いは 「これァ貰っとくぜ」 船のへ先の飾りを刃で落とし、海中に沈めた 「やべェな。オレ以上の『加護』が揃わねェと厳しいぜ」 …一先ず、強奪の拠点の影を確認して船を退く

2014-02-28 19:34:16